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【完結】夜明けの理 魔王を倒した後にいつも死んでしまう勇者と女魔法使いの話  作者: 渡辺 佐倉


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王都の人々

王都の人々視点


「いい子にしてないと魔王が来るよ!!」


そう子供に言い聞かせるのは当たり前のことだった。

不安や恐怖、それを表す一番手っ取り早いものは魔王だった。


実際に酷い目にあわされた人は沢山いるし、被害を受けた街や村もある。

けれど王都に暮らす私たちにとっては漠然とした恐怖の象徴だった。



その、魔王が倒された。

ほっとしたというのが一番最初にあった感情だった。


魔王が実際どのような生き物なのか、私は知らない。


「魔王を倒したってことは、勇者はもっとおっかないってことだね」


子供に言われて怒る。

ただ、そのただ強い以外に何ができるか分からない人がこの国の次の王様になる可能性が高いとなれば話は別だ。

私たちの王様になるのなら、頭のいい人の方がいい。他の国と仲の良い人がいい。

政治についてちゃんとわかっている人の方がいい。

急に不安になった。


それは周りの人たちも、貴族様までそうらしい。


ただ強いからといって何をしてもよいわけではない。

そんなこと、私たちだって知っている。


なのになぜ勇者は勝手にこの国の王になろうとしているのだろう。

そう思っていた矢先、勇者はお姫様を捨てて逃げ出したらしい。


教会の熱心な信者たちはそれは違うと言っていたけれど、貴族様のところに働きに出ている者たちが言うにはそういう事らしい。


勇者はやっぱり身勝手な、ただ力が強いだけの人間だった。

お姫様はかわいそうだ。

けれど、そんな人間と結婚しなくてよかった。そんな人が王様にならなくてよかった。


やはり、いい方向に世界は進んでいるのだ。そう思った。


けれど、どういうことなのだろう。



最近よくない話ばかり耳にする。


魔王の居城と接していた国がこの国との交易を大幅に減らしたらしい。

なんでも、魔王討伐という任を果たした勇者に対して何一つ褒章を出さなかったかららしい。


逃げ出した人にどうやって褒章を出すのか、なんて言ってられたのは最初のうちだけだった。


教会が『神のお選びになった勇者に対する非礼に抗議をする』と発表したのだ。

教会は私たちの国だけではなく各地に沢山有るらしい。

それらが統一の見解を発表したことは多分ない。


少なくとも私は初めて聞いた。


有名な聖女様もこの件に賛同しているらしい。


神様が選んだなんて私たちは知らない。

なのになぜこの国が怒られているのか分からない。


この国の領主の一人になったはずの勇者の仲間も何も言わない。


勇者は今も魔族の残党を倒してあるいているらしい。

あちこちで英雄譚の続きの様な話を聞く。


これではまるで私たちが悪者みたいじゃないか。

私たちは悪いことを何もしていないのに。


勇者が勝手に逃げだしただけなのに。

前はきらびやかな王都を見るための観光客も沢山いたのに、今は数が減ってしまっている。

貴族様のうちに下働きに出ていた者の一部が解雇になったという話も聞く。


一言「違う」と言えば済む話なのに、勇者は何も言わないらしい。

ずるい。

私たちがこんなに大変な目にあわされているというのに知らんふりするなんて、やはりよくない人なのじゃないか。

何故そんなことにも気が付けないのか。


そんな私たちを、教会よりの人々がじっと観察していたなんて知らなかった。

知っていればもっとちゃんとしていたと思う。

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