旅路
途中、魔族の残党に何度か襲われた。
勇者を狙ったものかと思ったけれどそうではないらしい。
偶発的な遭遇だったけれど、難なく二人で倒せた。
勇者が魔族の角等の希少部位を集めている。
「なあ、闇魔法以外も前はつかえなかったか?」
勇者に聞かれる。
「分からないわ」
私がそう答えると、勇者は少し悲しそうな顔をした。
そういう顔をさせたかったわけじゃない。
けれど上手く話せなくてそのまま黙ってしまう。
* * *
勇者が途中よると言っていた祭りは盛大なものだった。
沢山の人が訪れている。
けれど、勇者が軽装な所為か、誰も彼が勇者だという事に気が付かない。
それが不思議だった。
強い魔族は皆彼が勇者だと気が付いていたし、彼を殺そうとした貴族社会も皆勇者のことをよく知っていた。
けれど、今祭りに来ている人々はそんなことには興味が無いように見える。
勇者はのんびりと屋台で肉だの、謎の揚げ物だのを頼んでは食べている。
そして私に少し分けてくれる。
それを食べる。
「美味いか?」
「分からない……」
そう答えることしかできなくて、やっぱり勇者は少し寂しそうな顔をしてしまって申し訳なくなる。
一人で宿に帰ってしまおうかと思ったけれど、勇者的にはそれは違うらしくあちこち連れまわされる。
当たりはすっかり暗くなっていた。
どーん、という大きな音がした。
音のした空の方を見る。
これは知っている。
花火だ、キラキラと舞い上がるそれを二人並んで見る。
「綺麗……」
思わず私がそう言うと、勇者はへにゃっと嬉しそうに笑った。
「あなたも花火が好きですか?」
「今、好きになった」
勇者はそう答えた。
それから二人でしばらく花火を見た。
恋愛ものです!!(冒頭あまりにも恋愛要素が「勇者はお姫様と結婚が予定されてます」しかなく…)