作戦1
僧侶はそれから少し間をおいた。
それから意を決したように俺に言う。
「恐らくあなたがこれだけ何度も非業の死を迎えてしまうことに黒幕はいないでしょう」
あなたの手記と、それからあの魔法使いは私の記憶するところでは研究者として成果を上げてこのパーティに参加していたはずです。
理知的な女性だった筈。その二人が調べて何もわかっていないからこそのこの状況でしょうから。
「じゃあ、なぜ……」
何故俺はころされるんだ。
「きっと魔王を倒したあなたが恐ろしいのでしょう」
「……お前も俺が恐ろしいのか?」
俺が聞く。
「私はあなたとタイマンはったら負けるでしょうから。少しだけ想像ができるだけですよ」
でも、例えば戦士と二対一だったら分からないでしょう?
だから私たちはあなたのことを本当には恐れられないんですよ。多分魔法使い含めて。
言われたことに愕然となる。
それは世界の皆から、全てから少しずつ嫌われているという意味で。
「確認しましたら教会にも、魔王討伐が成功したら勇者を排除すべきだという派閥はありました」
今、裏を探ってますが、どうでしょうねえ。
僧侶はそう言った。
手が震えている。
だってみんな笑顔で俺たちを送り出して、魔族を倒したら喜んでいた。
それが……。
お姫様自身に俺は殺されたこともあるらしい。
「結婚を約束した彼女も、俺のことが怖かったのかなあ……」
ああ、分からない。
ただ、誰を信じればいいのかはわかっている。
心を落ち着かせようとする。
「今日は早めに休んだ方がいい」
そう僧侶に言われベッドに横たわると、精神的な疲労が強すぎたのだろう。
すぐに眠気が来た。
だから寝入りばなに、「まあ、あなたのことを明らかに怖がってない女性も一人だけいるんですけどねえ」と言ったのは聞こえなかった。