仲間
勇者視点
* * *
『俺へ、
仲間だけは疑うな』
という言葉は思ったよりずっと自分の心に染み込んだ
自分の認識ではまだ何も始まっていないのに随分と追い詰められていたようだ。
最初に誰に話そうか悩む。
魔法使いはおそらくなにか知っている。
知っているからこそ話すのが怖かった。
知っていてわざわざ俺に話さないのはなにか理由があるきがしたからだ。
幸いパーティは彼女だけが女性だ。
別行動のことは多々ある。
丁度男三人になった時に切り出す。
頭がおかしくなったと思われたらどうしようかと話し始めてから怖くなった。
けれど話し終わった後の反応は拍子抜けするものだった。
これは神の御業ですね
僧侶には伝言の本が見えるようだった。
「祝福として昔の俺が貰ったらしい」
俺がそういうと僧侶は頷いた。
「神にお使いする私がなぜ神の御業を否定する必要があるのでしょう」
僧侶は大仰にそう言った。
「教会での権力闘争は好きなのに?」
これも伝言に書いてあったことだ。
僧侶は少し驚いた顔をしただけで「神を信じることと自分をより高めることは矛盾しませんから」と答えた。
そういうものか?という疑問はあったが今はそこが問題じゃないこと位俺にもわかる。
戦士をみた。
「俺には難しいことはわからんが、勇者と僧侶が言うならそうなんだろう。俺は信じる」
戦士は簡潔にそう言った。それから「ただ、俺には戦う以外何もできないがな」と付け加えた。
俺は僧侶に聞いた。
魔法使いに直接聞いてみていいかと。
僧侶は少し考えた後、思い当たることがあるからそれを確認してからにしましょうと言った。
僧侶はそれから数日あちこちと手紙のやり取りをしているようだった。
魔族は伝言に書いてあるとおりのやつが出た。
そうして数日後、僧侶は俺と戦士に言った。
「大きな呪いを受ける代わりに時を少しだけ巻き戻せる魔法があります」
多分彼女はそれを使っています。
だから少しずつ見た目がみすぼらしくなっているのでしょう。
僧侶はそう言った。
じゃあ彼女から話を聞こうかと思った。
僧侶は首をふった。
「おそらく彼女はほとんどの記憶を呪いで奪われているでしょう」
そう言った。
聞いてもおそらく要領を得ないだろうと。
呪いだと言っていた。
「彼女は大丈夫なのか?」
神罰等とは違いますので回復は可能でしょう
ただあそこまで呪いを受けてしまっていると……。
おそらく俺が俺にメッセージを残す前から彼女は繰り返しをしてるようだと僧侶は言った。
それが僧侶の見立てだった。
「なぜ俺は殺されるのだろう」
俺は一番気になっていることを口にした。
薄々気がついている。
魔法使いは俺が死ぬから時を戻しているのだろう。
他の目的があって偶然その途中で俺が死んでいるというのはなんか違う気がした。
上手く言えないけど。
他の目的があるならボロボロになっている彼女は、わざわざ一緒に魔王討伐の旅をしなくてもいいのだ。
本来の目的を果たせばいい。
そうしないという事はうぬぼれでなければ俺のためにボロボロになりながら時を巻き戻しているという事になる。