?????回目あるいははじめての話
もう、これが何回目なのか私にも思い出せない。
けれど少なからぬ回数同じようなことを試していることだけは覚えている。
結末はいつも同じだ。
勇者は死んでしまう。
魔王を倒すべく神から力を得た筈の存在が死んでしまう。
魔王を倒す前であれば、神の加護が偽物だったのかもしれない。そうなるだろう。
けれど、勇者が死ぬのはいつも魔王を倒した後、人に殺されるのだ。
最初は……。
そうだ、最初はーー
私たちは魔王を倒すために結成されたパーティに所属していた。
魔王を倒すのに3年の歳月がかかった。
長い道のりではあったが魔族に対する強い耐性のある勇者のおかげもあって魔王は倒された。
小さな勢力の残党はいるけれど、これまでの歴史から考えてあと百年は安泰だろう。
多分それがいけなかった。と気がつくのはずっと後のことだ。
この国のお姫様と勇者が結婚することは勇者旅に出る時から決まっていた。
王様は英雄と身内を結びつけたいのだと思った。
実際に凱旋を果たした勇者の結婚話はとんとん拍子に進んだ。
そのさなか勇者が死んだ。
あっけなかった。
毒殺だろうと言われた。
私の魔法で鑑定した結果も同じだった。
なんでこんなことになってしまったのだろうと思った。
なぜ。
世界を救った英雄がなぜこんな目に合うのだろうか。
こんなのは不条理だと思った。
私が勇者に片思いしていたのもあるのかもしれない。
なんとかしたいと思った。けれど彼を蘇生させることは難しい。
それこそ女神様の奇跡でもなければ無理だ。
けれど、1つだけ方法がある。
時を少しだけ戻す魔法だ。
巻き戻す時間を正確に指定できない難点と、魔法に必要な対価が特殊であるという問題はあるけれど魔王を倒す力のある魔法使いの私であれば可能だと思った。
それが世界を公平に導く唯一の手段だと思った。
最初は何も考えず魔法を使った。
何も調べず、確認せず。ただ、勇者が生き返りさえすれば何とかなるだろうと思っていた。
だって、勇者は強いし、この国のお姫様との結婚も決まっている。
権力がある。
それが間違っていると気が付いたのは、二回目、巻き戻した時の中でまた勇者が毒殺されてしまった時だった。