8話 試験開始
9時半になる。
クラッチさんが握った拳から人差し指と中指を伸ばし、剣印をつくる。空に4つ点が現れ、それぞれから学校を囲むように線が伸びていく。やがて学校は淡い色をした膜につつまれ、結界が完成する。
ぐんっと体の中から何かが引っ張られる感触がして、視界にいろいろな色が入ってくる。
視界がやっとしっかりしてきて、自分が長い廊下の奥に倒れていることを自覚する。
とりあえず自分の現在地を把握することが先だ。たぶん地図は職員室にある。そして学校の鉄則!職員室は2階にある!
まずはここが何階だかわからないことには意味がないため、階段を探す。
不意に背中に悪寒を感じ、振り向いて突き出した拳は人型の魔物を貫く。
「こいつもいるのか...厄介だな」
思わず声に出してしまう。
穢人、人から漏れだした魔力が何かの弾みで絡み合ったもの。感情を持たず、喋らず、魂あるもの全てを食らいつくそうとする。ひとところにまとまっているのが厄介で1人いると5人はいるらしい。
教室の窓を割って飛び出してきた1匹を一撃で仕留める。
自ら教室に飛び込んで室内をうろついていた3匹を葬ると一息つく。
突然床が崩壊し下の階に瓦礫と共に叩きつけられる。煙っていて見えないが前から足音がした。即座に体勢を立て直し、構える。前から現れたその青年、彼の腕は途中から無数のひものようなものにわかれていた。
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「受験番号185番エバン·ロベルギア、受験番号026番と戦闘開始しました」
水晶から漏れる光が結界内部の様子を監視カメラのように写し出す。
教師陣が集まるこの場で選考が行われる。
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「俺の名前はリチャード·クロア、君、エバン·ロベルギアだろう?下層民でありながらクラッチ団長の特別選出で受験資格を得た。結構有名だよ君。会いたかったんだよねー」
「よくしゃべるな」
周りを警戒する。
「じゃあ始めようか、宴を」
まわりの床から槍のような物体が飛び出してくる。
あわてて回避するが内心訳がわからない。さっきまで魔力反応はなかったはずなのに。壁からも出てきたそれを叩き折りながら窓を割って外にでる。どんな魔道かは大体わかった。広いところで戦ったほうが対処しやすい。
おそらく彼の魔道は体をひものように分解できる能力。槍のように硬化、鞭のようにしなる程度の軟化をすることができる。それを動かすときには魔力が必要だが、そうでないときは魔力を使わずに潜ませることができる。
追って飛び出してきたリチャードに回し蹴りを入れる。
ひもを編んだ盾を貫通し威力こそ著しく落ちたものの彼を壁に叩きつける。
だが、砂煙が晴れると彼はいなかった。
少し忙しくなってきたので投稿ペースが大幅に遅れると同時に不定期になります。これからもよろしくお願いします。