2話 判決、そして記憶
2話 判決、そして記憶
「被告人エバン·ロベルギア、無期懲役、余情酌量で仮釈放とする」
秘密裁判所から出ると、クラッチさんがニコニコ笑いながら出迎えてくれた。
「な、言ったとおりになったろ」
色々と状況を整理できない。とりあえずクラッチさんがかなり高い地位の人なのはわかった。裁判の1週間前に彼の異議申し立てが裁判所に認められたらしい。
「なぜその申し立てが通ったんですか?」
「君の魂の素質について説明したんだ。S級の魔道具の憑依をはじいた人なんて過去にいないからね。表向きは架空の人を処刑したように発信しておくよう指示したから大丈夫」
大丈夫なのか...? 俺の魂の素質ってなんだ?
というか、
「どこに向かってるんですか?」
「ここ最近君の経歴について調べてたんだ。ちょっと不透明なところが多すぎるけど、国は下層民の経歴に力をいれてないからしょうがない。ただ、戸籍を見ても君の両親は見つからなかった。君は両親のこと何かしら覚えてる?」
「いえ、なにも。エバン·ロベルギアと名前をつけてくれたのは記憶があるんですけど...」
「実は戸籍に『ロベルギア』という姓すら今までなかった。君だけだ」
「そう...ですか」
なんか話をそらされている気がする。
俺には物心ついたときから親はいなかった。空腹で倒れていたところを農家のおじさんに救われなければ戸籍にすら残らず死んでいただろう。役所に連れていかれ、戸籍がないことが分かり、名前を聞かれて思い出したのが自分の名前をつけてくれた親がいた、ということだった。
それから4、5年彼の家に居候になっていたが、家族の多い彼の家は困窮し、申し訳なくなって夜逃げするように家を出た。そこからはずっと日雇いの工事バイトをして、その日の食事代を稼ぐようなありさまだった。