1話 ある容疑者の話
「書...子ども」
なんだ?誰の記憶だ?
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1話 ある殺人容疑者のはなし
起きろ、エバン·ロベルギア」低く圧のある声で俺は目を覚ました。
「では、尋問を始めようか」
「何のですか?」
「とぼけるか!」
前にたった男の拳が腹を抉り、俺は自分がくすんだ部屋の中で手錠をされて椅子に座っていることに気がついた。まだ霞む視界の中で別の男が部屋に入ってくるのが見えた。
「落ち着け、彼も自分が貴族街に入り護衛団2人と貴族1人を殺したことを覚えていないようじゃないか」
「っ...しかしですね団長」
「この件は俺に任せてくれ」
「...わかりました」
部屋には俺と団長と呼ばれた男の2人だけになった。
「悪かったな、俺の名前はクラッチ、冒険者ギルド『牙狼』筆頭団長つー肩書きだ」
燃えるような紅い髪と金の瞳、優しそうな顔立ちだが威厳がある。
「あの...本当に俺は人を殺したんですか?」
「調査結果が間違ってなければそうなるな。目撃者が多数いたし、魂の残滓も君のものだった」
「そうですか」
全く記憶にない。俺、エバン·ロベルギアが覚えていることは自分が15歳で、貴族街に入ることを許されない下層民であるということぐらいだ。人を殺した覚えなんて全くない。
それと魂の残滓ってなんだ?
それを知ってか知らずかクラッチは話続ける。
「まあ、俺も調査委員会も本気でお前を犯人だとは思っちゃいない」
え?「どういうことですか?」
「国の権威に関わるから詳しい情報は言えないが、お前はS級憑魂魔道具に憑依されていた可能性が高い。症状も酷似しているからな。だがお前の体や服からは魔道具は発見されなかった。これについては憑依された事例が少ないからなんとも言えないが、お前の魂が魔道具の魂に打ち勝ったために魔道具が消滅した、というのが今の仮説かな」
「じゃあ何で俺を逮捕したんですか!」
「国のメンツだよ。目撃者も多くいるなかで国の高官が殺られたんだ。『犯人は魔道具です』なんて言っても国民は言い訳しているのでは、と国に疑念を抱くだけだ。いち早く容疑者である"人間"を捕まえなくては国の警備や捜査体制が問題視される」
でもそうなると俺は死刑になるのでは...
今日から小説を書き始めた新米投稿者です!
ホントに初心者なので分からないことばかりなのでどうか温かい目で見守ってくれるとありがたいです。