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帰宅 2

アミさんを見送って、アカリは自分の家に帰る。家と言ってもプラスチック製の立方体の箱のようなものだけど、水回りもしっかりしてくれているし、中にはドールハウスで使うような小さな家具も置いてある。人間が作っているから、少し作りが雑な部分はあるけど、自分たちのサイズに合わせて使ってある家具の使いやすさには、ここに初めてやって来た時にはとても感動した。自然の中で危険と隣り合わせで生活していた頃には、そんな便利なものはなかったから。


「ただいまー」

アカリの声に呼応して、中から嬉しそうに駆け寄ってくる子の姿が見えた。アカリと一緒に住んでいるリリカが右足だけを使って、片足でピョンピョン跳ねるようにしながら大急ぎで寄ってくる。全く動かなくなってしまった左足は痛々しく不自然な方向を向いたままになっている。それでも、今目の前にリリカが元気に生きているだけで、アカリはホッとしている。


「おかえり、アカリ!」

勢いよくリリカがアカリに抱き着く。小人の中でも小柄なリリカと、背の高いアカリだから、思い切り抱き着いたときにちょうど胸元に頭が来る。そこをアカリがゆっくりと撫でた。

「ちゃんと一人で留守番できたね、偉い偉い」

「もう14歳なんだから子ども扱いしないでよ!」


アカリよりも3つ年下のリリカとは、ここに来る前、森の中の集落に住んでいたころから、それこそまだ赤ちゃんの頃から良く知っていた。血のつながりはないけれど、年が近いアカリはリリカのことをずっと実の妹みたいに面倒を見てきて、今もその関係は変わらないものだと思っている。


リリカがアカリに抱き着いたまま上目遣いで尋ねてくる。

「ねえ、今日も何も変なことはなかった? 怖い思いしてない?」

「えっと……うん、何もなかったよ」

パッと脳裏に浮かんだのは、危うくアカリのことを物理的に潰しかけたあの少女のことだった。何も無かったわけでは決してない。けれど、人間嫌いでトラウマを持っているリリカに変な心配をかけるのも悪いと思いその話はしないでおこうと思った。


「本当に……?」

一瞬の沈黙が怪しまれたのか、リリカが不審な目をアカリに向けてくる。アカリが小さく頷いたけど、不安げな瞳でリリカが問い詰めてくる。

「じゃあ、なんで一瞬答えるのに逡巡したの? もしかして沙希さんに何かされたの?!」

そう言ってリリカが怯えた表情を浮かべた。


今日の出来事をありのままに伝えても良いのかどうか、答えに困っていると、アカリの無反応を肯定だと受け取って、リリカはそのまま間違った推測を続けていく。

「そうなのね! 沙希さんは良い人だと思っていたけど、所詮は人間なのね! いくら沙希さんだって、アカリのことを傷付けるんだったらわたしは許さないから!」


完全に自分の世界に浸っているリリカを、アカリが慌てて宥める。

「沙希さんじゃないよ。それにもし沙希さんに何かされたとしても、そんな風に怒っちゃダメ! 沙希さんはわたしたちの命の恩人なんだから」

厳密には命を救われたのはリリカだけだけど、それでもアカリだってもしあのときリリカを失っていたら、きっともっと暗い毎日を送っていただろうから、アカリのことも助けてくれたようなものなのだ。リリカも沙希さんのことだけは人間の中でも信用している。


「ごめんなさい……。そうよね、沙希さんはそんなことしないわね……」

「うん、沙希さんはずっとわたしたちに優しいんだから、変なこと考えちゃダメ」

アカリが優しく微笑むと、リリカは小さく頷いてから、顔を上げて続ける。


「でも、もし相手が沙希さんだったとしても、やっぱりわたしはアカリのことを虐めたんだったら許さないんだから! わたしはアカリのことを虐める人は種族関係なく誰だって許さないんからね!」

こんどは先程よりも冗談っぽく、頬を膨らませながらリリカが言う。

「それは随分頼もしいね」と言って、アカリがもう一度リリカの頭を撫でようとしたときに、またリリカが表情を変えて、キッとアカリの方を睨み上げる。


「でも、さっきの言い方、沙希さん以外の人に何かされたってことよね! 誰に何をされたの!」

リリカの剣幕に圧されてアカリも観念する。

「ちゃんと説明するから、とりあえず座ろっか」

ずっと片足で立ちっぱなしなのはリリカも辛いだろうからと、アカリが手を取って部屋の奥にある机のある場所へと連れて行った。

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