ドキドキと安心 7
「ねぇ、リリカちゃん、モモカとはもうプリンタウンに戻ってからは会ってくれないのぉ?」
布団の中で横を向いて、リリカを見つめる視線はとても近かった。もうプティとプリンを間違えていることを一々指摘するのは面倒だったから、そこには触れなかった。
「何よ。そんなにわたしに会いたいの?」
うん、と桃香が無邪気な笑みを見せる。
「モモカ、リリカちゃんのこと大好きだから」
曇りのない可愛らしい笑みを浮かべながらそんなことを言われて、リリカは少しドキリとしてしまった。
「仕方ないわね。本当は人間になんて会いたくないけど、桃香がそこまで言うんなら仕方なくまた会ってあげるわ」
「ほんとぉ!?」
桃香がリリカの方に手を向けてくる。リリカのすぐ背後に突如現れた、リリカの背丈よりも大きな手のひらに一瞬びっくりしてしまった。そして、その手のひらがすぐにリリカの背中にのしかかってくる。
「や、やめなさいよ! 何のつもりよ!」
撫でる時よりも力が強かったから、突然桃香がリリカのことを押し潰してこようとしたのかとも思ったけれど、違った。リリカのことを強引に横にした後、背中を桃香の指が這っていった。桃香の大きな手に背筋を撫でられて、ゾワリとして、変な感覚になってしまう。
「嬉しいなぁ。リリカちゃん、絶対また会おうねぇ」
「会うから! 手をどけなさい! どかさないと会ってあげないわ!」
リリカの方も桃香とはまた会いたかったから、もちろん本当に会ってあげないなんてことはないのだけれど、それでも桃香は手をどかしてくれた。
「さ、早く寝なさい。じゃないと桃香が眠るのを待たずに先に寝ちゃうわよ」
「やだぁ。リリカちゃん、モモカが眠るまでいてくれないとやだよぉ」
「はいはい、わかったから早く寝なさいよ」
なんだか本当に妹みたいだ。桃香は遠目でみたら、とても背の高くてなんでも着こなしちゃうカッコいい女の子なのに、近くで見るとなんて子どもっぽいのだろうか。人間同士だと、きっと背の高い見た目に引っ張られて、子供っぽい部分をはっきり認識できなさそう。
リリカの視線だと、全体像をほとんど把握できないおかげで子どもっぽい部分をはっきりと見ることができているのかもしれない。ある意味、小さなリリカの特権なのかもしれない。
リリカはさらに桃香の顔に近づいた。目を瞑っている桃香は近づいていることに気づいてはいなさそう。スースーと小さな可愛らしい呼吸に髪の毛をバサバサと揺らされながらリリカは近づいていった。
「さ、早く寝なさい」
体を預けながら、ゆっくりと桃香の可愛らしい鼻先を撫でた。一瞬ビクッと体を震わされた拍子に鼻先で突き飛ばされてしまいかけてびっくりしたけれど、慌てて身を屈めて、事なきを得た。大きな体の桃香なのに、小さな妹をあやしているみたいで、少し疲れてしまった。
「眠ったのかしら?」
スースーと規則正しい寝息を立てている。リリカがソッと離れても起きることはなかったから、もう眠ったらしい。リリカはそっと離れて、机の上にいるアカリと一緒におしゃべりをしていた綾乃のことを呼んだ。
「わたしも机に上げてほしいわ」
綾乃は気づいてくれて、リリカのことをギュッと掴んで、机の上に乗せてくれた。まだリリカたち小人の扱いになれていないのか、握る時の力加減がわかっていなくて苦しかった。
「私ももう眠るから、あとはお二人で好きにしてくれたらいいわ。電気も消してもいいのかしら?」
いいですよ、とアカリが伝えると、部屋が真っ暗になった。リリカとアカリは、タオルで作った簡易的な布団にくるまって、一緒に向かい合った。久しぶりに近くで向かい合うアカリの安心感にホッとしたのだった。




