ドキドキと安心 6
少しの間談笑していると、もうすでに時間は22時を回っていた。
「もうかなり遅い時間になったわね」
リリカがのんびりとした声を出すと、アカリが慌てていた。
「どうしよう! 早く帰らないと」
「どうしたのよ、なんだかシンデレラみたいなこと言ってるわね?」
「プティタウンに入れるの沙希さんだけだから、迎えに来てもらうなら早く来てもらわないといけないよ?」
「別にみんな泊まっていってもらっても構わないのよ?」
そんな2人の会話を聞いて、綾乃が提案してくれた。
「いえ、リリカもずっと人間の世界にいて疲れたと思いますし……」
アカリが気遣ってくれたけれど、リリカは正直なところ、もう少しだけ桃香と一緒にいたかった。
「ねえ、アカリ。お言葉に甘えて泊めてもらいましょうよ。今から沙希に来てもらうのも悪いわ」
「でも……、大丈夫なの?」
リリカは大きく頷いた。
「桃香も泊まるのよね?」
「泊まりたぁい。綾乃さん、桃香も泊まって良いんだよねぇ」
「ちゃんと親の許可取ってからなら、もちろん構わないわ」
「わぁい!」
桃香がいそいそと親に連絡を入れていた。その間に、アカリがリリカに耳打ちをした。
「ねえ、人間が怖くないの?」
「怖いわよ。でも、桃香はちょっと特別なのよ」
そっか、と声をかけてくれたアカリがとても優しく微笑んでいた。何百回と見た、優しくて安心できるアカリの笑みを見て、リリカも無意識のうちに笑顔になっていた。
それから4人で一緒に綾乃の家でご飯を食べたり、お風呂に入ったりした。アカリとリリカは洗面器での入浴だったけれど、桃香は初めて会った時とは比べ物にならないくらいリリカの扱いが丁寧になっていた。大きな指を這わせて全身を洗ってくれたけど、触り方が優しすぎて、くすぐったかった。そんな風に、平和な時間を過ごしてから、眠ることになった。
「モモカ、リリカちゃんと一緒に寝たいなぁ。ギュッと抱きしめながら眠るんだぁ」
桃香は周りにお花でも咲かせてしまいそうなくらい楽しみに満ちている笑みを浮かべているけれど、そんな桃香のことを綾乃が嗜める。
「ダメよ。寝返りでもうったら潰れちゃうんじゃないかってリリカちゃんが不安になっちゃうでしょ?」
「えぇ〜、リリカちゃん、そんなことないよねぇ?」
「いや、普通に怖いから嫌よ。桃香寝相すっごく悪そうだし」
「そうね、桃香の寝相はすっごく悪いから気を付けた方がいいわよ。横で寝てても朝起きたら横に頭があるのだもの」
リリカの言葉に綾乃が加勢してくれた。寝ている間に180°向きを変えているところはあまりにも簡単に想像できてしまった。思わずリリカが笑ってしまっていると、桃香は大きく頬を膨らませた。
「2人とも酷いよぉ。ねぇ、アカリちゃんはモモカの寝相そんなに悪く見えないよねぇ?」
「さ、さあ。どうだろうね……」
アカリは困ったように苦笑いをした。
「アカリちゃんが味方でいてくれないと、モモカ一人ぼっちになっちゃうよぉ」
取り乱している桃香を見て、3人とも笑っていた。それぞれ初めはギスギスした関係だったはずなのに、実際に会ってみると、とても微笑ましくて楽しい夜になった。結局リリカは、桃香が寝付くまでそばにいることにしてあげたのだった。




