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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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ドキドキと安心 5

状況についていけず、困惑していた綾乃がハッとした声を出した。

「ねえ、その子……」

首を傾げている桃香のことは気にせず、綾乃はカバンの中から、何かを掴んで手のひらサイズの女の子を外に出す。その子がアカリであることは、リリカは当然気がついた。


「わぁ、リリカちゃんくらいの子だぁ。可愛いなぁ」と呑気に声を出した桃香以外の3人がお互いに驚いた表情をする。次の瞬間、リリカが大きな声で叫んだ。


「アカリ!!!」

リリカが桃香の手のひらの上ギリギリまで移動して、前屈みになる。


「今そっちに行くわね!」

「え? ちょっと、リリカちゃん、危ないよぉ!」「リリカ落ちちゃうよ!」

桃香とアカリが同時にリリカのことを止めたのに、リリカは気にせず桃香の手のひらから落ちていく。


「リリカ、危ないから!」

慌てたアカリもまた同じようにリリカを捕まえに助走をつけてから、綾乃の手のひらから飛んだ。

「ちょっと、怪我しちゃうわよ!」


綾乃が慌てて声をかけたけど、アカリも落下した。そんな2人が怪我をしないために、桃香がサッとスカートの裾を持って、上に上げると、リリカとアカリが地面に落下する前にスカートの上に落下させることができた。


「アカリ、手伸ばしてよ!」

リリカがスカートの上に着地した後に少し跳ねながらアカリに手を差し出した。アカリもリリカの方に手を伸ばすと、2人でギュッと手を繋いだ。


「アカリ、会いたかったわ!」

「わたしもだよ、リリカ!」

劇的な再会が桃香のスカートの上で繰り広げられていた。そのまま跳ねるように、スカートの坂を下っていき、桃香の臍の下辺りで2人で着地した。


真っ白な布の上で、リリカが嬉しそうにアカリに話しかける。

「アカリ、わたしとっても大冒険したのよ! ネコに咥えられて、外に連れて行かれたかと思ったら、ネズミに襲われそうになったり、桃香にブーツの中で踏み潰されそうになったり、大変だったの!」


桃香と2人でいる時みたいに軽口を言ったつもりだったのに、リリカの言葉を聞いて、アカリの視線が桃香を睨む。そして、それ以上に強い剣幕で綾乃が立ち上がったかと思うと、思いっきり桃香を怒鳴った。


「桃香! あんたまさか本気でこの子の潰しちゃおうと思ったわけじゃないでしょうね!」

「ち、違うよぉ……」

桃香が泣きそうな目でリリカに視線を送って助けを求めてきた。慌ててリリカが訂正する。


「あ、違うのよ。桃香の知らないうちにわたしがブーツの中に入れられてしまっただけ。むしろその件に関してはわたしは桃香に助けてもらったのよ」

リリカの訂正を聞いて、綾乃がバツが悪そうに視線を天井の方に向けてから、苦笑いをした。


「あっ……。そうなのね。疑ってしまってごめんなさい」

綾乃が立ったまま、そっと桃香の髪の毛を撫でた。綾乃のことは、プティタウンにいるときには、ずっと小人に意地悪をする人という印象だったから、リリカが酷い目にあったと勘違いしたときに、桃香に怒ってくれたのが意外だった。少し見直した。(まあ、桃香は無意味に怒られて可哀想だったけど……)


「でも、綾乃は羨ましいわ」

「え?」

リリカの声に反応して綾乃が下を見た。


「羨ましいってどういうことかしら?」

「桃香の頭撫でてあげられるのが羨ましいってことよ」

「リリカちゃんも撫でてくれるのぉ?」


桃香が自分のお腹の方を見て微笑んで、リリカのことを鷲掴みにする。突然体が宙に浮き上がったから、クレーンゲームの景品にでもなったみたいだ。


「あ、ちょっと桃香。何するつもりよ?」

「撫でていいよぉ」

リリカのことを桃香は頭の上に置いた。柔らかい、オレンジの匂いが漂う桃香の髪に乗せられる。


「こういうことじゃないんだけど……」

大きな手で優しく撫でてあげられるのが羨ましかったんだけどなぁ、と思いつつもリリカが桃香の頭を撫でる。と言っても、優しく撫でたらリリカの感触は伝えることができないので、しつこい汚れを落とすときみたいに、強い力で擦った。


「あ、リリカちゃんが頭撫でてくれてる〜。ありがとぉ」

わたしがしたいのはこういうのじゃないんだけどなぁ、と少しがっかりしながらも桃香が喜んでくれてるならいっか、と思って雑巾掛けみたいな要領で、落ちないように気をつけながら頭なでなでを続けてみた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] わざわざブーツのことだけ言うなんて、リリカあの時結構気に入って印象に残ったようですね。
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