ドキドキと安心 2
リリカはゆっくりと桃香の太ももに近づいていく。とりあえず、そっと撫でてみたけれど、桃香からは何の反応もない。
「力が弱すぎたかしら?」
今度は思いっきり擦ってみた。すると、桃香の声がスカート越しに聞こえてくる。
「あ、リリカちゃん頑張ってくれてるんだねぇ」
くすぐられた時にでる笑いではなく、クスッと言う可愛らしい余裕綽々の声で桃香は微笑んでいた。
「なんかムカつくわね……」
今度はリリカは思いっきり桃香の太ももを叩いた。
「あっ、リリカちゃんが頑張ってるぅ」
楽しそうな声を上げている桃香。どこまでも余裕そうだったから、リリカはもっと普段くすぐられ慣れてなさそうな、さらに付け根の部分へと進んだ。さっきいた場所よりも薄暗くなり、少し湿度も高くなってきているような気もする。桃香の体の部位であるということはわかっているのに、なんだか不気味だった。
「あれぇ? リリカちゃん諦めちゃったのかなぁ」
外から聞こえてきた声の感じだと、桃香はきっと、今リリカがどこにいるのかわかっていなさそうだ。リリカがまったく桃香に触れなくなったから、ふて寝でもしていると思われているのかもしれない。
そんな、油断している桃香の脚の付け根ギリギリの場所を思いっきり上から下に叩くようにして撫でる。
「えぇっ!? リリカちゃん、何やってるのぉ!?」
外から桃香の驚いた声が聞こえてきた。
「効いてるわ! わたしのくすぐりでもっとビックリさせてあげるわ」
さらに下から上、上から下と両手を何度も往復させて、しまいには体全体でぶつかった。
「だ、ダメだってぇ……!」
「そうだ、くすぐるにはちょっと舐めてあげた方がいいかも! きっともっとくすぐったく感じるわ!」
リリカは桃香の太ももの付け根をそっと甘噛みしてから、舌先で舐めた。
「リリカちゃん、そ、それはさすがにダメぇ……」
スカート越しに桃香の手が近づいてきていた。
「あ、ちょっと、何のつもりよ!」
せっかく気分良く桃香のことをくすぐっていたのに、桃香の手がリリカのことをギュッと掴んで拘束してしまった。スカート越しに身動きを封じられてしまう。そのまま強引に、木に引っ付いたカブトムシを引き剥がすみたいに桃香は太ももの付け根にしがみついていたリリカのことを離してしまった。
「自分が効果あったからって、力づくで封じるなんてズルいわよ!」
もう片方の手がスカートの中に入ってきてリリカのことを外に出す。
「は、反則だよぉ!」
桃香が頬と耳を赤くして机に置かれたリリカのことを見つめている。
「反則は桃香の方でしょ? 自分がくすぐりに耐えられなくなったからって、力づくで離しちゃうんだもの」
「耐えられなくなった原因はくすぐりじゃなくてぇ……」
リリカがじっと桃香の顔を見ていたら、桃香の手がリリカのことを上から押さえつけた。突然のことにギャッと変な声を出してしまった。軽い力だから押し潰したりする意図は無さそうだけど、その行為の理由はわからなかった。
「恥ずかしいから、顔見ないでよぉ……」
「もうっ、さっきから訳がわからないわ!」
リリカがムッとした声を体の上に乗っかっている手のひらの下から出したのとほとんど同時に襖をノックする音が聞こえた。




