プティタウンを探せ! 6
「あれ……? ねえ、今さっきリリカちゃん、アカリちゃんに意地悪したら絶交って言ったぁ?」
「言ったけど、それがどうしたのよ?」
アカリに酷いことをしたら許さないというニュアンスを伝えようと思ったのに、なぜか桃香は喜んでいる、
「絶交ってことは、もうお友達にしてくれたってことぉ?」
「してくれたも何も、昨日からもう友達だとわたしは思ってるわよ。友達なんて、告白みたいに同意するものじゃなくて、勝手になってるものだし……、ってちょっと近いから!」
桃香がリリカとおでこ同士くっついてしまいそうなくらい顔を近づけてくる。瞳は潤んでいるから、今にもリリカがびしょ濡れになるくらい涙を流されてしまいそうだし、ワンピースのスカートが大きく揺れるくらい鼻息を荒げているし、本当に桃香の行動はよくわからなかった。
「だってぇ、さっきリリカちゃん、友達になってくれないって言ったからぁ! リリカちゃんとお友達になれたのがすっっっっっっっごく嬉しいよぉ!」
「ああ、もう。興奮し過ぎて飛沫飛んできたから!」
リリカが腕についた桃香の唾を拭いながら、呆れたように指摘していると、今度は両手でガシッとリリカのことを掴んでくる。まったく身動きが取れなくなって、困惑してしまう。
「な、何よ!」
リリカを持った両手を上に掲げて、楽しそうにクルクル回り出した。
「やったぁ、リリカちゃんとお友達ぃ!」
「ちょ、ちょっと、降ろしなさいよ!」
人間の女性の中でも背の高い方の桃香がおもいっきり手を上げた高さだから、ここから落ちたらただではすまない。桃香はとっても楽しそうにしているけれど、リリカにとって、上空30メートルくらいの位置で、高速回転させられるのは、ほとんど絶叫マシンと変わらない。クルクル回っていく景色に怯えてしまう。
「ちょ、ちょっと、桃香怖いわ! やめて!!」
大きな声を出したら、桃香がピタッと止まった。急に止まるから、ギュッと桃香の手に押し付けられてしまった。
「あ、あんたね……」
桃香の手にダラリと横たわっていると、桃香がソッとリリカを机に戻した。
「ご、ごめんねぇ……。モモカ、嬉しかったから、つい……」
「いきなりそんなことされたらビックリするじゃないの……。あんた泣いたり笑ったり表情が忙しすぎるわ……」
泣いているときも、笑っているときも美少女を維持している桃香に振り回されながら、リリカは息を整えていた。
「だって、リリカちゃんがモモカのこと泣かせたり、笑わせたりするからぁ……」
今度は頬を膨らませてムッとしているし、本当に色々な表情をする子で、見ていて飽きない。きっと人間同士で見ても桃香の顔は見飽きないと思ったけれど、小人のサイズ感で、大迫力のサイズで見ているリリカはもっと飽きない。ずっと眺めていられそうだった。
とはいえ、いつまでも桃香のことを眺めていてはプティタウンには帰れない。
「ねえ……。桃香の言い方だと、綾乃って人に連絡取ってもらったら、アカリにまで繋がるのよね?」
綾乃を頼るのは癪だけど、帰るためには桃香に頼んで綾乃に連絡をとってもらうしか無い。
「えぇっとぉ……。綾乃さん、アカリちゃんと険悪だから、きっとアカリちゃんに連絡とってくれないと思うし、アカリちゃんって子も綾乃さんに連絡先は教えてないんじゃ無いかなぁ……」
「それもそうよね……」
桃香もリリカもガッカリしたようにため息をついた。そんなリリカのガッカリした様子を見たからか、桃香が無理やり元気な声を出す。
「で、でもぉ……、綾乃さんが探すの手伝ってくれたら、人手が増える分プティタウンに行くためのヒントが掴みやすくなるかもしれないよぉ! とりあえず綾乃さんに連絡とってみるねぇ」
桃香がいそいそとメッセージを送っている。送っている途中で指が止まった。




