プティタウンを探せ! 3
スマホで調べたらすぐにでも見つかると思ったのに、プティタウンに関する手がかりが少しも見つからなかったのはショックだった。唯一縋れそうなのがスマホだったのに。リリカが俯いていると、桃香もまた座り直してから、机に肘を乗せて、頬杖をついて考え出した。
「どうしよぉ……。モモカ、プティタウンの行き道わからないやぁ……」
多分、これだけ全くヒットしないということは、一般の人には見つからないようになっているのだろうということは想像がついた。
だから、プティタウンの置いてある建物だって、きっと中に小人の街が置いてあるなんてわからないような場所に違いない。桃香が歩いて探しても、きっとそれらしき建物に気付くことはできないのだろう。
「どうしよう、もうわたしプティタウンには帰れないんだわ……」
リリカが泣き出すと、桃香が慌てて宥めようとする。
「モ、モモカも頑張って探すから、泣かないでよぉ……」
桃香が優しい言葉をかけてくれるけれど、リリカの涙は止まらなかった。プティタウンに戻るための方法が無いということは、もうアカリには会えないということなのだから。
「もうアカリには会えないんだわ! アカリに会いたいわ……」
え? と困惑した桃香の声は、泣いているリリカの耳には入らなかった。
「アカリって……」
グズグズと鼻を啜るリリカと違って、桃香はいつの間にか冷静になっていた。
「ねえ、リリカちゃん、プティタウンにアカリっていう小人さんは何人くらいいるのかなぁ?」
「いきなり何よ? アカリは一人に決まってるでしょ」
「そっかぁ……」
桃香の声色が変わって頭を押さえている。困っているのはリリカのはずなのに、まるで桃香が困っているみたいな声をだしていた。
「桃香? どうかしたの?」
涙を拭いながらリリカが尋ねた。
「えっと……、頑張ってプティタウン見つけようねぇって思ってぇ……」
「言われなくても頑張るわよ?」
リリカがモモカのことを見上げると、普段と違って、どこか挙動不審な様子だった。いつもは言う必要のないことまで言っちゃうような、隠し事をしない桃香が、何かを隠している。まあ、隠していることが一瞬でわかるような怪しい様子だから、もはや隠し事とは言えない気もするけれど。
「ねえ、桃香? 何か変よ? 一体どうしたの?」
「モ、モモカはいつも変だから、いつも通りだよぉ」
「いつも変とか自分で言わないでよ……」
たしかに変わった子であることは否めないけれど。普段なら言わないような自虐を言っているし、何かがおかしい。
「とっても怪しいわよ? 一体何考えてるのよ?」
机の上に置いていた手のひらの上にリリカが片足跳びで近寄って、人差し指を両手でグッと掴んだ。一応、リリカの中では逃げられないように拘束するようなイメージはあったのだけれど、残念ながら桃香が軽く手で払い除けるだけで、簡単にリリカのことは引き離せそうだった。
「ねえ、リリカちゃんにとって、そのアカリって子はどういう子なのぉ?」
さっきから、桃香はアカリのことを呼び捨てにしていた。まだ桃香はアカリと会ったことがないから、よそよそしい呼び方なのは理解できるけれど、なんとなく呼び方に困っている様子でもあった。
まるで、そこにアカリに対するネガティブな感情が隠されているみたいに。もちろん、桃香はアカリと会ったことはないから気のせいなのだろうけど。。
「そうね、わたしにとって、アカリはお姉ちゃんみたいな感じかしら? 恋に限りなく近い家族愛? みたいな」
「大切な人なんだねぇ……」
「そうよ、大切な人」
リリカが微笑んだけど、桃香が少し暗そうな表情をしていた。
「ねえ、なんでさっきからアカリのこと聞くわけ? 桃香はアカリのこと知らないでしょ?」
リリカが尋ねると、桃香は諦めたように笑った。
「そのアカリって子のこと、モモカも知ってるんだぁ……」
「嘘っ!? モモカ、アカリのこと知ってるの?」
どこでどういう経緯で知り合いになったのかはわからないけれど、プティタウンに戻る手段の道筋は完全に途絶えてしまったと思っていたから、一気に希望が出てきた。
「ねえ、桃香もしかしてアカリと友達なの? 連絡取れるの? わたし、プティタウンに戻れるの!?」
リリカがワクワクしていたら、普段なら桃香も釣られて喜んでくれそうなのに、桃香は浮かない顔をしたままだった。
「モモカ、アカリって子とは会ったことないから連絡先わからないし、会いたくないよぉ……」
「ねえ、桃香さっきからおかしいわよ? 一体あなたアカリとどんな関係なのよ……?」
「どんな関係なんだろぉ……。わかんないやぁ……」
要領の得ない回答が返ってきて、リリカが首を傾げていると、桃香が続ける。
「わかんないけど、桃香の大切な人を傷つけたのが、そのアカリって子だからぁ……」
「会ったことないのにアカリに傷つけられたって意味わからないんだけど。こんなときに冗談言わないでよね」
「冗談じゃないよぉ。モモカ、真面目だよぉ……。だから、困ってるのぉ……」
追い込まれている桃香の表情が嘘を言っているようには見えなかった。




