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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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リリカを探せ! 4

振り落とされなくてすんで、アカリは大きく息を吐き出した。そんな灯里の頭上で、2人のやり取りが聞こえてくる。


「ちょっと、綾乃ちゃん、邪魔しないで!」

沙希さんはムッとした声を出したけれど、綾乃さんは手を離さなかった。


「そのリリカって子は、アカリがわざわざ一緒に探してるってことは、アカリの友達とか仲間とか、そういう子よね?」

「そうだけど、綾乃ちゃんには関係ないでしょ?」

「直接は関係ないけど、私にも探すお手伝いをさせて欲しいの……」

「そんなのダメに決まって――」


沙希さんが言い切る前に、綾乃さんは沙希さんの足元で突然土下座のような体勢を取った。()()()()と言ったのは、厳密には土下座とは違ったから。両手をべったりと地面につけて身を低くしているけれど、おでこは地面につけずに、沙希さんのサンダルの方を見ている。


客観的に見れば、沙希さんに土下座をしているか、もしくは今から沙希さんの足でも舐めようとしているように見えるかもしれない。艶やかな黒髪が地面にダラリと垂れている。けれど、視線の先にいるのは、厚底サンダルの甲バンドに前屈みでしがみついているアカリだった。


「ちょっと、綾乃ちゃん、何やってるの!」と慌てている沙希さんのことは気にせず、綾乃さんがアカリに向かって声をかける。

「お願いアカリ。あなたの大切な人の捜索をお詫びでするのは失礼かも知れないけれど、あなたの助けになりたいの。そのリリカって子、私も探すから、特徴を教えて欲しいの」

「別に、お詫びとかは気にしなくてもいいですけど……」


「迷惑じゃなかったら、探させて欲しいの……」

「人手は多いに越したことはないんで、正直ありがたいことはありがたいので、もちろんわたしは良いですけど……」


ただ、人間の視点からは多分小さなリリカを探すのは難しいと思う。堂々と沙希さんの厚底サンダルに乗っかっているアカリに気づくことすら難しいのだから。きっとリリカはどこか狭いところに身を隠すようにしていると思う。きっと、綾乃さんが探しても無駄骨になるだけな気がするのだ。


「ありがとう。じゃあ、手伝わせてもらうわ」

それでも、綾乃さんはホッとしたようにしてゆっくり立ち上がると、手をパンパンとして、ついた砂を払った。上空から次々と降ってくる小石サイズの砂はぶつかったからかなり痛いから結構怖いのだけれど、幸いアカリの近くには降って来なかったら助かった。とはいえ、やっぱり綾乃さんはまだアカリたちのサイズ感では脅威になるものの認識ができていないみたいだったから、不安なことは不安だった。


「大丈夫かなぁ……」

心配混じりに小さな声で呟いてから見上げた綾乃さんは、小さく手をグーに握って、凛々しい表情をしているから、やる気は持ってくれているみたいだ。綾乃さんの凛々しい表情はなんだかつい見惚れてしまうような魅力があって、アカリは目が離せなくなってしまう。


「じゃあ、私はあっちの方探してくるわね!」

早足で去っていった背中をぼんやりと見送る。


「アカリちゃん、わたしたちも探すの再開しよっか」

沙希さんが声をかけてくれて、我に帰った。


すでに日が暮れていて、そこから時間が許す限り探したのだけれど、残念ながらその日はリリカを見つけることはできなかった。まさかリリカが桃香の家にいるなんて、アカリたちは考えもしなかった……。

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