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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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リリカの怪我 6

聴診器を首からかけた女性医師が早足でアカリたちの元へやってくる。

「患者さんはどこかしら?」

真剣な口調で尋ねてきた女性医師は、アカリとリリカを運んできてくれた女性と同じくらいのサイズだった。小人用の病院と言っていた女性の言葉を信じたのに、医師は人間ではないか……。


「ちょ、ちょっと! あんたにリリカを助けられるわけないじゃないの!」

大きな人間にリリカを扱う繊細な作業ができるわけがない。だけど、女性医師はアカリの言葉は無視して、女性の手のひらで横たわっているリリカを見つけて、力強く頷いている。


「この子ね。ほんと、酷い怪我だわ」

医療用のゴム手袋を付けてから、慣れた手つきでリリカを優しく掴んで、手のひらにそっと置いた。そして、そのまま院内の奥の方へと進んでいく。


「ちょ、ちょっと! あんたなんかに任せられないわ! わたしも連れて行きなさいよ!」

「それは、この子の治療はして欲しく無いということかしら?」

「そんなわけないでしょ! 治療はして欲しいわよ! でも、あんたは信用できないから、わたしも連れて行きなさいって言ってるの!」

そもそも人間にリリカの治療を繊細にやり遂げられるわけがないのだ、とアカリは立腹していた。


「ごめんなさい。衛生上の観点から手術室には医者と患者しか入れられないわ」

「ふ、ふざけんな! せめて最期くらいリリカのそばにいさせてよ! わたしたちを引き離さないで! リリカはわたしに手を握ってもらうのが大好きだったんだから、せめて今くらいは――」

「最期にさせないから大丈夫よ。わたしの旦那、とっても腕はいいから安心して。あなたの大事な子は、わたしの旦那が何とかしてくれる。治ったら、またいっぱい手を握ってあげて」


リリカを手に乗せた女性医師に力強く言われたのと、アカリを持っている女性が、アカリのことを離してくれなかったのとで、身動きはとれなかった。結局、リリカと同じ部屋には入れてもらうことはできなかった。


「リリカが連れ去られちゃったわ……。ごめんねリリカ……」

女性の手のひらの上で、アカリは崩れ落ちて泣いた。


「今は信じようよ」

「信じるって言っても、わたしは小人専用の病院があるから信じてきたのに、なんで……。あんな大きな人にリリカの治療はできないよ……」


「さっき言ってたでしょ。治療するのはあの人じゃない。あの人もお医者さんだけど、人間向けのお医者さん。で、旦那さんが小人なんだよ」

優しく諭されたけれど、意味がわからなかった。


「旦那さんが小人って……。じゃあ、人間と小人で結婚してるってこと? それ本当なの?」

「そうだよ」と答えて、女性はこの病院のホームページを見せてくれた。この県で唯一の小人医のいる病院であると書いてある。そして、勤務医の紹介のところに、先ほどの女性の使っている机の上で一緒に写っている小さな男性がいる。


「この人が今リリカのことを治療してくれている先生ってこと?」

「そう。名医らしいからきっとあなたの大切なリリカちゃんっていう子のことも治してくれるよ」

「そう……、ですか……」

アカリが小さく息を吐いた。事情は理解できた。一応、上手くいくための道筋はきちんと想定されていたらしい。


リリカが今も必死に治療をしてもらっている以上、まだ油断をしてはいけない。それでも、アカリたちを運んで来てくれた女性が悪い人ではなく、完全善意であったことにホッとした。ゆっくりと見上げて、彼女の顔をしっかりと見る。ずっとここに連れて来られるまで、彼女のことを悪く思っていたことを反省する。


「すいません、わたしあなたのこと疑ってしまっていて……」

女性に対して、キツく当たってしまっていたことを反省しながら、言葉遣いを改めた。アカリの謝罪を聞いて、彼女はゆっくりと首を横に振った。


「わたしもかなり強引に連れてきちゃったから……」

「いえ、無理やりにでも連れてきてもらえて、本当に助かりました……。あの、お名前は……?」

「菜綿沙希だよ」

「菜綿さん、ありがとうございました」

「沙希でいいよ。それに、お礼はリリカちゃんって子がちゃんと戻ってきてからにして」


アカリが小さく頷いた。そうなのだ。沙希さんが優しい人で安心したけれど、まだリリカは助かったわけではない。先ほどまで虫の息の重体だったのだ。不安な気持ちは無理やりおしゃべりをして、文句を言い続けていたことで和らげていたから、静かにしていると俄然不安になってくる。静かな環境で、沙希さんの腕時計の音だけが聞こえている。


「リリカ、大丈夫かな」

不安な気持ちを抱えているアカリの頭を、沙希さんの指先が優しく撫でてくれた。

「きっと大丈夫だよ。ここの先生はとっても優秀だから」


「……握っててもいいですか?」

「え?」

「指先、握らせてもらってもいいですか?」

沙希さんは一瞬不思議そうにしていたけれど、すぐに頷いてくれた。

「いいよ。小指の方がいいかな?」


そっと差し出してくれた小指を、抱き枕みたいにして抱き締めて、体をくっつけると、アカリの心臓がいつもの倍くらい早く動いていることがわかる。そして、沙希さんの脈も少し早く打っていることがわかった。沙希さんの小指にギュッと体を引っ付けながら、リリカが無事に出てくることを信じて待っていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 人間と小人の夫婦はいるんですね! 百合でも、男女でも、サイズ差の恋愛はいいですね。
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