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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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リリカの怪我 1

アカリはプティタウンの中をトボトボと歩いていた。

「リリカ、どこに行っちゃったの……」


一歩ずつ、よろめきながら歩いては立ち止まって俯いてため息をついた。普段は出入り口から家までは5分もかからないのに、今日は30分経ってもまだつかなかった。


先ほど、アミさんと愛菜さんで一緒にリリカのことを外に探しに行ってくれた。2人ともアカリに気を遣って、アカリは外に行かずに家で待機しておいてもらって良いからと言ってくれた。確かにリリカがプティタウン内にいる可能性もゼロではないから、待機しておいた方がいいのかもしれない。


だけど、帰ってもリリカのいない部屋になんて本当は戻りたくはなかった。普段はアカリが帰った時には必ず家の中で待ってくれているリリカ。ピョンピョン跳ねながらアカリの帰りを喜んでくれるリリカ。人間に対する恐怖心から、時々警戒心の薄いアカリにお説教もするリリカ。その全てが愛おしかった。


「ねえ、リリカ。会いたいよ……」

結局1時間弱かけて、なんとか家に帰ったけれど、誰もいない寂しい部屋で待機するのは辛かった。アカリだって、早くリリカを見つけるために外に出て探し回りたかった。


そのせいだろうか、気付けば部屋の端っこに置いていある、携帯電話なのか固定電話なのかわからないような大きな電話機を触っていた。指は無意識のうちに沙希さんの家の番号を押していた。


「どうしたの、リリカちゃん?」

沙希さんはすぐに電話に出てくれた。

「あの、沙希さん……」

自分の思っていた以上に暗い声が出てしまった。その後の言葉が出てこない。


「大丈夫……?」

沙希さんがとても心配そうに尋ねてくる。

「あの……、リリカが……」


いなくなっちゃった、と言おうとする前に涙が溢れてきて、嗚咽をしてしまっていた。早く泣き止まないと沙希さんが心配してしまう。すぐに泣きやまないと……。そう思うのに、まったく止まってくれなかった。


沙希さんが小さく息を吸ってから、普段よりも一層真面目そうな口調で、「すぐ行くね」と言ってくれた。事情を聞く前に無条件で助けに来てくれる沙希さんの優しさに甘えてしまう。先ほど送ってもらったばかりなのに、また沙希さんにプティタウンまで来てもらうことを申し訳なく思いつつも、また頼ってしまった。


「すいません、沙希さん……。ありがとうございます」とすでに切れている電話口に向かって小さく呟いてから、いつもリリカの座っている場所まで行って、そっと床を撫でた。


「リリカ、ごめんね。リリカの言うこと聞いて、家の中で待っておいたらリリカが間違って外に出ちゃうこともなかったのにね……」

今頃きっと一人ぼっちで巨大な世界に放り出されて泣いているに違いない。きっと心細いであろうリリカのことを思うと、胸が痛くなってきた。


一人で外にでるくらいなら、沙希さんと綾乃さんのところに向かおうとしていたアカリのことをいっぱい詰って止めてくれた方がよかった。引っ叩いてくれてもよかったし、無視してくれてもよかった。リリカが危ない目に遭わない為なら、何をしてくれてもよかったのに……。


リリカはせっかくプティタウンに来て、少しずつトラウマを克服して、元気になっていっていた。怪我をする前みたいに天真爛漫な性格から、少し斜に構えたような性格にはなってしまったけれど、それでもようやく元気になってきたのだ。


怪我をしてから暫くの間は、食事はほとんど食べられないし、話もできないような状況が続いていた。そんなリリカがやっと元気になったと言うのに……。


あの日のことは今思い出しても冷や汗が出てきてしまう。地面に転がった野イチゴ、血まみれになったリリカ、あらぬ方向に曲がっていた左足、悲鳴に近い泣き声……。


込み上げてくる胃液を慌てて飲み込んだ。思い出したくないのに、今もピンチに陥っているであろうリリカのことを考えると、勝手にフラッシュバックしてしまうのだった。


そして、あの時も助けてくれたのは沙希さんだった……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっと沙希とアカリの方の戻ったんですね。もはや桃香とリリカの物語になるところだった。 確かに桃香の方が小人になってもリリカが振り回されますよね。私の書いたコㇿポックㇽの物語もそうですし。…
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