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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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桃香の家にて 5

「はぁい、モモカですぅ」

電話に出た桃香は、リリカに話す時と同じような話し方をしていた。誰に対しても間伸びした、あざとい話し方をしていることが電話の仕方でわかった。


リリカたちの使っている携帯電話とは違い、桃香の使っているスマホは、音漏れを全然しないから何を話しているのかはよくわからなかった。ただ、桃香の顔が少し青くなっているようだったから、あまり良い連絡ではなさそうだった。


「え、お仕事って今日でしたっけぇ!? ごめんなさぁい……」

慌ててスマホを切ってからカバンを持ってくる。移動のときに机に思いっきり足をぶつけて、リリカの足元は大きく揺れた。

「痛いよぉ」と足をぶつけた桃香が嘆いているけれど、そのせいで転んで体を打ち付けたリリカだって痛かった。


「ちょっと、気をつけてよね。危うく落ちちゃうところだったじゃないの!」

「ごめんねぇ。でも、モモカ急いで行かないと……。でも、リリカちゃんそのまま置きっぱなしにしてたら、間違って地面に落ちたら危ないよねぇ」


桃香が頭を悩ませていた。そのまましゃがんで、桃香がリリカの方に人差し指を向ける。考え込んでいるから、多分無意識なんだろうけど、ツンツンとリズミカルに触ってきているのが鬱陶しくて、指を思いっきり払い除ける。


「ねえ、桃香。あなた早く準備しないとダメなんじゃないの?」

「そうなんだよぉ! モモカ、すぐに準備しないといけないのにぃ! でも、リリカちゃん机に放置するのも心配だよぉ! 落ちたら危ないし、もし部屋に何かの間違いで鳥とか野良猫でも入ってきちゃったら大変だし……。でも急がないとぉ……」

また立ち上がった桃香が急いで準備に戻る。一旦部屋から出て、大慌ててで戻ってきた。


「とりあえず、ハムスターのゲージ持ってきたよぉ」

「持ってきてどうすのよ……、って嘘でしょ!?」

リリカのお腹周りを持って、投げ入れるようにしてゲージの中に突っ込んでしまった。そして、鍵をかけた。鍵と言っても、錠前ではないから、人間なら簡単に開けられるけど、内側から非力なリリカが開けるのは多分不可能だ。


「よし、これで大丈夫!」

「何が大丈夫なのよ!」

リリカの反応も気にせず、桃香が立ち上がって、慌てて出て行こうとする。


「じゃあ、行ってくるねぇ」

「ま、待ちなさいよ!」

「どうしたのぉ?」

「こんなんで大丈夫なわけないでしょ!」


「ほんとだぁ! お水入れてなかったぁ! ごめんねぇ、モモカドジだからぁ」

「そういう話じゃないわよ! 人のことペットみたいにするなって言ってんの!」

リリカが思いっきり睨みつけたけど、桃香が可愛らしく首を傾げた。


「……もしかして、連れて行ってほしいのぉ?」

「そういうわけじゃな……って、何するのよ!」

桃香がリリカのことを手に乗せて、そのまま頬にくっつけてきた。


「リリカちゃん、可愛いねぇ!」

「ど、どうしたのよ、いきなり! 行動がわけわからないんだけど!」

とても柔らかい頬だったから、痛くはなかった。クッションみたいで、衝撃は全部吸収されていっているような気もした。


「家には居ずに、モモカと一緒にいたいって言ってくれてるんだねぇ」

「言ってない、言ってないわよ!」

とはいえ、実際部屋の中に一人でいるのは心細いのも確かだけど。


「綾乃さんに怒られて、モモカ落ち込んでたんだけどぉ、リリカちゃんのおかげで元気が出てきたよぉ」

勝手に勘違いして、元気を出されても困るんだけど! と言おうと思ったけれど、それよりも綾乃という名前が気になった。アカリに意地悪をしたあの子と同じ名前。別にそこまで珍しい名前でもないから、あくまでも確認のつもりで、その人物のことを聞こうと思ったけれど、その機会はリリカに訪れてくれない。


「あ、急がないとぉ」

桃香がサッとリリカのことをカバンの中に入れてしまった。

「ねえ、ちょっと、綾乃って人のこと聞かせてよ!」

リリカは叫んだけれど、すでにファスナーの閉められたカバンの中で、その声は虚しく響いていた。

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[一言] 男なら誰でも一度は夢見る……美少女が飼ってるハムスターになりたいと
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