表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/107

桃香の家にて 4

「酷いわ……」

体を包まれてる大きなハンカチで、目を拭いながら桃香に訴えかけていた。すぐに掬い上げてもらったから、火傷にはなっていなかったけれど、痛みはあった。


「だから、人間って嫌いなのよ。みんなわたしに意地悪ばっかりするんだもん……」

大泣きをしているリリカを桃香が申し訳なさそうに見つめていた。


「小人さん、ごめんねぇ……」

「だいたい、わたしの名前は小人じゃない、リリカよ」

「リリカちゃん、ごめんねぇ……。モモカ、意地悪しようと思ったわけじゃないんだよぉ……」

「思ってなくても、いっぱい意地悪してるじゃないのよ!」


ムッとはしたけれど、桃香の主張は理解できた。桃香はどこかズレてはいるけれど、迷子になったリリカのことを連れて帰ってくれたし、吐瀉物のついたワンピースだって躊躇せずに洗ってくれたし、外から帰って体を洗ってくれようともした。


多分根は悪い子じゃないのだと思う。それでも、桃香の行動は人間嫌いのリリカにとっては苦痛でしかなかった。


「ごめんねぇ……」

桃香も可愛らしい顔を曇らせていた。あんまり文句を言っても可哀想かもと思っていると、桃香がまた口を開いた。

「モモカ、とっても鈍臭くて、いつも失敗ばっかりしちゃうんだぁ……」


そう言って、今度は桃香がグスン、と手の甲を目元に当てて、あざとい格好で泣き始めた。芝居がかった可愛らしい泣き方だったから、初めは嘘泣きだと疑ったていた。涙がポタポタとリリカの足元を濡らしていく。本当に涙まで流すなんて、器用に嘘泣きをする子だと思ったけれど、そんなことをするメリットは桃香にない気もする。


「何よ……? 突然嘘泣きなんかしてどうしたのよ?」

「嘘泣きじゃないよぉ」

「本当に泣いてるのだとしたら、あまりにもあざとすぎると思うわ」

「知らないよぉ。桃香、ずっとこんな泣き方だもぉん」


「だいたい、本当に泣いているとしても、あんたが泣いてる意味がわからないんだけど!」

「モモカ、リリカちゃんと仲良くしたいのに、嫌われちゃってるんだもぉん。リリカちゃん、とっても可愛いから、仲良くしたいのにぃ」

「そんなこと言われても知らないわよ……」


一方的に友達になりたいと宣言されても、リリカは人間が苦手なのだから、そんなの拒むに決まっている。とはいえ、友達になりたいなんて、子どもみたいな無邪気な希望を雑に払いのけるのも、少し罪悪感はあった。桃香の方が大泣きを始めてしまったせいで、リリカの方の涙はすっかり乾いて、いつの間にか冷静になっていた。


「あんた何歳なのよ?」

部屋の周りをゆっくりと見回すと、かけてあるのはセーラー服のようだったから、この子はおそらく中学生か高校生。見た目は大人びていて、クールと可愛らしさ、両方を兼ね備えていてカッコいいのに、性格はかなり子供っぽい感じだった。


「15歳だよぉ」

「ふぅん。じゃあわたしと1つしか変わらないのね。14だから」

「リリカちゃん、もっと子どもと思ってたぁ」

「……仲間からもよく言われるわ」


同じくらいのサイズの子たちから見ても幼い顔つきらしいし、同族の中でも小柄だから、よく小さな子どもと間違えられていた。


「歳が近いんだったら、やっぱりお友達になれそうだねぇ!」

「わたしはなりたくないから」


不機嫌な声でそう言うと、桃香はまた大きな瞳を潤ませていた。ちょっと可哀想になってしまって、リリカは慌ててフォローを入れる。


「べ、別にあんたのことが特別嫌いって訳じゃないわよ。ただ、ちょっといろいろあって人間が苦手なだけ。わたし、大きな人は怖いのよ……」

「そっかぁ……」

口調は普段通りのんびりしていたけど、表情はは寂しそうだった。


「じゃあ、リリカちゃんのお家見つけたらサヨナラなんだねぇ……」

そうね、とそっけなく言ったら、桃香はやっぱりしょんぼりとして、静かになってしまった。


桃香に悪気がなかったことがわかったからか、それとも年齢が近くて親近感が湧いたのかはわからないけれど、桃香のことは初めに道であった時ほどは嫌悪感はなかった。まあ、無邪気な暴力ほど恐ろしいものはないから、まだまだ警戒しないといけないのだけど。


動かない方の足をさすりながら、リリカが桃香の寂しそうな顔を見上げていたら、桃香のスマホが突如音を立てた。

うるさっ、と叫んでから、リリカは慌てて両耳を塞いだ。大きなスマホから流れる音は、放送用のスピーカーみたいでかなり大きかった。


「あ、マネージャーさんだぁ。なんだろぉ」

いつの間にか泣き止んでいた桃香が、呑気にスマホを手に取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新嬉しいです。最近以前みたいに毎日更新ではないから。 やっぱりこの2人のやり取りは可愛くて見守っていきたいです。 [一言] 私もノベルアップ登録して少し使ってみたのですが、やっぱりもう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ