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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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消えたリリカ 1

沙希さんの家にいたアカリは、いつものように沙希さんに運んでもらってプティタウンに戻ってきた。


「沙希さん、今日はありがとうございました。それに、結婚もおめでとうございます!」

先ほど沙希さんの家で結婚の話と引越しの話を聞いた。沙希さんに会える機会が減ってしまうから、少し気落ちはしていた。けれど、結婚が理由ならめでたいことなのだから、とできるだけ明るい調子で沙希さんに言った。


アカリの言葉を聞いて、沙希さんは少し寂しそうに微笑んだ。

「うん、ありがと……」


「じゃあ、またね」と沙希さんがアカリの髪の毛を優しく撫ででくれる。

「まだお別れするわけじゃないんですから」

アカリが苦笑いをしてから、沙希さんの手から下ろしてもらい、手を振ってお互いに解散してから、プティタウンの入り口に向かった。


「あれ、開けっ放しじゃん!」

アカリが慌ててドアの前に向かった。プティタウン唯一の入り口は虫が入ったりしたら大変だから、出入りしたらすぐに閉めないといけないのに。


急いで中に入って、内側からアカリは扉を閉めた。

「まったく、気をつけてもらわないと。中に虫が入ってリリカが襲われでもしたら大変だよ」

口を尖らせながら、プティタウンの中を歩いて、アカリは家に戻った。


リリカとは少し気まずい感じで家を出てきてしまったから、機嫌を直してもらうために、沙希さんにもらったお菓子を持って帰る。チョコレートのかかったクッキーを2枚ももらった。沙希さんが入れてくれたジップロックは、沙希さんにとっては手のひらサイズだったけれど、アカリにとってはサンタさんの袋みたいに大きかった。引きずるようにしながらドアを開ける。


「リリカ、ただいまー。さっきは無理に出ちゃってごめんね……、ってあれ? いないの?」

いつもならドアを開けた瞬間に飛び跳ねながらやってくるリリカの姿がなくて首を傾げた。まだ怒ってるのだろうか。


「リリカ、ごめんって。もうわたし、撮影のお仕事もやめてずっと一緒にいられるようにしたから、機嫌直してよー」

語りかけるようにしながら部屋の奥まで行ってキョロキョロと室内を見渡したけれど、リリカはいない。


「リリカ……?」

大抵の場合、リリカは家でアカリのことを待ってくれているのに、珍しい。稀にアミさんの家に行っていることもあるから、アカリはとりあえずアミさんの家へと向かった。


けれど、アミさんの家にもいなかった。

「リリカちゃん、うちには来てないかなぁ……」

アミさんが申し訳なさそうに言う。


「そうですか……」

「どこにもいなかったの?」

「まだ家の中しか見ていないので、もしかしたらどこか街の中にいるのかもしれないので、ちょっと見てこようと思います」

「わたしも一緒にいくわ。手分けして探しましょう」


アカリはアミさんと共にプティタウンを駆け回った。リリカの足だとそんなにも遠くに行けないはずだし、すぐに見つかるはず。きっとさっきちょっとした喧嘩みたいになっちゃったからどこかで拗ねているんだと思う。とりあえず、プティタウン内にある休憩用の簡単なカフェテラスとか、身近なものを買うためだけの雑貨屋とか、町の中にある誰でも入れる場所は一通り回ってみた。けれど、結局リリカはどこにもいなかった。アカリの背筋がスッと寒くなってしまう。


「ねえ、リリカ! 出てきてよ!! 謝りたいから、謝らせてよ!!」

町の中全体に響き渡るような大きな声を出したつもりだった。だけど、リリカからの反応は全くない。


「どこよ! どこにいるのよ!」

今度は一軒一軒町を見て回ろうとしたときに、アミさんの声がアカリを呼び止めた。

「ねえ、アカリちゃん!」

アミさんが慌ててこちらにやってくる。


「見つかりましたか!」と嬉しそうな声を出してみたものの、アミさんの表情は明らかに不安でいっぱいになっていた。

「……アミさん?」

一瞬アカリから目を逸らした後、言いにくそうにアミさんは口を開いた。

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