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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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リリカの大冒険 4

「いやよ……、来ないで……」

今度は立ち上がって片足で跳ねて逃げた。だけど、ネズミのほうが今のリリカよりも遥に早い。素早い動きで、距離は一瞬で詰められてしまった。なんとか結局路地裏から出て、光の当たっているところに出てくる。ピョンピョン跳ねて、ようやく日が差しているところにやってきたけれど、もうネズミはすぐ後ろにいる。


「嫌ぁ……」

喉の奥から振り絞って覚悟をした時に、リリカのことを大きな振動が襲う。すぐ真後ろにヒールサンダルが振ってきて、暗い影がリリカとネズミのことを覆ったのがわかった。振動と大きな影に驚いたネズミは、リリカを追いかけてきた時よりもさらに素早く路地裏に戻ってしまった。大きな影の正体が何かなんて気にしている余裕はなかった。だけど、とりあえずとても大きな、リボンのついたヒールサンダルの振動がリリカのことを救ってくれた。


「偶然通りかかった人間にびっくりしたのかしら?」

理由はともあれ怖いネズミがどこかに行ってくれたので、ほんの少しだけ見知らぬ人間に感謝してから、安堵のため息をついてみたところで、まだ難は去っていないことに気付く。


「……ねえ、待って! どうしてまだわたしは影の中に入っているわけ!」

周囲は雲はほとんどない晴天で晴れている。だけど、リリカのいる場所はほっそりと伸びた影の中。その横にも、同じようにほっそりと伸びた影があった。まるで、2本の柱の影の中にいるみたい。


恐る恐る後ろを振り向くと、ヒールサンダルが目の前にあったままだった。嫌な予感と共に、ゆっくりと頭上に視線をあげていく。その目の高さが高くてよくわからなかったけれど、きっとリリカのことを見据えていた。


「小人さんだぁ……」

間伸びした声がした。リリカはしっかりと視線の中に捉えられていた。


「あ、あっちに行きなさい……!」

必死に手の甲を向けて、しっしっとポーズを作ったけれど、きっとそのポーズは人間には見えていない。あっちに行くどころか、しゃがんで顔を近づけてくる。彼女がリリカにグッと顔を近づけても、それでも地面に近い場所にいるリリカとの距離はそれなりにある。


「よく見えないなぁ」

リリカのことを簡単に摘めてしまう大きな手が近づいてきて、リリカは慌てて逃げようとした。なんとか立ち上げって逃げようとしたけれど、慌てているせいですぐに転んでしまった。


「あっ、転んじゃったぁ。可愛いなぁ」

必死なリリカとは対照的にのんびりとした声が頭上から聞こえてくる。転んでいたから、地面のすぐ近くに視線を向けていたリリカの体があっという間に宙に浮かぶ。どんどん地面が遠ざかっていき、落ちたら大怪我をしてしまうような高さにまで体が浮いていく。巨大少女の親指と人差し指でお腹周りをもたれて、持ち上げられた。


「やめなさい! 離せっ!!」

手足だけしか動かせないから左足以外を必死にバタバタと動かしたけど、巨大な少女はまったく離してくれる気配はなかった。


「一生懸命体を動かして、なんだか虫さんみたいですねぇ」

少女が可愛らしく小首を傾げたのと同時に、彼女の可愛らしいベロアリボンの髪飾りが揺れた。幼い話し方をしていたから、てっきりリリカよりも年下だと思っていたけど、思ったよりも大人びた顔をしていた。そして、とても美人さんだった。パッチリと目が大きくて、鼻筋が通っている。


「人のこと虫呼ばわりしないでよ! 酷いわ!」

思いっきり睨みつけたつもりだけど、少女はきっと睨みつけたことに気づいてもいない。

「だってぇ。そう見えちゃったんだもん」


「早くわたしを降ろしないよ!」

リリカが引き続き手足をバタつかせていると、少女が立ち上がった。リリカの視線が強制的に高くなる。プティタウンのある机の上から見た地面も高くて怖かったけれど、それよりもずっと高い場所に浮き上がらされてしまい、怖くなる。


「手、離しちゃっても大丈夫かなぁ?」

少女が意地悪気に微笑んだ。

「さっきしゃがんでるときに離せって言ったのよ! 意地悪ね」

リリカはもう一度、キッと少女を睨みつけたけど、少女の方はそんなリリカの表情の変化にはやっぱり気づいていないようだった。

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