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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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リリカの大冒険 1

「アカリのバカ!!」

部屋に一人取り残されたリリカが大きな声で独り言を吐き捨てた。


マカロンパーティーが終わって、家に帰ってきたら沙希からの電話があり、そのままアカリは外に出てしまった。おかげでリリカは一人だけ部屋の中に取り残されてしまったのだった。


「あれだけ止めたのに出て行っちゃうなんて! またあの綾乃ってやつに意地悪されちゃったらどうするつもりかしら!」

リリカがムゥっと頬を膨らませた。


今こうしている間にも酷い目に遭っているのではないかと思うと気が気でなかった。綾乃がアカリに謝りたいと言っていたらしいけど、そんなの嘘に決まっている。きっと今度は前よりももっと酷いことをしようと企んでいるに違いない。綾乃の顔は見たことないけれど、邪悪な笑みを浮かべている少女の姿がリリカの脳裏には浮かんでいた。


「アカリに意地悪したら、わたしが思いっきり指に噛み付いてやるんだから!!」

リリカが歯をガシガシと上下に動かして、噛む真似をしてみた。まあ、目一杯大きく口を開いても、人間の指を口の中に入れることはできないことはリリカも知ってはいるのだけれど。


「もしアカリに何かあったら、わたしが助けてあげないと!」

今のアカリが置かれているであろう状況のことを考えると、不安の感情が募ってきて、居ても立っても居られなくなってくる。バランスを崩しながら立ち上がり、片足飛びで外に置いてある車椅子のところに行く。


「とりあえず、アミのところに相談しにいくわ」

タイヤをクルクル回して、自分で車椅子を押していく。近頃はアカリの優しさに甘えているけれど、元々は一人で動かしていたから、手慣れてはいた。


目指すはアミの家だった。アミの家まで距離はそう遠くない。さっきもマカロンを食べに行ったばかりで、すぐに戻ってきたら何事かと思われるかもしれないけれど、そんなこと気にしている場合ではない。


アミの家に着いて、ドアをノックしようとしたときに、例の音の大きな携帯電話の音声が部屋の中から響いてきた。

「外に会話がまる聞こえよ。あの電話、絶対不良品だわ!」

プンスカと八つ当たりみたいに電話に怒りながら、リリカはアミの電話が終わるのを待とうと思っていた。


終わったらすぐにでも声をかけようと思ったのに、耳に入ってきた電話の向こうの愛菜の声にリリカの動きが止まった。

『じゃあ、来月の初めから、一緒に住めるんだね! 24時間アミと一緒にいられるの、超嬉しい!』


一緒に住めるとか、24時間いられる、とかなんだかあまりいい響きではないように思えた。これではまるで、アミが愛菜と同棲して、プティタウンを出ていくみたいに聞こえる。別に盗み聞きするつもりはなかったのに、不安になってリリカは壁に耳をピッタリくっつけていた。


「わたしも楽しみだわ……。まあ、この町を出るのは少し寂しいけれど……」

町を出る……? 寂しい……? 聞こえてきた不穏なワードに、リリカの胸が鼓動が速くなっていた。


「とりあえず、まだみんなに言えてないから、きちんと言うようにするわ」

『ちゃんとお別れの挨拶はしないとだよ』

「そうね……。でも、なんだか言いづらいわね。アカリちゃんとかリリカちゃんとかに会えなくなるのは寂しいもの」

『気持ちはわかるけど、だったら、なおさらちゃんと言ってから出ないとダメだよ!』


そんな会話をドア越しに聞いていたリリカは、小さくため息をついた。そして、車椅子を動かして、ゆっくりとアミの家から離れていった。

「嫌なこと聞いちゃったわ……」


前々から予感はしていた。アミと愛菜の仲の良さは明らかに友達よりも深い仲だったから。愛菜の髪の隙間から見える首元に、アミの付けた小さなキスマークがあったのを一度見つけたことがある。


人間と仲良くなってプティタウンから出て行くというのはよくあることだから、そこまで騒ぐことではないけれど、今回離れていくのは大好きなアミだったから、気落ちしてしまう。アミと日常的に会うことができなくなるなんて考えただけで寂しくなる。髪の毛のセットをしてもらったり、ネイルをしてもらったりすることもできなくなってしまう。


「みんな、わたしのことなんて置いてっちゃうんだわ」

頬を膨らませながら、リリカはどこに行くでもなく車椅子を進め続ける。アミには愛菜がいるし、アカリはリリカよりも沙希を優先して出かけてしまった。


「外の世界の何が良いって言うのよ……」

気付けばプティタウンの出入り口の辺りまで来ていた。思えば、リリカはあの日、大怪我しているところをアカリと沙希に助けてもらって、アカリと共にこの町に来てからは一歩も外に出ていなかった。


「どうせ、アカリもアミもわたしのことなんてどうでもいいのよ」

そんなことを呟きながら、ヤケになってドアを開けた。迎えに来てくれた人間がいない時は、原則この町から出るのは禁止だった。だけど、リリカは車椅子から下りて、片足で外へと進んでいく。

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