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手のひらサイズの恋 〜小人と人間のサイズ差ガールズラブストーリー〜  作者: 穂鈴 えい


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マカロンパーティー 3

「お待たせ」

リリカはアカリと違い、プティタウンの中を移動するときにもしっかりとオシャレをしてくる。沙希さんはアカリだけでなく、リリカのためにも可愛らしい小人向けの服を作ってくれているから、それを楽しそうに着ているのだ。


今も、以前沙希さんからもらったかわいらしい花柄のワンピースを着ていた。元は小さな花がたくさんついている布だったはずだけど、リリカが着たら大きな花柄の模様に変わる。それはそれで個性的で可愛らしい模様になっていた。髪にはリリカ自作の手作りバレッタもつけていて、パーマのかかった髪の毛をポニーテールにしていて、とても可愛らしかった。


沙希さんがリリカの写真を撮りたがっている気持ちが凄くよくわかる。同じくらいのサイズ感でも、ドール人形みたいに可愛らしいリリカが、沙希さんからしたら手乗りサイズに見えているのだから、きっととんでもなく可愛らしいのだろう。そう思うと、アカリは人間が少し羨ましくなった。


リリカが外に置いている車椅子まで片足で跳ねながら移動するので、その度に髪の毛がふわふわと揺れていた。この町には車椅子も置いてあり、リリカと一緒に外出するときにはとても重宝していた。


「肩貸すよ?」

「平気よ。もう慣れたもの」

リリカはとても強い子だな、と片足で元気に跳ねていく後ろ姿を見ながら思う。


リリカを乗せた車椅子をゆっくりとアカリが押して進んでいく。初めの方はリリカは暗い声で、自分で動かすからいいと言っていて、強がっていたのだけど、今は自然と押してもらうのを待ってくれている。アカリもリリカの車椅子を押しながら散歩をするのが好きだった。


のんびり車椅子を押しながら歩いていると、リリカがポツリと呟いた。

「アミさんそろそろいなくなっちゃうんじゃないかなって、わたし思うの……」

「いきなりどうしたの?」

「いつもアミさんと一緒にいる、ちょっとだけ可愛くてお洒落な愛菜さんっていう人間と一緒に住むようになるんじゃないかなって」

リリカが人間に対してプラスのイメージで評することは極めて珍しいから、きっとリリカなりに愛菜さんに対してとてもいい印象を持っているのだと思う。


人の恋愛関係には鈍いアカリでも、なんとなくあの2人が愛し合っていることは見当がついたのだから、恋愛ストーリーの大好きなリリカが気付かないわけがない。


「リリカはあの2人が一緒に住むのは反対なの?」

と聞いている途中で「うん」と大きく頷く反応を見せた。人間嫌いのリリカが賛成する訳はないか、と思ってアカリは苦笑いをした。


「そっか。まあでもまだアミさんが愛菜さんと一緒に住むか決まったわけじゃないからそんなに心配しなくていいんじゃない?」

アミさんがいなくなったら寂しいから、反対する気持ちもわからないでもない。

「そんな悠長なこと言ってられないわ! あの2人は絶対に結ばれてしまうから、なんとか妨害しないと……!」

「え、ちょっと妨害ってどういうこと?」

微笑ましい気持ちで聞いていた話が思わぬ方向に向かって行って、アカリは慌てた。


「どういうことも何も、アミさんだって人間のせいで怖い思いしたことがあるんだから絶対にやめた方が良いってことよ!」

「リリカ、そういうの良くないよ?」

ヒートアップしていくリリカを見て、一度車椅子を止めて、リリカの前に回り込む。しゃがんでから、アカリはゆっくりと諭した。


「リリカが人間が怖いのは、わたしだってしょうがないと思うし、もう二度とあんな恐ろしい思いはしたくないから、わたしとリリカはずっとここに住もうよ。でも、アミさんがせっかく克服して素敵な人に巡り合えたんだったら、その気持ちは尊重してあげよう。愛菜さんだったらわたしは大丈夫だと思うよ」

そう言ってからリリカの手を握ると、リリカは俯いてしょんぼりする。


「もしアミさんが意地悪されたら、一緒に助けに行くこと」

リリカが小指を出して、無理やり明るい声を出した。アカリも頷いてから、ギュッと小指を絡ませて、指切りのポーズを作った。

「もちろん、アミさんに何かあったらわたしも協力するよ」

もっとも、愛菜さんが何かするような人には全然見えないから、こんな約束は意味もない気はするけれど。


「アカリはどこにも行かないでね……」

「ずっとリリカと一緒にいるから大丈夫だよ」

アカリは座ったままのリリカをソッと抱きしめた。ギュッとアカリの服を掴むリリカの頭をソッと撫でる。


リリカは普段気が強いし、大人びているから忘れがちだけど、まだ14歳なのだ。それなのに、あんなにも大変な目に遭っているのだから、心細さもあるに違いない。しばらく抱きしめて、リリカの気持ちが落ち着いたら、またゆっくりと車椅子を押す。


町の中は、一応家の外にはなるけれど、町内の地面はほとんど机の上と同じようなものだから、車椅子を押しやすくて助かる。自動車が走ることはないし、人口密度も低いから快適に移動ができるのだ。

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