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 屋敷の書庫で地図を広げ私は悩む、紙には攻略対象の名前と今後起こりうるイベントを書き出してある。

「なんで肝心な事が分かんないの?前世の私てポンコツ?いいえこの乙女ゲームがおかしい」

紙に書かれた攻略対象とヒロインとのイベント、カミーユルートでの大きな事件はヒロインとの出会いイベントとカミーユが暗殺されそうになるヒロインがカミーユルートを確定するイベント、そして無情に私が断罪される王室主催の舞踏会イベント。

出会いイベントはもう既に起きている、だが魔獣がどこから侵入したかはいまだに分からない、なんとなく分かっているが確定ではない、予想の範囲を超えていない。

「お嬢様そんな根詰めていますと熱を出しますよ、ここはお茶と美味しいお菓子を食べて頭を休ませましょう」

アンナはそう言うと何種類かの茶葉をすくいティーポットにいれる。

アンナが入れてくれる紅茶はいつも彼女がその日の私に合わせてブレンドしてくれる特別なもので、私はその紅茶が大好きだ。

彼女には父達に前世の記憶を話した次の日に全ての事を話した、話し終えた後彼女は驚いた表情をしたけど「お嬢様がそうおっしゃるなら私はついて行きますよ、私はお嬢様を守るためにお側にいるのですから」と素直に受け入れてくれた。

しかもそれだけではなく彼女はアライス家の私兵の一人で私を守るためにお父様が用意してくれた護衛でもあった。

「アンナは我が家の裏の顔の事も知っていたのねーモーリスお兄様だけでなくウィリーお兄様も知っていらしたし、お母様も知っていらした、私だけ仲間外れだったのね」

頬を膨らませ拗ねたように話すと彼女は困ったように眉を下げた。

「お嬢様には皆様幸せになって欲しいと思っての配慮だった事ご理解いただきたいです」

彼女を困らせたくて言ったことではない、ただ自分だけが何も知らずに生きていたのが嫌だっただけで・・・

「わかっているは、アンナを困らせたくて言ったんじゃないのよ」

彼女は困り顔のまま紅茶を私の前に差し出し、彼女の焼いた無花果のタルトを切り分けてくれる。

「知らないで幸せな結婚をして幸せな家族を持っていただきたいと思っていましたが、前世の記憶がそれをさせてくれなかった事が残念です、それに今お嬢様が首を突っ込もうとしている事私的には旦那様方に任せていただきたいのですが、お嬢様はきっとそれでは納得してくださらないのでしょうね」

深いため息とともに呟かれた言葉に私は苦笑いをするしかなかった。

 私が首を突っ込もうとしていることは確かにどれも危険がともなうことばかり、でもこれはカミーユ殿下の妃になりたいと思うなら私自身にも深く関係してくることだ、皆に任せきりで自分だけ何もしないなどできるはずがない。

「分かっているは、でも私守られるだけの女でいたくないの、殿下には嫌われているみたいだけど、私は殿下が好き、できるなら出会った頃のように戻りたいと思っているの」

私の言葉にタルトを私の前に置いたアンナはまた困ったような表情を浮かべる。

「無理だけは絶対にしないでください、私には魔力があるわけではないです、戦闘力はそれなりにありますが、相手が魔力を使うものだった場合対処しきれない場合もあります私の命に代えてもお守りはするつもりですが」

「アンナ分かっているは無理しない、だからアンナも自分の命を粗末にはしないで、私はあなたの事も大好きなんですから」

彼女は私の言葉に困り顔のまま微笑み、頷いてくれる。

 私一人で考えていた時よりも今は多くの情報が貰えている、しょせん侯爵令嬢でしかない私には動かせる駒は少ない、王宮内の事やテレーズの事を調べたくても調べられないでいた。

けれど今は父や兄達のおかげで色々な情報が手に入っている。

ウィリーお兄様は私と同じで本当なら我が家の裏の顔を知らされるはずではない人だが、長男であるモーリスお兄様は人付き合いが苦手で情報収集が苦手、なのでそれを補う為にウィリーお兄様は将来父が持つ領地のどこかを譲り受け我が家のもう一つのタウンハウスでモーリスお兄様の臣下として働くことが決まっている。

確かに謎の多い領地に引きこもりがちなモーリスお兄様には王都の貴族達から情報を聞き出すのは難しいだろう、貴族達も寡黙なモーリスお兄様に苦手意識を持っている者は多い気がする。

「私の考えでは王宮内のどこかに転移魔法陣があると思うのだけど、転移魔法陣なんてそうそう作れるものじゃないしあれば魔力がある物ならわかるはず、何処にあるのかしら?」

「確かにお嬢様の推測されているように転移魔法陣が王宮内にあるとすれば、大きな魔獣を城内に運び込むことは容易ですね、ですが王宮は広大ですが管理も厳重にされていますそう簡単に魔法陣を設置することは難しいように思うのですが」

「そうよねーしかも転移魔法陣は簡単には作れない、皆の目を欺くために色々な場所に移動するのも難しいし」

魔獣の侵入経路まずはそこからと思うのに、そこがどうしても掴めない、それに魔獣の事で気になる事もある、魔獣の事は魔獣に聞くのが早いのかしら?

「アンナ私近々魔獣が住む森に行きたいと思うのだけどどう思う?」

「どう思うと聞かれましても、そんな危険なところにお嬢様を行かせるわけにはいきません」

私の提案はすぐに却下されてしまった、予想していた返事ではあるが確認したいことが山ほどあるのでここは引き下がれない。

「危ない事は分かっているの、でも聞きたいことがあるのよ魔獣に」

私の返事にアンナは理解できないと言う顔をする。

「お嬢様は魔獣と会話ができるとお思いなのですか?」

お前の頭は大丈夫か?と聞きたそうな驚き顔のアンナに私は決して頭がおかしくなったわけではないと言いたいが、普通なら彼女の反応は正しい。

「おかしなことを言っているのは重々承知よ、でも私は彼等と話ができると思っているの会話が成り立つかは分からないけど、私達の言葉は理解できていると思うのよね」

私の確信に満ちた話に彼女は困惑の表情を濃くしている、だけど私は確認しなければならない、魔獣が住む森で起きているであろう事を。


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