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 窓の外に視線をやればそこに月が浮かんでいるのが見える、半分かけた月、下弦の月は赤く輝き彼の瞳を彷彿とさせる。

「アンジェ・・・お前がモーリスに話した話だが、誰から聞いた?」

私の父親であるレナルド侯爵は仕事から帰ると夕食もそこそこに兄達と自室に籠っていたが、しばらくして私を部屋へと呼び出した。

今私は父親と兄二人に囲まれ今日の昼間の事を聞かれている。

「聞いたのではなく・・・昼間もモーリスお兄様に言おうと思っていたのですが驚かないで聞いてください、それと決して私の頭がおかしくなったのではないとご理解いただきたいです・・・」

問いかけられた事の答えを口にするには私の前世の話をするしかない、だが急に前世の記憶がありますと言ったところで憐れな子と思われるのが落ちである、だが言わないわけにはいかない。

「あの事件の数日前に・・・夢を見たのです・・・」

「夢?」

私の話に父は当たり前のように疑問符を頭に浮かべて問い返してくる、それはそうだ急に夢を見たでは意味不明である、だがそれが事実なので言うしかない。

「夢です、その夢は凄くリアルな夢で目覚めた私もすぐには理解できなかったのですが・・・」

どう伝えればいいか分からず言葉が切れてしまう、父はそんな私を急かすようなことなく私の言葉を待ってくれている。兄達も静かに私の話を聞いてくれている。

ゆっくりと彼等に伝わるように私は夢の話を前世の話をする、時々彼等は驚いた表情をしたが私の話を止めることは無く全部聞いてくれた。

「なるほど前世ねー俄かには信じがたいがアンジェの知りえないことも知っていると考えると真実なのだろう、だが乙女ゲームとは何だろうか?」

そこが気になるの?と思ったが口には出さない。

「先ほども説明しましたがこの国には存在しないものなので例えようが無いのですが、いろいろな選択肢を選んで進める恋愛小説的なもの?と言えばいのでしょうか?」

父の疑問を少しでも理解できそうな例えを言うが、これで合っているのか疑問が残るがこれ以上説明のしようがない。

「なるほどな、ウィリーお前なら理解できるか」

「急に無茶な話を振らないでください、確かに俺は兄さんのように真面目一辺倒じゃないですけど分からないものは分からないですよ」

ウィリーお兄様はモーリスお兄様と見た目はそっくりだが中身は全然違う、真面目で謎が多く人付き合いの苦手なモーリスお兄様とは正反対で社交の場を好み人付き合いも好きで多くの友人がいる。

「真面目で悪かったな・・・」

ウィリーお兄様の話に不機嫌を露骨に出してモーリスお兄様が文句を言うが、今は兄弟喧嘩をしている時ではない。

「喧嘩は後でしろ、話は分かったのだかどう理解すればいいのか・・・」

「父上それは分かってないと言う事ではないですか?」

「モーリス・・・お前は・・・」

「予知夢的なものと考えればいいのではないですか?前世の記憶と考えると理解するのが少々難しいですが、予知夢と考えれば何とか理解できるような気がしませんか?予知夢を見るものはこの国では少数ですが存在しますし」

「なるほど、確かにそう考えると納得できるな、突飛もない予知夢ではあるがこの先起こりえる事が分かると言うのは良い事だ」

「でも魔獣事件が起こる事は分かっていたけど、魔獣がどこから侵入したかは分かんないよね、それじゃ今後の対策を考案しようがないんじゃない?」

父と兄達が私をよそに話し込んでいるが、これは話に加わっていいのだろうか?

おずおずと手を上げ発言したい旨を示すと、それに気づいたモーリスお兄様が「どうした?」と尋ねてくれる。

「まだ仮説なのですが今後起こりえる事と魔獣が王宮に侵入した経路と言いますか、魔獣が持ち込まれた経路なら心当たりがあります」

私の言葉に驚いたのだろう三人が目を見開いてこちらを見つめて固まっている、その視線があまりにも怖くて体が小さく縮こまり、視線を窓の外へと逸らしてしまった。

外には下弦の月が赤く染まりながら輝いている、やっぱり彼の瞳の色に似ていると思って彼に会いたいと願ってしまう。


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