表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/25

5

あの事件から早一ヶ月が過ぎました、殿下からの連絡は全くありません、自分からもお忙しいだろうと思って連絡していないのですけどね。

そんな私は今弓の練習に勤しんでおります、この一ヶ月色々と考えたのですが前世の記憶もほぼほぼ思い出され色々なことに対処できそうなのです、おかげで今は頭の中もスッキリして清々しいほどです。

何故弓の練習をしているのかって?それは自己防衛です!あの事件のようなことが今後起きる可能性があるのです、それに前世の記憶であることに気づいたのです、なので情報は有用に活用し先手必須自己防衛です。

 弓をしっかりと引いて矢に魔力を宿らせ一気に放つ、魔力の宿った矢は重力を無視してまっすぐと的に向かって突き刺さる。

普通の矢ならば重力や風向きに影響され弧をえがくように進みますが、魔力が宿っているせいか重力も風向きも無視して真っすぐに矢が進むのでこれがなかなか前世で弓道経験者の私には難しい。

「アンジェ珍しいね君が弓をやるなんて」

再び弓を引こうと構えた私に声がかかる。

「モーリスお兄様!」

声の聞こえ方に振り向くと見目麗しい兄が腕くみしながら訓練場の出入り口に背をあずけた姿勢で立っていた。

「やーアンジェ久しぶりだね、父上から聞いたけど最近弓に剣術に毎日汗を流しているんだって?どうしたの?前まではそんな事に興味がなかったじゃないか」

彼の言っていることは全くその通りだ、今まで私は武術に関心が無かった、攻撃魔法を得意としている私だが女は男に守られていればいいと言う貴族的考えの元、武術には興味が無かった。

「あの事件の後考えたのですけど、女だからと言って守られているのはいかがなものかと、それに魔獣に向かったのは殿下と近衛兵だけでしたのよ、あの場には貴族のご子息が沢山いらしたのに皆我先にと逃げていったのですよ、自己防衛は大事です」

「あぁーあの事件ね、お前が魔獣を仕留めたあの事件の話は遠く離れた領地にまで広がっているよ」

どのように話が広がっているのか気になるが、ここは聞かないでおこう、ろくなうわさ話になっていない気がする。

「勇ましい姫君が近衛兵の弓矢を奪って野獣を倒したと、まー面白可笑しく噂されているよ」

聞きたくなかったが彼はそんな私の意を汲むこと無く楽しそうに話し続ける。

「男勝りの姫君、魔獣にも勝てる怪力の姫君等々凄い言われようだよ」

やめて・・・殿下の耳にそんな話が伝わったら今まで以上に嫌われてしまう、否、現場に殿下はいたのだから既にそう思われている?だから手紙の一つも来ないの?

「やめてくださいモーリスお兄様私の淑女としての色々なものが失われてしまいそうです」

私の言葉に彼はクスクスと笑うと口を開ける。

「そんな格好している時点で淑女としての色々は失われていると思うが?」

彼の言葉にそれはそうだと思う、今の私の恰好は前世の乗馬服のような様な格好をしている、この国では女性がしかも貴族令嬢がトラウザーズを履いたりしない、しかもぴっちりと体のラインが出るトラウザーズなど男性ですら着用しない。

「ドレスでは動きにくいのです・・・どこかに出かけたりするときはちゃんとドレスを着ています・・・」

「その服は何処で手に入れたの?そんな服見たことないのだけど」

呆れたように話す彼に少し抗議の視線を向けるが、そんな事気にしていないのか私の答えを待っている。

「自分でデザインして作っていただきました・・・」

ハーッと彼が大きなため息をついてやれやれと顔を左右に振る。

そりゃ私だって貴族令嬢としてこれはダメかなと思ったけど、動きやすさには代えられない、本当ならジャージが良かったのだがこの国にそんなものは無いので妥協してこれなのだから許してほしい。

「殿下が見たら泣くよそれ、可愛い令嬢だと思っていた婚約者が男のような格好で武術に勤しんでいるなんて」

それを言われると困る、殿下にはこれ以上嫌われたくない、出来れば婚約破棄されずに結婚したい、今既に嫌われているのでどうなるかは分からないけど。

「わかっています・・・でも自己防衛は大事ですわこの格好は鍛錬する時だけなのですから許してくださいませ」

頬を膨らませて兄を見つめると、またため息を吐き出されてしまった。

「父上も母上も最近のお前の行動に心配しているよ、でもお前の言う自己防衛は確かに大事だね、あの事件のようなことが今後も起きる可能性はある、何せ魔獣の侵入ルートはまだ解明されていないからね」

魔獣の侵入事件はあれから一ヶ月過ぎたにもかかわらず解決の糸口すら見つかっていない、その為か陛下そのものの存在すらも訝しがる貴族が出てきている。

王宮での揉め事は全て国王である陛下の責任にされてしまう、王宮には多くの貴族が勤めているのに責任を全が陛下にあるなんて思う貴族達を私は無能な奴らだと思うが、国の代表者とはどの世界でも下らない事で責任を取らされるものなのだ。

「モーリスお兄様その事なのですが私どうしても聞いてもらいたい話があります、私が話す事は凄くおかしな話です、けど聞いてほしいのです」

彼は私の言葉に不思議そうな顔をしたのちまたため息を吐き出した。

「凄くおかしな話ね・・・一応聞くけど、あまりにもおかしな話だったらお前を医者にみせるからね」

最近の私の行動それら全て今までの私ならやらない事なので、彼は我が妹の頭がおかしくなったとでも思っているのだろう、失礼極まりない。

「では最初にモーリスお兄様は領地で何をやっているのですか?」

私の質問に疑問を持っているのだろう不思議そうな表情を浮かべたまま答えを返してくれる。

「領地の管理運営をしているよ、お父様は王宮勤務で王都を離れられないのだから長子である僕が領地を管理するのは当たり前だろ」

「そうですね、では質問を変えます、我が家がかなりの数の私兵を有しているのは何故ですか?」

私の質問に彼は驚いたのか目を見開いたがそれは一瞬ですぐにいつものすました顔に戻る。

「私兵?我が家は中立の立場を昔から貫いている家系だよ、争い事は好まない私兵を持つなど今まで一度もないよ」

彼のいう事は正しい、争い事を好まない一族で常に中立の立場に立つそれは我が家の表の顔だ。

「えぇ、そうです、でもそれは表の顔ですよね?我が家は中立の立場で起きた事を冷静に判断し王家ではなく国の番犬として動く「ちょっと待て!何を言っているのか分かっているのかアンジェ!」

彼は驚きのあまりか私の話を最後まで聞き終わる前に話を打ち切るかのようにしゃべった。

「わかっております、本当ならこれは私が一生知らされるはずの無い事だと言う事も」

国の裏の番人、何処にも属さず王家であろうと国に害をなすと判断すればそれを処罰する権限を持った家、それが我が家の本当の顔で代々この家の長男にのみ受け継がれるもの。

次男のウィリーお兄様や女の私には絶対継がれることの無い事、この家を将来出ていく可能性の高い者には決して受け継がれない、決して他に話が伝わらぬようにとそうされているのだろう、人の口に戸は立てられないから。

ウィリーお兄様は知っている気がするけど、今それは関係ない。

「お前・・・どこまで知っている・・・」

「どこまで?どこまででしょう?そこまで詳しくは無いですけどそこそこわかっております」

私の言葉に彼は深いため息を吐き出す。

「この話はここまでだ、父上が帰ってきたら詳しく聞かせてもらうからアンジェこの事は他には絶対に話すな」

彼は厳しい顔でそれだけを注意すると室内に入り去っていった。

残された私は兄の威厳ある背中を見つめて怖かったと少々ビビっていた。

彼が今まであんな厳しい顔を私に向けた事は無い、私の行動に呆れた顔をする事はあっても決して怒ったりなど今まで無かったのだ。

 我が家の秘密に気付いた時には驚いたけど、兄が隠れ攻略対象な理由を思い出したからこそ気づけたことだ、前世の記憶それに振り回されるのではなくそれを利用してうまく立ち回らないとね。

脱悪役令嬢!ですが私あれからヒロインであるテレーズと接点全くないのですけどね、なんせこの一ヶ月引きこもり生活でしたから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ