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お茶会事件から2週間、暇を持て余している私は前世の記憶を紙に書きだし対策を練っている。
何故これほどに暇かと言うと、この国の頂点に君臨する王が住んでいる王宮に魔物が出現した、しかも侵入ルートは今も判明していない、今王宮は厳重な警備が敷かれ必要最低限の者しか入城を許されていない。
その為王太子妃教育も中断、教育の為に時間を空けていた私は時間を持て余す結果になったのだ。
ゲームでは軽く出会いイベントとして扱われた魔獣の王宮への侵入だったが、現実はそんなに軽いものではないらしく、婚約者であるカミーユ殿下も連日大忙しいらしい?
そらそうよね、ゲームの中では出会いイベント後何も無かったようにシナリオは進んでいたけれど、現実に考えればそんな簡単な問題ではない。
前世で考えるなら皇居の中庭に熊が現れたと言う事だ、これは間違いなく起こりえない事だ、東京のど真ん中を熊が堂々と歩いて皇居に侵入するなんてあり得るはずがない、東京都内に熊が出没するだけでも大騒ぎだろうに東京の中心部にある皇居に熊なんてどう考えてもおかしすぎる。
ゲームをプレイしている記憶を見た時も思ったけどやっぱご都合主義過ぎるよね。
「どこから侵入してきたのだろあの魔獣?」
一人自室で机に向かって悶々と考えるが、私にはそれを解き明かせるだけの知恵も情報もないので、魔獣侵入の事は殿下に任せて、私は自分が対処するべき問題に思考を向ける。
紙には数人の名前と今後起こるイベントの事を書いている。
カミーユ=ベクラール、レミ=ラグランジュ、エロウ=ドヒュッツー、カジミール = カンパニョーラ、アンセリム=ベクラール、モーリス=アライス
「攻略対象皆結構な爵位よね」
レミ=ラグランジュ公爵、彼は宰相様の息子で殿下の従兄弟にあたる方、お茶会イベントの日は王宮の執務室で執務をしていたので事件の事は事が終わってから知ったよう。
エロウ=ドヒュッツー侯爵、彼は騎士団長の息子で殿下の護衛としていつも側にいる、お茶会の日は陛下が視察に出ると言う事で殿下の側でなく陛下の護衛を言い渡されあの場所にいなかった。
カジミール = カンパニョーラ侯爵、彼は元帥様の息子で基本騎士宿舎にいるので事件の日も王宮にはいなかった。
アンセリム=ベクラール殿下、彼はカミーユ殿下の腹違いの弟で私と同い年の17歳、彼は身分が低い側妃の息子なので影が薄いが事件の日王宮にはいたみたいだ。
モーリス=アライス侯爵、私の兄で見た目は良いが謎が多い人、私とも仲良くしているが、彼が何をしているのか私は良く知らない。
王都にあるこのタウンハウスにはたまに来るが基本領地の屋敷に住んでいて家族なのだが最近では滅多に合わない、事件のあった日も領地の屋敷にいた。
私の兄と第二王子のアンセリム殿下はゲーム内では隠しキャラの攻略対象でゲーム開始時には出てこないキャラだ、だからなのかヒロインはこの二人には近づいていないよう。
王宮勤めの父にそれとなく探りを入れてヒロインが今何をしているのか探っているのだが、彼女はどうやら頭が少々・・・否、だいぶんポンコツなようで問題ばかり起こしているようだ。
執務に忙しいカミーユ殿下に付きまとい彼の仕事の補佐をしているレミ様にも付きまとい、殿下の護衛をしているエロウ様にも付きまとい大層迷惑がられているよう。
それだけではなく騎士宿舎で生活しているカジミール様にも付きまとい騎士宿舎を出禁になったそう。
何かがおかしい・・・ゲームでは愛されキャラでカミーユ殿下なんて出会いイベント後会話するだけでポンポン好感度が上がったのに、彼女は明らかにどんどん好感度を下げている、しかも攻略者全員の。
この乙女ゲームは発売前から皆が期待したゲームだった、ゲームの内容というよりはキャラたちを描いた絵師が超絶神絵師として知られた絵師で、彼女の描いたキャラはどれも美麗で個性があってゲームの発売が決まった時乙女ゲーム信者達は発表後すぐ予約したとネットニュースに書いてあった。
もちろん私も即予約した。
まー発売された後ゲーム評価は散々だった、何故ならBADENDにたどり着けないのだ、スツールを集めるのはどんなゲームでも楽しみの一つだ、なのにそれが集められない・・・
各攻略キャラのBADENDに進むには一度も好感度を上げてはいけないと攻略サイトに書かれた時は驚いた。
好感度を一度も上げない事が難しいゲームだったのだ、カミーユ殿下攻略なんて好感度が何をしても上がる一言言葉を交わしただけで上がるBADENDを目指すにはなんとカミーユ殿下と極力接しないと言うありえないものだった。
そのおかげかゲームにはコアなファンが多くついたと記憶している。
「この世界はゲームの世界・・・だけど私達はこの世界で生きている、日々色々と考え学び成長している・・・世界観はゲームの世界だけどゲームではない、リセットボタンも存在していない」
よくよく考えるとカミーユ殿下彼の性格がゲームの中の彼と大きく違う、ゲームの中の彼は理想の王子様そのもので、ヒロインを常に優しくエスコートしてくれるキャラだった。
けれど私が知っている彼は不器用だし無口だ、紳士的なので最低限のエスコートはしてくれるがゲームの中のような歯が浮くようなセリフなど全く言わない。
「ゲームのようにこの世界は動いていないのではないかしら?」
現に私の性格はゲームの中のような嫌味な我儘令嬢ではないと思う、自分自身はそう思っているだけで他から見たらゲーム内のような性格なのかもしれないが。
私はそこまで考えて悲しくなって大きなため息を吐き出し机に突っ伏した、その時ノックの音が聞こえたので、私はその音に返事を返し入室を許可した。
「お嬢様お茶にいたしませんか?お嬢様の好きな苺のジャムを乗せたクッキーを焼いてきました」
お茶の用意とクッキーが並べられた皿が置かれたワゴンを押してアンナが部屋に入ってきた、部屋の中に甘いクッキーの臭いが充満して小腹が好いている事に気づいた私は考えることを放棄することにし、紙を裏返しアンナに微笑みかける。
「さすがアンナね!ちょうどお茶が飲みたかったのよ!ありがとう」
アンナはそんな私に微笑み返しお茶を入れていく。