二章幕間1話 時には平和
どうもビタミンです。
今回は特に大した展開もない平凡な日の話です。
時にはこんなひもあって良いですよねって感じの一日を書いただけですので、めんどくさい方は見なくても話に支障はきたしません。
それでは平和回もお楽しみ頂けると嬉しいです。
「最近、これしか食ってねぇなぁ」
フツバが袋からコルトを取り出しては口に詰めてを繰り返し、貪っている。
そんなフツバの後ろをライラとアトラがついて来ている。
セメラルトを出てからもう彼此三日経つ。
フツバの傷もほとんど回復して、本格的に次の場所に進み出した所だ。
この三日間で今までフツバ達と悪魔との間で起きた出来事は全てアトラに説明してある。
そして、
「色々話した後だがもう一つ話ておく事があるんだ」
フツバがアトラにそう話しかける。
アトラとは長々と悪魔について話した所なのでアトラは少し疲れているようだ。
しかしフツバはそれを気には止めず話を投げかける。
「そこまで重要な事なら仕方ありませんね。なんです?私はもうそうそう驚きませんよ」
アトラが毅然とした態度で応じる。
フツバがライラに剣を叩いて話す内容を暗示する。
ライラはそれに気づき、話す内容を理解する。
「実はな、俺はな、五英傑の『ガーリン』の弟子なんだよ」
「……」
「実は『ガーリン』の弟子なんだよ」
「……」
「実は『ガーリン』の弟子らしいのよ。フツバ」
「……」
表情筋一つ動かさず脳死状態のアトラに同じことを三回話す。
少し待つが何も返ってこない。
アトラの世界だけ時が止められたのかというほどに動かない。
「実は『ガーリン』の弟子なんですってよ、私」
「……」
「よし、姫さん。こうなったら反応させる言い方した方が勝ちな」
「よし、乗ったわ」
「……」
くだらない会話をしているのに一切動かない様子は不気味が過ぎる。
始めるつもりのなかった遊びを始めるハメになる。
「ねぇ、ねぇ、アトラ。あのフツバっちって実は『ガーリン』の弟子らしいよ。ヤバみ澤ヤバ子って感じじゃね」
「……」
急なギャル語でライラが話す。
しかしアトラは微動だにしない。
一応ギャル語というのはこちらでは何処かの方言になっているらしい。
フツバの番。
「あの『ガーリン』の弟子のオトメ・フツバとかいう奴ガーリンの弟子だからあっち向いてホイ世界一強いらしいよ。弟子だから」
「……」
「アイツ『ガーリン』の弟子だからスキップしながら大虐殺計画考えられるらしいよ」
「……」
「『ガーリン』の弟子だとトイレの紙が無くなった時に手で拭いても、気合いでその後にご飯食べれるらしいよ、気合いで」
「……プッ」
僅かに吹き出したアトラを二人が一斉に見つめる。
アトラはいつからか顔を真っ赤にして笑いを堪えていた。
「アハハハハハハーーー。ちょっと二人ともふざけないで下さいよ。ちょっと黙っただけであんなの始められたら何でも面白く聞こえちゃいますよ」
フツバとライラがその様子を見てお互いを見合って何故かおかしくなる。
何故か人というのは真面目な空気な時にふざけられるとなんでも面白く聴こえるらしい。
くだらない笑いにも一段落がついた所でしっかりとアトラが感想を述べる。
「本当に言ってるんですよね?それって」
「マジだ。証明できるような物は特に無いんだけど、そこら辺は俺の信用問題なんだけどな」
フツバには苦笑する事しか出来ない。
「信じますよ。正直、聞きたい事は山ほどあります。時系列がおかしいとか諸々ですがそれは今後聞いていくことにします。私はフツバさんが誰を尊敬していて誰の弟子かなんて関係なくフツバさんっていう存在だけで満足ですから」
満面の笑みでそうフツバに告げるアトラ。
「へぇ〜〜、あっそう」
フツバが動揺しているのか冷たいのか分からない態度をとる。
こんな事普通の男子が言われたら確実に落ちていただろう。
それでもフツバが耐えてる理由。
それは
「一つ、言っとくけどな、アトラ。俺、師匠に修行として禁欲一年ぐらいさせられてて悟り若干開いてるから落とされづらいんだよ」
フツバが積極的にアプローチをしてくるアトラに申し訳なさそうにそう伝える。
ハニートラップがあることを考えると必要な修行らしい。
そしてアトラはこの瞬間、ガーリンを死ぬほど恨んだらしい。
「チッ、ガーリン◯ね」
「おい、言い過ぎだ」
こんな平和な時間が流れていた。
自分達がさらに危険な状態になっていることに気づくのはもう少し後の話。
読んで頂きありがとうございました。
今回は本当に進展がなかったと思います。
ごく僅かにフツバとガーリンの修行の話が出ただけですね。
次話はとうとうフツバ達があの吸血鬼について知ることになります。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければアドバイス、感想、質問、お願いします