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二章後編41話 償い

どうもビタミンです。

次回からたぶん今まで通りぐらいの投稿ペースに戻れると思います。

今回はまぁ最終回一歩手前という事で終着点を見せる回ですね。

それでは今回も楽しんで頂けると嬉しいです。

 激しい粉砕音と共に勢いよく部屋の扉が壊れる。

 

「今度は何が起きたのよ一体!?」


 ライラが部屋に舞い散る木屑を吸わないように手で口元を押さえる。

 さっきまでのしんとした空気が破壊される。

 フツバとタロンが戦っていた廊下から壊された扉。

 ライラにはフツバとタロンの戦いに決着がついたと理解出来た。

 他二人は煙たそうな顔で壊れた方を見るがまだ感情が体に戻ってきていない。

 壊された扉の方から木を踏みキシキシと鳴らしながら立ち上がる一人の人影があった。


「あれ?何か空気超悪くなっちゃってる?」


 後頭部をポリポリと片手で掻きながらフツバが出てくる。


「フツバーーー‼︎」


「フツバさん。よかった」


 いつもなら飛び跳ねて喜んでくれそうなアトラがそっけない反応にフツバが不穏な空気を感じ取る。

 そこにライラがフツバの所持物に気づく。


「アンタその手に持ってるのって」


「ん?あ、これの事?」


 フツバが笑顔で片方の手に持つ機械で作られた片腕が切り取られている。


「何と……アイツがやられたのか……。」


 トルタが見覚えのある手が切られたのを見て驚きを僅かに見せる。


「よぉ、話は済んだか?アトラズファーザー」


 フツバが視線をトルタに向けて手をブラリと提げ見せながら話しかける。


「アイツに人間が勝てるなど有り得ん。アイツの体には何個物仕掛けがあった筈。私が作り上げたあの機械人間が負けたというのか、この少年に」


「確かにありゃあ人が勝てるように作られちゃいねぇな。……人っつても一般人レベルまででしかねぇがな。正直に言わせてもらうが俺だって油断が無かったら絶対勝ててたからな!絶対だぞ!」


 フツバが持っている手をブンブン振り回して何故か怒っている。


「俺だって勝てたってアンタ勝ったからここにいるんでしょ。何言ってんの」


 フツバがその言葉に仏頂面で反論する。


「俺にだって色々あんだよ。けっ、今になってきてムカついてきたな。もう一本も切ってこようかな、腕」


 フツバが廊下の方に唾を飛ばす。

 フツバが放心状態のトルタの方を向き


「まぁ、アンタが数年掛けて作り上げた物は所詮その程度でしかねぇって事だ。色んなもん捨てて来たんだろ?ここまで来んのに。一つ言わせてもらうが人を踏み台にして登った高みなんかじゃな自分の心身削って積み上げたもんには勝てねぇよ!バーカ!」


 フツバがまるでさっきまでの会話を聞いていたかのように確実にトルタの心の曇った部分について話す。

 ライラがそこでフツバに近づきより詳しい状況を説明する。


「あのねフツバ、アンタは知らないかもしんないけどさっきまでここにね、」


「『アイツ』がいたんだろ」


「なっ!何で知ってんのよ⁉︎」


 フツバが真剣な顔でそう言葉を挟む。

 瞑目し、少し考え一度鼻から息を少し吹き出す。


「なんとなく変な殺気を感じて察知はしたがなシンプルにアイツに会う余裕が無かったんだ。すまなかった」


 フツバが悔しそうな表情で頭を下げる。

 

「別に危害はなかったから良かったんだけど。それより精神的には二人はキツイかもね」


「何があった?アイツがただの親子喧嘩に飛び入り参加するわけもないしな」


「それがアトラのお母さんとアトラが出て行くことになったのはアイツが仕組んだ事だったらしいの」


「アイツっ!何から何まで関わりやがって……」


 フツバが静かに怒りを積もらせ、手の甲には血管が浮かび上がり、殺気も溢れでているが一度落ち着きアトラの方へと歩き出す。

 

「アトラ、大丈夫か?」


 アトラがのっそりと首を上げ疲れ切った空笑顔で返事をする。


「はい。……大丈夫です」


 フツバはその様子をみて心苦しそうな表情をした後何か心に決めたのか顔つきが一気に変わり真っ直ぐな眼差しでアトラを見つめる。


「アトラ、今のお前に言うのはあまりに酷かもしれないけど聞いてくれ。俺たちもな実はなこの旅の目標はアイツなんだよ」


「えっ……?」


 アトラがボソッと聞き返す。


「俺らが言ってた触れちゃいけない奴ってのはアイツのことなんだ。アトラもう一回聞く。お前はこれからどうしたい?ここに留まり機械技師として安全にやっていくか、俺たちと命懸けでアイツを殺しにいくか。正直言ってもう時間はない。下が少し騒がしい。たぶん、騎士達が集まって来てる。アトラ判断が厳しい状態なのは分かるが決めてくれ」


 アトラがそれを聞きいつもの笑顔になり、返す。


「フツバさん、残念ながらその回答はずっと前から決まってます。私はあなた達について行きますよ。これで私にもこの旅の自分なりの意義を見つけることが出来ました。私はこれからも何があろうとあなた達について行きますよ。きっと」


 フツバが意表を突かれた様な驚いた表情になる。


「アトラは凄いよ。そうと決まったんならやることやってとっとと逃げるぞ!」


「はい!」


 アトラが無理矢理、底のついた体から元気を搾り出す。

 ライラはその元に戻ったアトラを見ると嬉しくもなるし心強くもなる。

 そして自分がまだ未熟だと思わされてしまう。


(あの子はあの歳であんなに決断力と強い意志がある。それに知識も技術もある。それに比べて、私は……。)


 ライラが自責をしているとフツバがその様子に気づく。


「姫さん、姫さんの力も必要だ。早く来てくれ」


 ライラが意識を体に戻し返事をしてフツバ達の元に走る。

 

「さぁ、お父さんに対する制裁は娘のアトラが決めろ」


「あぁ、焼くなり煮るなりなんとでもしてくれ……」


 完全に生気を失っているタロンにはもう制裁は何てどうだっていいのだろう。

 今この男に何をしたとしても大して苦痛にはならない。


「お父さんに当たる人、私はあなたの事を悪魔に操られていたからと言って決して許しはしません。今のあなたには何をしたって大した罰にはならないでしょう。なんなら死さえ褒美になりそうな様子だ。だからしっかり罪を償っておいてください」


 忿懣な態度でアトラが崩れ落ちたトルタにそう告げる。


「あぁ、分かった。償うさ。お前と、」


「私とお母さんの件じゃありません!その件に関してはお母さんの予想が的中していた事も含めて免除です。捨てられてもあなたの味方であり続けたお母さんに感謝して下さい。あなたが償う罪は地下に住む桃髪の人々を苦しめた事です」


「それは、すまなかったな」


 下唇を噛みちきり血が出てくる。

 無意識に自傷している。


「一つ質問です。どこに研究の資料はありますか?特に映像はどこに?」


 瞬きをただし続けているだけのトルタ。

 何も喋らないと言うか思い出せないといった面持ちだ。


「返事がない。ただよ屍の様だ。って感じだそうだ」


 フツバがどこかで聞いた定型文をトルタの様子をみて当てはめる。

 

「これは全員で捜索するしかないな。チャチャっと見つけるぞ!」


「はい!」


 桃色を染めた黒髪を振り乱し、碧眼で真っ直ぐにフツバの目を見つめるアトラの空っぽな元気が空っぽなこの建物に鳴り響いた。


読んで頂きありがとうございました。

アトラは本当に強い子です。不気味なぐらいに強い子です。桃色髪に碧眼の可愛い女の子。アトラにはアトラなりの悪魔を追う理由が出来てしまいました。

もう悪魔はこの世界の全てに関わってそうな感じさえありますね。

そんなこんなで次回は最終回。最終回の次は新たな試みをしてみたいと思います。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ感想、アドバイス、質問などお願いします。

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