二章後編40話 俺たちの為に
どうもビタミンです。
また投稿頻度が低くなっていますが気にしないでください。
二章が終わればもっとこの作品をガッツリ作り込みます。
もう伏線も仕込んではいますがもっと細かな伏線も入れれたらなと思います。
それでは今回もお楽しみください
「まったくタロンの奴は何処に行きおったんだ」
路地裏にて身を潜めるカルロがそうボヤく。
「行方は分かりませんがきっとフツバさんの助けなどに向かったんだと思います。今は私達だけで準備にかかりましょう」
地下通路にて地上の様子をみていたカルロ達は人気が消え失せた地上へと出た。
いつもは人が大勢行き交う大通りにも今は誰一人として姿が見当たらない。
どこか遠くで剣と剣がぶつかり合う音が僅かに聴こえてくる。
カルロ達は人がいない事を確信すると大通りに全員で一気に飛び出す。
真っ直ぐ迷う事なくカルロは目的地へと走る。
しかしやけに人数の割には足音が少ないことに気づき急停止。
振り返ると数人はついて来ているがまだ路地裏から出れてない者たちがいた。
「お前たちは先に向かっておいてくれ」
カルロはついてきた者たちに先に行くよう指示を出し問題が生じた路地裏へ戻る。
「何があった⁉︎」
出てこない者たちに声をかける。
「……」
カルロと目を合わせずただ黙って突っ立っている。
「何があったはよ言わんか⁉︎」
カルロは痺れを切らして怒鳴るとそこに残っていた一人が泣きだす。
それに連鎖するかのように他の者たちも涙を流し出す。
「なっ……‼︎」
思いもよらぬ光景にカルロは言葉が出ない。
その中の一人がやっと言葉を紡ぎだす。
「カルロさん私たちは……私たちは……怖いんです。やらなければいけない事は分かっていても体が竦むんです。足が言う事を聞いてくれません」
涙を拭いながら言う。
カルロはその時に気づく。
その路地裏に残った者たちは外に出たことがない者又は人生の殆どを地下で過ごした者達であることに。
未知の世界、聞いた事しか無い世界に踏み出す事が恐怖で出来ないのだ。
それもいい世界であると言われていれば容易く踏み出せたかもしれない。
しかし聞いた話は恐ろしい物ばかりで微塵も踏み出したいとは思えない。
誰が好きで地獄に行くというのだ。
「今は誰もいない。私たちを迫害する物は今は誰もいないんだ!」
「分かってます。頭で分かっていても体が……動かないんです」
自分の弱さを理解して涙が溢れる。
カルロは足がすくんでしまう者たちを怒ることができなかった。
しかし、カルロもそう甘い事を言ってられない。
心を鬼にしてカルロは勇気を奮い立たせる。
「お前たちはよく地上に憧れていたな。小さい頃からずっと地下に住み、地上を見た事がほとんどないお前たちはずっと地上に憧れていた」
「……」
カルロの言葉に何も返さない。
「私はな、お前たちが太陽の事を知らんかったのを今でも覚えてる。最初は冗談かと思ったがよく考えれば当たり前のこと。あの薄暗い地下で過ごしていてはこの眩しい太陽は拝めてないのも至極当然の事だ」
「そうです。私たちは弱いんです。地下じゃないと何も出来ない奴らなんです!」
自分の弱さを噛み締めながらそう言い返す。
「それでいいのか!?今のお前たちの人生は最高だったと胸を張って言えるか?ただ髪の色が違うだけという理由で太陽が見られず、人と喋れず、店に買い出しにも行けず、大通りの一歩目も踏み出せない。それを最高と言えるか?いや、言えないはずだ」
カルロは長いこと生きたこの人生を振り返る。
そして一つ息を吐き、目つきを鋭くし、眼光を全員に光らせる。
「だがしかし、今そんな人生を変える機会が目の前まで来ている。フツバという騎士団に対抗できるほどの強き剣士がこの地に参上し更にその人は桃髪を受け入れてくれている。こんな絶好の機会は今までに無かった。今私たちは分岐点にいる。今もこの世界のどこかで桃髪という理由だけで迫害を受けている人がいる。お前たちはいいのか!?このままの世界で!?」
その言葉を聞き悔しそうな表情で思いのままを一人がぶつけてくる。
「僕だって!そんなのは嫌に決まってる!でも、言うんです。心の中の悪魔が別にお前がしなくていいって……今まで誰もしてこなかったんだからしなくていいって言ってくるんだ!」
「バカか、お前は!!昔からみんな変わらない。私が昔「反抗してみよう」と持ち掛けた時も「無駄だ」とあしらわれた。みんな言う、「誰もしてないからしなくていい」と。誰もしていないのを理由にしていてはこの世の中は何も変わらないんだ!何か主張をする時、意見を言う時、自分が行動する時、理由を他人に任せるな!自分で理由など考えろ!他人任せにしている者には桃髪に産まれた事を憎む権利なども与えらないほど惨めであると知れ!」
この言葉はカルロにとって自分に向けた言葉であった。
フツバが来た時
「また変なのが来た……。何も変えれないと言うのに」
そう口にしていた。
長年、桃髪として暮らし全てを他人の責任にして、変える事さえ諦めていた自分を変えてくれた者たちがいた。
桃髪を許してくれる人達がいた、騎士がいた、そしてお姫様がいた。
その時カルロは気づいた。
この狂った常識が出来上がった世界でも「私たちは違う」と声をあげられる者たちの偉大さをそしてその言葉に救われる人の心を知った。
カルロは今でもそんな当然のことに
気づかせてくれた方達にただ感謝をしている。
「お前たち、踏み出せるか?」
先の言葉を聞いてまた涙を流した者たちも涙を拭い堪えて強く前を向く。
「行くぞ!俺たち!俺たちは俺たちの為に行くんだ!」
読んで頂きありがとうございました。
今回はカルロが主役の回でした。
カルロの過去は本当に鉄板的な迫害の話しか用意してないのでこの章もだらだら長くなってきていますのでスパッと行こうと思います。
カルロ達はタロンが協力していると思っていますが実際の所は……
という訳であと数話も頑張っていきます。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、質問お願いします。