二章後編33話 機械仕掛けの体
どうもビタミンです。
今回は久しぶりにフツバが出てきます。
相手はもちろんタロンです。
連戦続きのフツバは勝つことが出来るのか⁉︎
想像以上に長くなった二章後編もラストスパート頑張っていきます!
それでは今回も楽しんで頂けると嬉しいです。
「男二人っきりになっちゃったね。タロン君」
ぶりっ子特有のキモい部分だけを誇張した動きをブリブリと真似ながら唇を前に出しウィンクをするフツバ。
殺気を迸らせるタロンの前でも相変わらず余裕の様子だ。
「お前舐めてるのか?お前の強さは買い出しの結果からもよく分かっている。あの時で多少は負傷してくれると思ったんだかなまさかアレほどまでとはな」
タロンは体を覆っていた黒いローブを破っていく。
破った所からは白銀色の鉄が剥きでる。
肌色が無く、人を辞めてしまっている。
「機械人間とは初めてだな」
フツバも剣を片手で前に出して構える。
「存分に堪能してくれ。これが貴様ら生身の人間には踏み入れない領域だ!」
その声がフツバの耳に届くと同時にタロンが動きだす。
まずはシンプルな踏み込みからの鉄の右ストレート。
フツバは体を仰け反りながら剣で拳を受け流す。
鋼と鋼が擦れる甲高い音が室内で反響する。
フツバがそのまま蹴りを頭にキメる。
鈍い重低音が鳴り、蹴りの成果はタロンの首が傾いた程度だった。
蹴りは速度も速く当たる可能性も高く威力も高い。
だからフツバも多用する。
しかし蹴りが入ったのにもかかわらず一歩下がらない者など想定した事も無かったフツバは今、片足をあげた態勢で敵の攻撃を躱すことが出来ない。
タロンの膝蹴りがフツバの腹を目掛けて飛んでくる。
ハンマーで殴られた時のような痛みを感じる。
痛みは勢いへと変わりフツバの体を吹き飛ばす。
扉に大きく背中を打ちつける。
(コイツは厄介だな。体術がほぼ効かないか)
フツバは思考しながらも塞ぐつもりでいた扉の穴をヴェーラで塞ぐ。
「『分解せよ、結合せよ』」
小さく詠唱を唱える。
「お姫様の身を案じるのも良いことだが今のお前にそんな余裕はねぇぞって!」
タロンは休む間もなく飛びかかってくる。
フツバは天井ギリギリまで高く飛び攻撃を避ける。
タロンの攻撃は石のように硬い床さえ破壊する。
(外に出ると余計に敵を増やすだけならこの無駄に長い廊下で決着をつけるしかないか……)
苦笑いを浮かべてフツバが構える。
壊れた石の床材が細かく空気中を舞い、タロンの様子が窺いづらい。
何かに気づいたフツバが即座に横に避ける。
立ち込める細かい石の粒子の中からクナイのような先端が鋭く尖った鉄の針が飛んできてフツバの顔の横に刺さる。
そこから更に針は飛んでくる。
フツバはそれを剣で全てをまるで針よりも表面積の大きい野球ボールの感覚で弾き返す。
並大抵の集中力では出来ない技術だ。
床に転がる三十を超える針。
「今のを防ぎきるか。これは流石と言わざるを得ないな」
タロンが姿を現し称賛の声をあげる。
右手の手の平からは煙のような物が出ている。
さっきの攻撃は手の平から打ち出した物だと推測できる。
「聞きたいんだけどお前の体はどこかに人間的な部分ってあったりする?」
フツバが弱点はどこですかと同義の質問をする。
フツバは答えがこないつもりで聞いたこの質問にタロンは不敵に笑う。
「教えてやろう。そんな部分は存在しない。私はもう完全体となっている。お前の蹴りも拳も何もかも効かない最強の体だ!打つ手はないぞ!」
両手を大きく開き無防備な態勢になり答える。
顔も鉄で出来ていることはさっきの蹴りで確認したが、タロンの顔は笑っている。
機械の知識が乏しいフツバにはどうやってそんな事を可能としているのかは理解不能だ。
(鉄でできているなら表情作れないだろ普通)
厄介な敵に当たったとフツバは舌打ちをして構える。
タロンが踏み出した床が爆ぜる。
フツバの目の前まで一瞬にして到達する。
(足に仕込まれてた爆薬か何かを使ったか)
受け身を取れないフツバの顔面にタロンの左手の手の平が置かれる。
体を後ろに逸らすが逃れられない。
タロンの左手に開いた右手同様の穴が音を立てながら高温になっていきオレンジ色になる。
手の平から高火力の爆風が放たれる。
ライラ達が入った扉とは真逆の壁にフツバの体がめり込む。
壁全体に大きなヒビが入り、破壊音が鳴り響く。
「フハ、フハハハ!討ち取ったりオトメ・フツバ!今のをまともに食らえば貴様とはいえなす術がないだろ!」
狙い通りの攻撃の連鎖が決まりタロンは高笑いを上げる。
そしてフツバは動かなくなった……。
読んで頂きありがとうございました。
体の各部分に仕込まれたカラクリになす術なくやられていくフツバ。
前に出てきた謎の『戦』など様々な攻撃手段はまだありますが撃つ間もなく一方的に攻撃を入れられてしまいました。
最後は動かなくなってしまいましたがどうなるのでしょうか。
それではまた次話でお会いしましょう