二章後編32話 回想—トルタ編3話
どうも久しぶりのビタミンです。
いゃあ、一週間空けてしまうなんて久しぶりですね。
昔の一番やる気のなかった時ぐらいぶりですね。
今はやる気はあるんですがリアルの方が忙しくて。
三月までは続くと思いますが、もうちょっと頻度は上げれるように頑張ります。
という訳で今回は長いお話です。回想も最後、いつもよりもうちょっと時間がかかると思いますが一週間分だと思って読んで下さい。
外は黒一面となり空に三日月が浮かんでいる。
今夜はアリーとトルタにとっての三年ぶりとなる面と向かっての話し合いになる。
そもそもトルタがアトラとアリーが暮らしている家に帰ってくること自体が半年ぶりほどになる。
最近はトルタがアリーの事を気に掛けているのか執事を雇っている。
体が完全に自由ではないアリーなので助かりはするがその事さえ何一つ言ってこなかったので驚きだ。
「ねぇ、トルタ。最近仕事の調子はどうなの?」
「まだまだこれからだ。ここまで大きくはなれた。資金はもう充分。あとは、あれを作るだけなんだ」
「あれって?」
「なぁ、アリー。君がそんな体になった理由はなんだと思う?」
声は掠れ気味で疲れ切っている。
アリーは聞かれた質問に間髪を入れずに返す。
「私の不注意に決まってるでしょ」
「違う!君がそんな体になってしまった理由。それはこの国の騎士団の軟弱さだ!」
「何を言ってるの⁉︎あの事件は敵が悪過ぎたのよ。あの人達だけが悪い訳じゃない!」
アリーは強くトルタの一方的な意見に反発する。
「君は理解していないんだ!私たち二人があったあの騎士達は敗れたんだ。その状態から巻き返したのも騎士ではあった。しかし、それはたった一人の男だったんだぞ!」
トルタは怨念のこもった表情になっていく。
「……」
アリーはその言葉に相槌さえ打たずに黙って下を向いて話を聞く。
トルタは反論がないので続ける。
「その男によって私達も助けられた。小隊一つは瞬殺されたほどの相手に一人の男で圧勝するほどにこの国の軍は力量に差がある。だから私は強化する為に今頑張ってるんだよ!」
「どうやって?」
ボソリと質問をする。
「どうやってってそれは……」
トルタは明確に答えれない。
「やっぱりね。直感って当たるのよ!目標は立派だと私も思う。でも、その目標をこの速度で、かつ、機械でこなそうとなると細やかな努力なんてしてられない。それなら単純でど直球な強化法の人体を機械にしてみる一択よね。それじゃあ、一体その被験体の人達はどうやって集めてるの?」
アリーは怪我を負うまでに蓄えた知識を最大限振り絞る。
人が被験体として売られることがあるというのも聞いたことがあった。
「もう、いい!そこまで言われては仕方ない!その通りさ!もう私たちは人体実験に取り掛かろうとしてるんだ!もう目の前なんだ!そうすれば、そうすればこの国はもう安泰だ!な?分かるだろ⁉︎」
目の焦点は合っておらず疲れと動揺が手に取る様に分かる。
「分からない‼︎そんな事するなんて‼︎昔のアナタは人の事を第一に考えれた人だった‼︎」
アリーは昔のトルタとの思い出を信じて反論する。
二人の間で激しい睨み合いが続く。
アリーは落ち着いて話し合うつもりで家にしていたがここまでデットヒートするとは思っていなかった。
そこに階段を一つずつ降りてくる足音が聞こえてくる。
二人がそちらを向くとそこには目を擦りながら降りてくるアトラがいた。
「何やってるの?ふぁ〜〜、起きちゃったお母さん」
その愛おしい様子を見てアリーの緊張の糸が緩む。
アリーがアトラにゆっくりと微笑みながら階段に杖をつきながら近寄る。
「ごめんね。ちょっと大きい声出しちゃった。大丈夫だから上で寝てなさい」
アトラの頭を屈んで撫でて髪を整える。
「分かった。喧嘩はダメだよお母さん」
笑顔を返事として返す。
眠たそうに上に登っていくアトラ。
アリーは長く息を吐きながら立ち上がる。
その時階段にキラリと何かが光ったのに気づく。
何かと思い、手で拾い上げる。
それは髪の毛なのは触ってすぐに分かる。
ただその髪色はアリー譲りの銀髪ではなくピンク色の光輝く物だった。
それを見てアリーに嫌な予感がよぎる。
「ねぇ、ちょっと来て」
目の前の状況を冷静に判断が出来ないアリーはトルタを呼ぶ。
「何だ?何があったんだ?」
先程までとは違う落ち着いた声色にトルタも合わせる。
ゆっくりと屈んだ体勢のままのアリーに近づく。
少し近づいてトルタもすぐに気づく。
「おい、それはっ!」
トルタは衝撃に一歩退く。
「何色に見える?」
「俺には少なくとも、赤色。いや、桃色に見えるぞ」
顔を押さえて首を小刻みに横に振り現実を受け止めきれない様子だ。
「そうよね。ここに立ってたのってアトラよね」
落ちていた位置は紛れもなくアトラが立っていた位置だった。
銀髪を長く伸ばしているアリーでは考えらない短さの髪。
そう、それはまさしく新しく生えてきた髪の長さ。
「ねぇ、こんな事ってあるの?」
この世界で桃髪は全員に忌み嫌われる対象となる。
特にこの時代は社会情勢の不安定もあり国民の不安も多く差別はより過激だった。
「ありえはする。でもそんな確率は万に一つ、十万に一つほどの確率だぞ。それが当たったというのか」
トルタは驚愕が隠せない。
「まだ確定はしてないわ。明日の朝ちゃんと見てみましょう。もう、今日は一旦寝るわ。色々あって混乱してるの」
アリーものろりと立ち上がる。
「私も、もしもの事を考えなくてはいけないからな」
トルタとアリーはその後は一切喋らなかった。
———翌日の朝——
「おはよう、アトラ今日は朝久しぶりにお父さんが帰ってくるから」
寝不足になったアリーが朝から元気なアトラに声をかける。
一人で髪を見る勇気はないのでアリーはトルタが来るまで待つ。
扉が開く音がする。
「あ、本当だ!夜だけじゃなかったんだ!お父さん!」
部屋に入ってきた瞬間アトラが飛びつく。
トルタはその勢いに負けて尻餅をつく。
もちろんトルタも寝ることが出来ていなかった。
「どうしたの?二人とも。何だか朝から変だよ」
アトラは二人の様子の変化に気づく。
「見るぞ、アリー」
早速トルタが見ようとする。
アリーも悩む時間は充分に取ったので決心はついている。
首を小さく一回縦に振る。
「アトラ、ちょっと髪見してくれるか?」
「うん、いいよ」
アトラはぴょんと立ち上がって触りやすいようにトルタに髪を向ける。
大きな唾を飲み込んで髪を触りだすトルタ。
それをただ不安な眼差しで見つめるだけのアリー。
数秒間探した後トルタの手がピタリと止まる。
口が小さく動く。
「あった……」
その言葉を聞いてアリーが膝から崩れ落ちる。
「どうしたのぉ?何があったの?」
アトラは何も知らず久しぶりの父との再会に嬉しそうだ。
トルタがなんとか取り乱さずに
「アトラ、少し上に行ってなさい」
アトラは唇を尖らせてドテドテと上に上がる。
部屋に入った事を確信すると、
「これからどうするの?」
「……」
アリーの質問に返答が返ってこない。
アリーが見上げると苦しそうな表情のトルタが立っていた。
「どうしたのよ⁉︎急に⁉︎アナタまで」
アリーが椅子を引いて座らせる。
息がドンドン荒くなっていくトルタ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァァ。うっ、くっ、フゥゥ、うがっ、あっ、あっ、うわぁァァーー‼︎‼︎」
急に頭を何かに抵抗するかのように叫びながら振り回しだす。
「本当にどうしたの⁉︎そんなに刺激が強過ぎたの?」
アリーも他人を心配できるほど余裕はないが叫ばれては心配せざるを得ない。
「大丈夫、大丈夫だよ。アリィ」
ピタッと動きが止まりゆっくりと語りだす。
トルタが顔を上げるとその顔は目が真っ黒で絶望に満ちた様な目をしていた。
アリーがその様子が衝撃的すぎて表情一つ変えることが出来なかった。
「大丈夫、大丈夫、君だけは大丈夫だから‼︎ね?」
「う、うん。それよりアトラはどうするのよ?」
「桃髪が生えてきてたんだよ。そんなの決まってるじゃないか。捨てよう!」
「は?」
死んだような目で不敵な笑みでそうたからかに発するトルタ。
アリーには何を言ってるのか理解が追いつかない。
「いくら桃髪だからってそこまでする必要ないでしょ⁉︎子どもなのよ!?あなたの!?分かってる?」
アリーがトルタの手を握る。
トルタはそれを目を細くして見る。
「必要ない?隠そうとしたってどうせバレる事だ。それならいっそ捨ててしまおうと言うだけだ。だってここから僕の会社は大きくなるんだ。それなのにその娘が桃髪なんて取引先がいなくなる」
当たり前のように少し口角を上げてささやく。
(この人はここまで変わってしまったんだ。子供を捨てるなんてあり得ない)
「捨てさせない!捨てるって言うなら私も一緒に行く!これならどう?」
アリーが変わり果てたトルタを止めようと奮起する。
トルタはその発言を不思議そうに聞いている。
「これならどう?とは何がどうなんだ?そんな条件なんて付けようと何も変わらない!ついでだ、望み通り一緒に行かせてやる!」
口調が異様に変化しているがそれは気に留めずただただ冷徹な物言いに耳を疑っている。
アリーは変わり果てたというトルタの発言に言葉を詰まらせる。
今まで喋っていたトルタとは別人かのような豹変度合いにアリーの心が抉られる。
自分が知っていたトルタが全てだったのではないと思い自然と涙が流れる。
事件以来、トルタはこの国の軍の強化の為に家族をも捨てるような男に成り下がってしまった。
翌日、アリーとアトラは家を出される事となった。
家を出る最後の瞬間さえトルタは顔を見せなかった。
アトラは突然自分達が家を出る事になっていて戸惑いはしたがお母さんのアリーを信じて黙ってついてきてくれた。
これがトローノ家が崩壊した全てである。
事件によりトルタが狂い、アリー達を見捨ててまでも研究を優先した。
それによる破局。
ただ一つ誰一人として知らぬ事実があった。
それは、
「「可哀想にあの二人。でも許してね君たちのトルタ君は人間兵器の開発を頑張ってるんだよ。もしかすると、僕を殺せるほどの物さえ作りかねない熱量なんだ。だから彼を遠距離で洗脳してあんな事を言わせたのも許してね♪」」
会社近くの森の頂上に生える木のてっぺんから観察する様に両手を望遠鏡を真似たような形にして見ている悪魔が舌舐めずりをして笑っていた。
読んで頂きありがとうございました。
この作品にもブックマークを付けてくれてる方がいらっしゃるので流石に一週間以上は空けれません。
こんだけ時間空けといて二章終わったら全部の手直しすらつもりなのも驚きです。
というか僕は抵抗は有りませんが改投するのはダメなんでしょうか。
という訳で最後に悪魔が出てきた回想最後、こっからやっと時間軸が今に戻ります。
戻るのはもちろんフツバ対タロンなのでお楽しみに。
それでは次話でお会いしましょう
良ければ感想、アドバイス、質問お願いします。