二章後編31話 回想—トルタ編2話
どうもビタミンです。
今回は大晦日投稿です。
この一年は小説を書き始めたという事で大きく習慣が変わったと思います。
これからも頑張って描いていきますので応援のほどよろしくお願いします。
という訳でトルタの回想編スタートです。
トルタが目を開けるとそこには消毒の匂いがする場所に居た。
ベットで横になっている事に後から気づく。
痛む体を無理に起こして周りを見る。
周りでは医者から看護師までが走り回っていた。
「俺って、確か……」
掠れた記憶を呼び起こす。
(「まだ諦めんなよ。お兄さん」)
「そうだ!アリーとアトラは⁉︎」
急いでベットから降り立つ。
ふらふらな足取りで近くの医者に近寄る。
医者はそれに気づくと近くに来て体を支えてくれる。
「どうしたんですか?まだゆっくりしておかないとダメですよ」
医者がこちらの痩せた顔を見てそう言いベットに戻そうとする。
「俺の事はどうだって良いんだ!それより妻と娘はどこに⁉︎」
トルタは今出せる最大限の声量で抗う。
医者はそれを聞いて思い出したかのような表情をする。
動揺しているようで目が泳いでいる。
トルタは何かがあったことを察する。
「娘さんはご無事です。ですが、」
「アリーに何かあったんですか⁉︎」
「非常に辛い事を申し上げますが、受け止める覚悟はありますか?」
医者は真剣な面持ちでこちらを見る。
取り乱しかけた心をなんとか持ち堪える。
「お願いします、早く連れて行ってください。」
トルタを医者が支える形で歩いて向かう先は集中治療室だった。
この部屋だけは周りに比べて異様に静かだった。
何もないと錯覚してしまうほどに。
ゆっくりと扉を開き中に入る。
そこには大きなベットに目を瞑り横たわるアリーがいた。
「アリー‼︎」
トルタが足速に駆け寄る。
それでもアリーは目を開けない。
「どうなったんですか?アリーは」
そのアリーの様子を見てトルタは医者に聞く。
医者は重い口を開く。
「奥さんは、臓器の損傷。更には左足の神経が完全に切れています」
「それによって妻にはどんな事が出来なくなるんですか?今までみたいに一緒に機械を作ったり、料理したり、しゃべったり、アトラと遊んだりは出来るんですよね?」
医者は悲痛そうな表情で首を横に振る。
「ぁぁ」
死にかけの声が溢れるだけで後は何も出ず涙が溢れるだけだった。
「お兄さん起きたのか」
医者の後ろから男の声がする。
その声には聞き覚えがあった。
男は部屋の扉に手を置き、優しく労るような碧眼でこちらを見やっていた。
「その声は、確か」
ドアにいる男は血で汚れた鎧を着ている。
「この方は今回の襲撃を抑えてくださった○○○さんです」
その男の名は口が開くのは見えただけでなんと言ったかは分からなかった。
正常なトルタならば聞き返していただろうが今のトルタにとってはそんな事はあまり重要ではなかった。
「俺も駆けつけてすぐに止血はしたんだがな。すまなかった」
男は不甲斐なさそうに陳謝する。
それからこの事態が収束するまでには二ヶ月かかった。
ここからトルタの人生の歯車は狂っていった。
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あの事件から二ヶ月が経った。
最初に事件の経緯を話すことにしよう。
これは革命を起こそうとした荒くれ者たちが一つの村を急襲した事から始まる。
最初に向かった一番近くに基地を置いていた騎士団。
その騎士団は力不足により瞬間で敗れた。
理由は敵戦力の中でも最強と言われていた男がいたことだ。
それにより森に火が放たれ山火事が起きた。
その被害を聞いた騎士団が出した対策はあのトルタ達を救った男だった。
男により荒くれ者達は一掃された。
相手の最高戦力には流石に苦戦を強いられたらしいがそれも些細な事だった。
怪我人は騎士団により複数の診療所に運ばれ治療を受けた。
その内の一人がトルタであり、アリーであり、アトラだった。
アリーは一時は意識不明だったが今は意識をとり戻した。
症状は深刻だが元気はもう持ち直している。
これはアリーの性格のおかげでもあるだろう。
片足は動かなくなり自分一人では歩けなくなった。
体内の傷ついた臓器もトルタの早急な研究により臓器を繋げる簡易的な体に害がない物が作られた。
これによりアリーは入院し続けずに済んだ。
今では国が新たに支給してくれた作業場が住居も兼ねている。
そこで今までと同じとまでは言わないが幸せな日々が戻るとアリーは思っていた。
しかし現実は全く違っていた。
それは負傷を負ったアリーが変わったのではない。
むしろアリーは車椅子生活となったが今までとほとんど変わらない態度でいた。
変わったのはトルタの方だった。
トルタはあの事件以来作業場に引きこもる時間が何倍にも増えた。
アトラの面倒を見ることもなくなった。
アリーが作業場に入る機会も少なくなった。
というよりも入らなくなった。
ご飯を一緒に食べる機会も少なくなった。
アリーとトルタが喋ることといえば体内の機械の調子やアトラの成長の著しい部分の事だけだった。
その喋っている態度も今までよりも余裕が無く、冷たくなっていた。
アトラが笑顔で喋りかけても
「そうか」
それだけだった。
そしてトルタはどんどん新しい物を開発していった。
アリーの不安とは裏腹にどんどん工場は大きくなっていった。
その成果を聞き、志願者も増えた。
工場は会社となり名前はトロストルとなった。
トロストルの影響で周りの工場も市場を展開していった。
周りには小さい工場がたくさんできていった。
それによりこの地域は都市と呼ばれるほどになった。
発展は目にも止まらぬ勢いで進んでいく。
その勢いにアリーは置いてかれていった。
ここまで大きくなってもトルタは引きこもり続けた。
アリーが負傷した事で自分が大黒柱だという意識が高まり、作業に没頭していたとアリーは考えていた、考えたかった。
アリーも止まらぬトルタに不信感さえ抱いていた。
大好きだったあの頃のトルタはもういなくなってしまっていた。
(話をしよう!このままじゃ何かいけない事が起こる気がする!)
アリーが決心した時にもう一つの問題が起きた。
三歳になるアトラの髪に一本桃色の髪が生え出したのだった。
読んで頂きありがとうございました。
今回も前回も登場した騎士は何者なのか。
ちなみにちゃんと今後出てくると言うことだけはいつまで置きましょう。
あと、めちゃ強いですよコイツ。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、質問お願いします。