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ヒスヴィル-HISVIL 〜そのためならば何度でも〜  作者: ビタミン
プロローグ・話のまとめ
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二章後編まとめ〜メルト一回戦〜

※この内容には多分なネタバレが含まれています。本編をしっかりと読みたいという方はこの話を読むのはお勧めしません。

 長々と読むのは疲れるのでサラッと最新話まで読みたい人におすすめします。

 この話には伏線や細かい設定、描写、セリフなど省かれている物も沢山ありますのでご了承下さい。

 その日の夜謝罪の意を込めてカルロがご飯を持ってフツバ達の部屋を訪ねてくれた。

 もちろん、こちらが根に持つ訳は無いので快く受け入れる。

 そこでは何も起こらず、これからの挨拶で終わった。

 作戦は二日後に決行だ。

 それまでの一日の間フツバ達は何もしないという訳では無い。

 特にフツバは一番大事な任務がある。

 それは外に物資の調達に行くこと。

 これに本当はタロンも同伴する筈だったが想定以上の故障にタロンも手が離せなくなったらしい。

 案内係のタロンが消え、フツバが部屋の中で一人残り地図を覚える。

 その間二人は別の仕事の説明をしてもらう。

 アトラの仕事は簡単だ。

 機械の修理の手伝い、最新の知識で改善してくれるのも大歓迎だ。

 ライラはと言うと……やる事がない。

 これをライラは自覚をしていたので自ら雑用に回る。

 それは王族とは思えない立ち回り。

 こうしてる間にフツバは準備を終え、今外へと向かおうとしていた。

 フツバはタロンから貰った地図を見ながら地上へと向かう。

 地上に出てからは極力早く仕事を終わらせなくてはならない。

 バレないかつ素早く、フツバはフツバである事を忘れ道行く人の中に紛れる。

 セメラルトには常日頃から多くの人で溢れかえっている、フツバを見分けられる人などいない。

 フツバは難なく最後の店まで辿り着いた。

 その店は階段を少し降った場所にあり怪しげな雰囲気がある。

 中へ入るとおばさんが一人カウンターでこちらを見ていた。

 フツバは予めタロンから聞かされていた合言葉を伝える。

 その言葉に反応しておばさんはこちらに小包を投げ渡す。

 小包はフツバの足元に落ちる。

 フツバが屈んで取ろうとした時、店の空気が一変する。

 フツバの屈んだ横の本棚の裏から騎士達がフツバに襲いかかってくる。

 フツバは直前に気づけたこともあり、小包を取った手をそのまま剣へと手を回す。

 そのまま最初に剣がフツバに達する騎士達を薙ぎ払う。

 カウンターの方からメルトも出てきて厄介な状態になる。

 狭い部屋で大人数は流石に厳しい。

 フツバは空中に飛び上がり、地面を砕き割る。

 その砕き割った破片が高速で騎士達に目掛けて飛んでいく。

 足元や腕など重要な部分にしっかりと石飛礫は飛んでいく。

 狭い部屋を逆に利用し、メルトとその隣にいた二人の騎士以外は全員手負いにする。

 この一瞬の形勢逆転にメルト以外の二人は驚いている。

 しかし、フツバはそのまま戦わず後ろの階段へと逃げていく。

 二人の騎士は階段上にも騎士を置いておいたという事で油断しているがメルトだけはやはり油断していなかった。

 案の定、階段の上から気絶させられた騎士が落とされてくる。

 メルトはそのままフツバを追うが他の二人はフツバの強さにただ呆然としていた。

 メルトが上に上がった時にはまだフツバは完全に姿を消し切れていなかったため追われてしまう。

 フツバは地下の出入り口の方に向かって走る。

 メルトも負けじと追いかけてくる。

 差は少しずつ開いている。

 追いつかれることはなさそうだ。

 そんな時後ろでメルトが緑色の信号弾を放つ。

 フツバは突然の事に困惑する。

 緑色は作戦開始の合図だ。

 もうフツバを捕まえる作戦は始まっているのに意味が分からない。

 しかし、その意味も出入り口が見える距離になった時に分かる。

 出入り口のある路地裏を騎士達が五人ほどで占拠している。

 恐らくこの五人に伝えるための信号弾だったのだと理解する。

 この五人はメルトに教え込まれているらしくフツバを見つけても襲い掛かるのではなく警戒してその場を動かない。

 フツバにとってはそれが一番厄介だ。

 そしてこの時点でフツバがやることは一つになる。

 ここの真反対にあるもう一つの入り口を使うしかない。

 これには問題点がある。

 二個共の出入り口の場所の目星が付いてしまうという問題と中央を通るのでこのセメラルト専属の騎士とも戦うことになる可能性がある事だ。

 しかしこれの問題を解決しつつ向かうしかない。

 幸いにもフツバはメルトよりも足が早く追いつかれはしない。

 中央に差し掛かってくると道の一つ一つが大きくなってくる。

 フツバは最短距離のため屋根の上を飛び移りながら進んでいたので飛ぶ距離が長くなる。

 これは隙ができる時間が長くなるということだ。

 そしてこの都市最大の道を越えるために思いっきり踏み込み飛ぶ。

 この道を進めば先にあるのは目当てのトロストル社だ。

 フツバが飛んでいるのを見計らい下から矢がフツバ目掛けて飛んでくる。

 フツバはそれを足で振り払う。

 しかしそれは勢いを殺す事になってしまい、そのまま地面に着地してしまう。

 そこに待ち構えていたのは懸念していた専属の騎士団。

 一人、図体が大きく隊長と思われる渦巻きの髭を生やした男。

 複数人の部下を付き従えている。

 そして、メルトも追いついて来て背後に回られる。

 この二人が揃った状況に一般兵は勝ったと油断をする。

 さっき身をもって体験したメルトが大声でその者達に注意する。

 フツバが三星認定された男だと言う事を。

 その鬼気迫る声、一切の油断を見せない隊長の背中、それらから何を感じたのか全員がまた警戒体制に入る。

 フツバがその僅かな隙を突き場を有利に運ぶ傾向をメルトはしっかり把握している。

 フツバ対メルトの再戦が始まる。

 戦闘は渦巻き髭男から始まる。

 フツバはそれを当然が如く跳び躱す。

 そこにメルトはなぜか追撃に来ない。

 そんなメルトが渦巻き髭男に部下を非難誘導に当てさせるように命令する。

 どうやら人が多くてやりづらいといった様子だ。

 王都の騎士と地方の騎士の間には確執がある。

 一度男はその命令を断る。

 しかし、メルトはその男の無思考な返答に呆れる。


「そうか、お前は部下とフツバの力量の差も分からんのか。なら貴様も避難に回れ。お前は少しは出来るやつだと思ったんだがな。いるだけ邪魔だ」


 と攻めた言葉を浴びせる。

 その言葉で目が覚めたのか男は部下達を別の所に回るように指示を出す。

 これでメルトの望んだ少数精鋭になる。

 フツバからすると厄介だ。

 二対一の状況となり、最初に仕掛けるのはやはり渦巻き髭男である。

 男が両手で斧を振りかぶる。

 その攻撃フツバは片手で受け止めてしまう。

 反対側からはメルトがフツバの腹に目がけて斬撃を放つ。

 が、フツバは斧から剣を離してしゃがみ込みメルトの斬撃を避ける。

 避けるだけでは終わらず、狙ったか偶然か、メルトの斬撃が男の斧撃がぶつかり合い、お互いに反動を受けてしまう。

 その隙だらけの二人のうちフツバはメルトに斬りかかる。

 腹に致命傷とまではいかない斬撃を加え、更にもう一発腹に蹴りを一撃入れる。

 メルトが吐血しながら遠くへ飛んでいく。

 そんなメルト一人を相手にしている間に後ろから男の影が迫る。

 フツバが男の存在に気づくことはできるが想定外のことが一つ。

 男の一つだったはずの斧が分裂し、二つの斧へと変貌している。

 フツバの剣は一本、防ぎきれない。

 普通ならここで深手を負って終わりだ。

 しかし、オトメ・フツバという男は対応力こそが華だ。

 フツバはその二つの斧撃を剣を手から離し、素手の状態の両手で掴み取る。

 当たり前だが素手で掴めば手が切れる。

 しかし、この世界には拳士が剣に対応するための技『硬手術』というものがある。

 手又は足のどちらかを剣と張り合える程に硬くする技術。

 こんな技普通の剣士ならば持ち合わせていない。

 男はもう賞賛の声をあげるしかない。

 隊長二人を相手にして傷をほとんど負っていない。

 フツバは斧を弾き返し、その硬手術のままの手で男の腹に一撃。

 頑丈な鎧も凹み、男の身体へと威力が響く。

 そのまま出店へと突っ込み男は気を失う。

 そんな時後ろからメルトが起き上がってくる。

 そして、メルトがヴェーラを詠唱し、剣が紫光を放つ。

 毒が空気を伝いフツバの肌でも感じるほどの毒気。

 そんな一触即発のはずの空気の中フツバはメルトのヴェーラを見て笑い出す。

 心の底からの爆笑にメルトが困惑する。

 一度見ているはずのヴェーラを改めて見て笑っている意味がわからない。

 フツバはこう付け加える。

 

「普通、属性系のヴェーラは数日経てば勝手に次の段階に行けるらしいんだ。だけどお前行けてねぇじゃん。才能ないのか?」


 フツバが師匠に教えてもらった進化速度よりも遅過ぎて笑ってしまう。

 メルトはその発言がフツバの挑発のようにも思えてしまう。

 しかし、フツバは本気で笑っている。

 そして今、フツバは一つのミスをした。

 それはメルトの前で才能を語った事だ。

 メルトは才能という言葉が一番嫌いだ。

 努力さも生まれつきかのように扱う言葉がメルトは嫌いだ。

 メルトはなんら恥じる素振りなく剣を構える。

 そんなメルトという努力だけでここまで来た男の姿勢にフツバも笑いがかき消える。

 フツバもメルトと同じく、構える。

 メルトが先制を仕掛ける。

 一気に距離を詰めるがフツバはそれに対応して後ろに下がり剣を真っ向から剣で受け止める。

 そしてフツバがヴェーラの詠唱を唱える。

 毒を纏った剣の一撃。

 本当ならフツバの剣が溶け落ちるはずだった。

 しかしフツバのヴェーラとメルトのヴェーラは相性が悪い。

 毒が分解されて無に帰してしまう。

 メルトはこの余裕な様子のフツバを見てアン(ドイルの所にいた副隊長)との会話を思い出す。

 アンは言っていた、フツバは常に本気では無いと。

 その意見にメルトは激しく同意する。 

 フツバはメルトが見ていたどんな時も本気のフリをしていた。

 そしてこの男は今も本気ではない。

 そんな男に一度本気を出させてやりたい。

 その思いで更に剣に力を加える。

 しかし、フツバはその加えられた分をしっかりと加え返して来て、力を相殺する。

 メルトのヴェーラは成長していなかったとしてもメルト自身は成長している。

 ここでフツバに回し蹴りを入れる。

 よりも早くフツバがメルトに仕掛けていた。

 メルトの顔面目がけてフツバの張り手が繰り出される。

 メルトはもうただ食らうだけではなく、後ろに張り倒される威力を利用し、フツバの顎に目がけて足を振り上げる。

 フツバはその攻撃の威力を弱めるためにメルトの攻撃の威力の向に自ら飛び上がる。

 顎という急所にフルパワーの攻撃は受けたくない。

 フツバは壁にぶち当たることを代償に威力を流し受ける。

 お互いに攻撃をくらうが手を休めることなく仕掛けるのがメルトだ。

 メルトは毒剣でフツバに襲い掛かる。

 フツバは剣で受け止める。

 そして次のフツバの一手がこの戦闘の終わりとなる。

 フツバはヴェーラを再詠唱し、メルトの毒剣を素手で掴む。

 フツバに捕まれた事により下がれなくなったメルトがフツバの攻撃を避ける事に集中する。

 が、フツバがしたのは攻撃ではない。

 フツバは剣を最大限の力で横に思いっきり振り、壁に投げつける。

 メルトはその攻撃力の低い行動を敢えて受け、フツバの次の出方を見ようとする。

 そんなフツバだが、フツバはもう攻撃はせず、ここから逃げようとしている。

 メルトが歩き去るフツバを止めようと立ち上がり、動こうとする。

 その時ある事に気づく、自分の足と瓦礫と地面がそれぞれ結合されていて身動きが取れないことを。

 フツバはまたメルトを殺すのではなく行動不能にして去っていく。

 メルトがフツバに叫び声をあげ続けるがフツバは止まらない。

 しかし、そんなメルトにもフツバが一言、


「どうせ、すぐ会えるからそうおちこむな」


 こうして、またメルトの前からフツバが逃げていった。

 


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