二章後編29話 トルタ
どうもビタミンです。
今回はアトラとお父さんのお話です。
少し内容は薄いかもしれませんが次回は回想メインになりますのでそちらの方がお父さん側の視点も分かり、理解しやすいかもしれません。
という訳で今回もお楽しみ頂けたら嬉しいです。
「トロストルの社長。ストルノ・トルタさん。あなたはお父さんに当たる人って事で良いですよね?」
アトラは丁寧な口調で問う。
「そうだな。記憶に無いのも仕方のない事か」
トルタは低い声で返す。
最初の動揺は殺しきった様子だった。
眉間には皺が刻まれていて、不機嫌そうな顔つきだ。
返答を聞き、感情を抑えているアトラ。
「一つ聞きたいことがあるの」
トルタは顔をあげてアトラの目を死んだ目で見つめる。
「分かった。その代わり私の質問を先に答えてくれ」
「なんですか?」
「アリーは、どうなった?」
その言葉を聞いた瞬間アトラの感情が爆発する。
「あなたが!アンタがお母さんの心配なんてするな‼︎見捨てておいて何がどうなった?だよ。ふざけんな!あの人がどうなったかなんて、どうなるかなんで分かってた筈だ!アンタは、」
アトラが目から涙を溢す。
怒声は鉄筋の部屋に響くだけで部屋中の本に吸収されて終わる。
「そうだとも分かっていたさ。それで答えは?」
トルタは冷酷な声で分かりきった答えをアトラに口にさせる。
アトラは歯を食いしばりながらも答える。
「死んだよ!元々体が良くなかったんだ。あんな状態で放り出されたらそりゃあそうなるだろ!」
トルタは一瞬悲しそうな顔をするがスンと表情は戻る。
「答えは分かった今度はお前が質問を言え……」
「アトラだ!名前も覚えてないのかよ。私の質問は二つある。一つは本当にこの会社は桃髪の人を使って人体実験をしているのか。二つは何でお母さんを見捨てた?」
少し考えた後口が動く。
「一つめから答えてやろう。それを何処で聞いたのかは知らぬが事実だ。扉の向こうの者と協力している」
「何で、あんな酷いことを⁉︎」
「酷いこと?簡単さ、技術の進歩の為さ。分かるか、今のこの国の戦力では到底他の国を落とすことはできん。その為に私は偉大なる発明を使用としているのだよ。
いや、発明は八割型完成している。後は誰にでも出来る様にするだけだ」
「進歩の為?あれじゃただの奴隷じゃない⁉︎実験のせいで本人たちがどんだけ苦しんでると思っているの?」
「苦しんでる?元々、差別されていたアイツら、いやお前の様な桃髪にとっては大して変わりはせんだろ。元々嫌われてたんだ。片腕やら片目がどうこうなったって何も変わりはしないだろ」
「あんなのを強要するなんてあり得ない!機械をあんなのに使うなんて今の私には考えられない!」
「おいおい、笑わせるなよ。アトラ!良いだろう二つ目も一緒に話してやる。お母さんを見捨てた理由それはお前だよ!トローノ・アトラ!」
「……私……まさか、私の桃髪が理由でお母さんごと見捨てたって事?」
「その通り。お前のその髪はな、私の会社がここまで大きくなる為には邪魔だったのでな。三歳になったお前を捨てると言ったら、アリーは止めに入った。止めると言うのなら……アリーも、アリーも邪魔だからな。一緒に捨てたんだよ!」
少し詰まらせながらも当たり前に呟く言葉にアトラは絶望と同時に虚しさと怒りが溢れてくる。
「ついでにお母さんを捨てた?ふざけないでよ‼︎そんな事でお母さんが、」
「ふざけないではこちらの台詞だ!」
トルタが突然感情を露わにする。
「私がアリーを愛していなかったとでも思うか⁉︎愛していたに決まっているだろう!私は見捨てるしかなかったんだよ。この国を大きく前進させるという大義のためにな」
片方の死んだ目が微かに動いてしまうほどトルタは動揺している。
そして続ける。
「三歳になったお前から急に桃色の髪が一本生えてきた。最初は嘘かと思って切っておいた。すると次の日には二本。明後日には三本。どんどん増えっていったんだ。それまで幸せだった家庭がひっくり返った。何もかもを人間性と共に捨てることになった。
もし、お前たちが我々を止めると言うのなら今度は捨てるだけでは済まないぞ。アトラ!」
「やってやる!こんな会社は潰してやる!おかしな方向になったこんな会社!」
その時後ろから高いライラに渡しておいた笛の音が聞こえた。
読んで頂きありがとうございました。
今回は言葉が多かったですね。
桃髪は生えてくるだけで全てを狂わせる『悪魔の髪』というわけですね。
一般にはそれが由来とされています。
次回は回想回となります。お父さんとお母さんの話になります。少し長くなる予定ですが頑張ります。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、質問、お願いします。