二章後編25話 黒ずくめと大男
どうもビタミンです。
今日は合計で二話書く事になったのですが、たまたま書く内容がフツバの方とアトラ達の方とで逆になるのでまだマシですね。
やはり一日一話が丁度いい。
という訳であたりめを噛みながら書いた今回もお楽しみ頂けると嬉しいです。
「トローノ・アトラだと⁉︎」
受付の男が驚き、身体をのけぞらせる。
アトラは決めてやったりという顔で男の顔をマジマジと見ているだけだ。
「アトラの本名ってトローノっていうんだ。初めて聞いたけど何なの一体⁉︎」
ライラも男の反応から事態の進展を期待する。
男はのけぞったまま止まっている。
周りは騒がしいがこの空間だけは静寂が続いている。
ドヤ顔する少女と不思議そうな顔の少女、驚いた態勢のままの大男。
静寂を壊したのは大男だった。
「って誰じゃボケェ‼︎」
「はっ?」
少女二人が思わず口を開ける。
想定外の反応だ。
「何やら偉そうに言うからこっちもそういう反応せんとあかんのかと思ったやんけ。結構長いこと熟考したけど全く出てこんかったわ。で、何もんやねん?」
急な語調の変化とテンションの変化に唖然とする二人。
男がその勢いのままタバコを吸い出す。
アトラの前に顔を近づけて、何かを思い出そうとするが何も思い出せない。
首を傾げた後、アトラの顔にかかるように煙を口から大量に吹き出す。
その態度と匂いにアトラも不快そうに眉をピクピクと震わせる。
「何で、知らないんですか⁉︎社長に会ってみれば分かりますよ。会わせてみてください。ほら、早く」
アトラが小さい手足をバタつかせて社長の元へ向かわせようとするが男が動き出す気配がしない。
「さっきも言ったけど、予約なしじゃ無理なんやわ。何やトローノだかアトラだかしらねぇけど、社長からはそんな名前の奴を通せなんていう命令もねぇんだわ。だから、帰ってくんないと困るんだよ」
男はこちらを所詮少女二人と見限り、一気に適当な態度に変わる。
アトラもこれ以上キレる手札が無くこのまま入れませんでしたと帰る事になるのかと思っていたその時だった。
アトラと大男が睨み合っている間に謎の黒ずくめの男が急に現れる。
全身真っ黒で目だけが見えるように穴が開いている。
「今、あなた、トローノと言いましたか?」
男が機械で変声したような声で語りかけてくる。
「おい、あんたは誰だ?コイツらにようなら丁度いい連れてってくれ」
大男が黒ずくめを怪しい者同士で追い払おうとする。
黒ずくめが大男の方を向き、目を合わせる。
「この方を社長室まで連れて行きなさい。これは緊急事態です」
黒ずくめが大男に命令する。
男がダルそうな顔で返答をする。
「何でだよ。ていうかアンタ誰だよ?残念だけど、連れてはいかねぇぞ。まずは自分達が何者かを示せ」
黒ずくめがため息を吐く。
(ため息‼︎やっぱり声を変えてるだけでコイツは人なんだ!)
アトラが心の中で黒ずくめを警戒する。
隣のライラはずっと黒ずくめの男を睨むようにしている。
(私より先にきっと気づいてたんだ、きっと)
人でこの見た目はあまりに怪しすぎる。
男がロボ声で喋り出す。
「社長に伝えられてないのか?全く、めんどくさがりな人だ相変わらず。私はあの人の秘書に当たります。昔はよく来ていたんですが最近また久しぶりに来だしただけですよ」
黒ずくめは内ポケットからパスポートの様な物を取り出して見せる。
「秘書?確かに聞かされてねぇな。アンタが関係者だって事は分かった。しかし、そこの二人は何で入れなきゃ何ねぇんだ?」
大男がまたアトラを睨む。
アトラはそれに反応せず、黒ずくめの方を見ていた。
「秘書と名乗る方。この男に言ってやってください。トローノがどんな意味を持つか」
アトラがビシッと黒ずくめの男を指名し命令する。
黒ずくめの男はそれに首を縦に振る。
「トローノ、それは……社長の元奥さんの姓です」
ライラと大男が同時に社内全体に聞こえる声量で声を上げる。
「奥さんってアンタ、結婚して、えっ、でも、えっ?」
ライラが動揺を隠しきれていない。
「社長がこんな小さい子と結婚していた?えっ、でも、年齢的に、えっ?」
大男もライラと同じような動揺の仕方をしてるのはなんとも滑稽だ。
先程までライラはずっと考えていた。
目の前に現れたこの黒ずくめの男。
(何処かで見た気がするんだけど。いつだったかしら?)
ライラはずっと険しい顔つきで黒ずくめの男を見つめていたが答えに辿り着く事はなく社長室に案内される事になった。
読んで頂きありがとうございました。
今回は少し短めの回でした。
最後に衝撃!アトラがまさかの結婚していた⁉︎という感じでどうなっていくのか?
ところでですが、僕の作品は新しい後出しなろう型という新しい形になっているかもしれません。そういう部類あったりしますかねぇ。
という訳でまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、質問よろしくお願いします。