二章後編23話 戦
どうもビタミンです。
今日はもう勢いも収まりつつあります。
今回の件で見てくれる方が増えると嬉しいんですが。
そんな少しの奇跡に縋るのではなく、しっかりと執筆に励みたいと思います。
という訳で今回もメルト戦の続きです。
鼻が曲がる様な匂いが全体に充満している。
フツバの視界だけを見るとここはまるで巨人に丸呑みされてたどり着いた胃の中とでも言おうか。
草は枯れ、建物は築百年の様な見た目に変貌する。
足元には豪雨の後にできる水溜りほどの大きさの毒だまりができている。
あらゆる物質がそれぞれの形で死んでいっている。
「長い事いると流石に死ねるなこれは」
フツバが目を鋭くして言い捨てる。
メルトも内心驚いているがそれよりも今は体に満ちる力が尊い。
「これが『界解放』なのか。これは、」
言葉に表すことの出来ない感動が込み上げる。
『界解放』ヴェーラの中でも属性系のヴェーラには必ず存在する一つの戦闘方法である。
辺り一帯を自分の属性が溢れる世界にする能力。
属性系のヴェーラにとって自分の属性に合った場所で戦えるのと戦えないのでは大きな差ができる。
通常、これはヴェーラの覚醒から一週間以内に自然と出来るようになるのだがメルトには通常以上の時間がかかったらしい。
(無理矢理ヴェーラを覚醒させるからこうなったと考えるのが妥当か)
フツバが頭の中で結論を導き出す。
フツバも期待の上での攻撃だったがここまで顕著に覚醒してくれるとまでは想定していなかった。
メルトの足元の毒沼の泡が弾けると同時にメルトが一気に仕掛ける。
先程までとは一線を画す進化だ。
スピード、殺気、振りの速度、戦いに関する全てのパラメーターが上がっている。
それはもちろん攻撃力も増加させている。
毒剣の一振りをフツバも剣で受ける。
ヴェーラの相性上剣が溶けることはない。
しかし、フツバが剣に込める力は全力に匹敵するほどの力だった。
メルトを弾き返し、退かせる。
フツバは一度小さく息を吐いた。
メルトは感じる、確実に今フツバに課せられていた枷が一つ外れた。
フツバの周りに振り撒く殺気も少し荒いものになる。
(来る‼︎)
メルトがそう感じれたのはフツバが踏み出した瞬間の事。
数分前のフツバの攻撃には剣が体を斬り裂く手前で気づいたが今はそれよりも早くに気づく。
フツバの一撃はメルトを覚醒させた時の斬撃と等しい殺傷能力がある。
一つ違うのはフツバが真剣にこの一撃を放っていること。
何かをメルトに求めるのではなく、ただ単純にこのレベルまで出さざるを得なかったということ。
これはメルトにとっての大きな前進である。
メルトは剣の中心でしっかりと受け止める。
メルトはしっかりと力を相殺する。
次の瞬間にフツバは体を翻してメルトの頭に目掛けて踵落としを入れようとするがメルトが弾き返す。
今更驚くのも何だが、剣で足を弾き返されたというのに足に傷が一切つかないのも中々におかしいことだ。
「最初は期待外れの奴かと思いはしたがここまで強くなれたんなら上出来だ。初めてかもなここまで力出しても勝てないのは」
フツバが八重歯を輝かせながら笑う。
満足そうな笑みを見るとメルトもフツバに追いつけたと言うほど傲ってはいないが片手ぐらいは届く位置に来れただろうかと思わされる。
メルトの口角も無意識に少し上がってしまう。
「レベル2と行くか」
フツバが小さく呟く。
メルトには聞こえないがまた殺気の種類が変わる。
「受けてみろよ。竹の戦を」
フツバの構えが大きく変わる。
メルトが聞こえた言葉に蓄えた知識で考える。
戦、メルトは武術の資料で読んだことがある。
なんでも剣術を極めた者が考えた特殊な技の事を戦と呼ぶという。
その達人の名を戦の前に付けるのが基本と言われている。
戦の中でも有名な物が二つある。
その一つが「竹の戦」
五英傑の一人と言われている「竹一族」の初代長が考えた物とされている。
その竹の戦中でも発見されている物がニと五と六と七
だ。
いくつあるかは未知数だが、現在発見又は使用者がいる物がこの四つになる。
それ以外の技は不明とされている。
今、目の前に居る男はその竹の戦を使うと口にした。
受けてみたいと思うと同時に何故使えるという疑問も同時に思い浮かぶ。
どこまでも腹の底が分からない男だと改めて痛感させられる。
剣を地面と平行にして顔の横まで持ち上げる。
尖った剣先をメルトに向けて体の重心を後ろに置く。
剣を持っていない方の手を前に開いてだし狙いを定める様な動作を取る。
次の瞬間、高速の戦撃が放たれる。
「竹のニ『流転突』」
フツバがそう詠唱した後の刹那の間にフツバの剣がメルトの体にぶち当たる。
激しい衝突音、辺りの空気も弾ける。
今、アドレナリンにより力が増大しているメルトには僅かに剣の動きが見えた。
人外の速度で繰り出される剣の回転とフツバの前進。
メルトが出来たのは体を毒で纏い、衝撃を少しでも抑えることだけ。
長い鍛錬によって繰り出されたその技に進化したメルトもなす術なく、吹き飛ばされるしか無かった。
壁を越えたその先にまた新たな壁が立ち塞がった。
(なるほど、これは本気を出せない訳だ)
メルトがフツバに対して称賛を送った。
読んで頂きありがとうございました。
今回は新たにではありませんが、ちゃんと説明するのは初めての「戦」という物が出てきましたね。
ドイルの際に初撃で使いましたが、あの時の威力と今回の威力では手前に騎士がいるのといないのとで全然違います。
この「戦」で決着はついたのか?
という訳でまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、質問などよろしくお願いします。