二章後編21話 トローノ・
どうもビタミンです。
今回の話を書く前にTwitterでとんでもないことが起きました。
何と初めての感想が来たとツイートした所百件以上ものいいねが来ました。それにより最高PVを二日連続更新。
PVが100を初めて超えるというこの作品の大きな一歩を踏み出せた感じがします。ここからが本番です。この勢いに乗れるように頑張ります。
騎士達が歩き回り警戒が増している商店街を目下に、屋根を静かに駆け抜けるフツバ一行。
改めて目立たない為に黒髪に染め直したアトラも抱えられている。
「言っての通り騎士が多いなコイツはめんどくさいな」
フツバが街の様子を走りながら伺い呟く。
「そうですね。幸いこちらに気付かれてない分会社までは穏便に行けそうですね」
「問題は私たちがまだ社長に会えるかどうかってとこよね。ここまで厳重だと会わせてくれなくなってるかも」
街の厳重な警備を見てライラが不安を漏らす。
フツバもその意見には同意だ。
この厳戒態勢に面会は厳しいと考えるのが妥当だろう。
ならば強行突破しかない。
そんな事を考えているフツバにアトラが声をかける。
「大丈夫ですよ。きっと会えます」
アトラが断言する。
フツバの全速は距離の感覚を忘れさせるらしい。
出口からは数百メートルあったはずの会社の前にもう着いていた。
「着いたぞ。相変わらず高い建物だな」
フツバが建物を見上げ、二人を降ろす。
「ここがトロストル社……」
アトラも服を整えながら見上げる。
「時間がない。始めるか。行動は作戦通り。アトラとライラが社長の気を引いておくアンド隙あらば気絶させて社長室の中も探せ。俺はここら辺でひと暴れしておくから」
フツバの述べた作戦にライラが疑点を見つける。
「暴れるのって会社の外だったっけ?中じゃなかった?」
「あぁ、作戦はそうだったな」
「それじゃあ作戦通りじゃないじゃない」
「色々変えたんだよ。姫さんにも話しただろ、昨日。あれのせいでな」
フツバが細かい説明はせずに抽象的な表現で説明する。
「あれが本当かどうか分からないじゃない⁉︎」
「本当だったらみんな死ぬがそれでもいいのか?」
「っ!……」
ライラはぐうの音も出ないらしい。
フツバとアトラは目を合わせて作戦開始の合図を送る。
「行きますよ、ライラさん。いえ、ここからはララさんとお呼びしますね」
「何だか懐かしいわね」
ララことライラがセメラルトに来て最初の事を思い出す。
それからまだ二日しか経ってはいないがずいぶん前の事に感じる。
「フツバさん、ご武運を」
アトラがそう口にしてゆっくり目立たない様に降りてゆく。
それに後を追う形でライラもついて行く。
「アンタの事だから大丈夫だろうけど、気を付けてね」
ライラも一応とばかりにフツバを気にかける。
フツバもその様子を鼻で笑う。
「それなりに頑張るよ」
必死に頑張れとライラは思うが言わずに立ち去る。
アトラの後ろを一般人の様な態度でつけて行く。
騎士達も流石にこの二人を見分けることは出来ない。
というよりもフツバ探しの方に夢中で気づく物にも気づけない。
難なく会社の入り口に着く。
「ララさんいいですね?一応、警戒して行きますよ」
アトラの呼び掛けにライラが小さく首を縦に振って応える。
扉の前に立った瞬間大きな扉が自動で開く。
二人が緊張した様子で中に入る。
「えっ……」
思わずライラが声をこぼす。
外の緊迫した雰囲気とは異なり、中は何だか賑やかだ。
どこかで行われている機械の生産音。
受付では複数の人が交渉やら直接買いに来た人やらで賑わっている。
アトラ曰く機械の部品も料理と同じで出来立てがいいと言う人も多いらしい。
多いといっても面会の人数は圧倒的に少ない。
アトラとライラの番はすぐに回ってくる。
二人が緊張しながら受付に向かう。
受付唯一の男は厳つい目でこちらを見る。
二人は気づかれたのかと警戒して何も喋らず笑顔でいるだけだ。
男の表情がどんどん険しくなる。
(マズイ!気づかれた‼︎)
二人が逃げる準備に入った瞬間。
「早く用件を仰ってください。そんな笑顔でいられても困るんですが」
男は見た目にそぐわない優しい声でこちらに喋りかけてくる。
緊張のあまり当たり前の事を忘れる。
「そ、そうですよね。用件はですね、」
二人が会社に向かって五分ほどが経った。
「そろそろ俺も始めるか」
フツバも気合を入れる。
屋根の上で隠れる素振りなく立ち上がる。
下見の時に見ていた大通りの脇の屋根。
ここで叫べば通り全体に響く。
大きく息を吸い、手をバッと広げて思いっきり。
「レディース&ジェントルメーン!」
辺りに声が響き渡り騎士達も一般人も全員が一斉にフツバを見る。
聞いたことのない響きの言葉に一般人は反応し、騎士達はその男が放つ猛き者だけが持つ雰囲気に反応する。
「さぁ、誰が俺を倒せるかなぁ?」
恨みや屈辱、憤怒、正義、騎士達の色んな感情がぶつけられ体の芯が震える。
(悪くねぇな、この感じ)
それと同時刻、トロストル社、社内では
「社長の面会は予約が無くては出来ません」
男が強くアトラ達を拒む。
アトラの顔が曇る。
「それでは社長にこう伝えて下さい。『トローノ・アトラ』が来たと。それが私の名です」
アトラが切り札を切る。
隣でライラはアトラの発言に耳を疑っているだけだった。
どうも読んで頂きありがとうございました。
今回はアトラの本名が分かったということでした。
フツバが二人に話した事とはいったい何なのか?前回の伏線も含めて回収されるのは今回の章の最後の方になると思います。
前書きにも書いた通り沢山の方が見て下さいました。とにかくまずはありがとうございます。未熟ですがここからより成長出来たらと思います。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想、アドバイス、ぜひぜひお願いします。