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二章後編14話 石飛礫はめり込みます!

どうもビタミンです。

今話はフツバの一人回という訳で中々珍しい感じになると思います。

二話に分けるしか無さそうだけど大丈夫かなぁ。

とにかく、今回は遅れてしまった分多めの内容で行こうと思います。

それではお楽しみください

 ギシギシと梯子を登る音が地下に響く。

 正しい道以外はハッタリで行き止まりになる。

 正しい道を覚えるのにはある程度の月日を要するだろう。

 そんな地下道を一人で地図に沿って歩く男、オトメ・フツバだ。

 今は一人で買い出し兼明日の下見だ。

 地上には沢山の敵兵が待ち構えているだろう。

 それを掻い潜るのは困難。

 何よりもメルトが一番の厄介。

 フツバを追っており一般の兵士よりもフツバに対する執着が人一倍強い。

 あの男ならフツバがスパイさながらの変装をしていても、優秀なFBIの警官よりも先に見つけ出すだろう。

 そんな地上の最悪な状況の整理をしている間に出口の梯子に辿り着く。

 ゆっくりと梯子を登り、出口一歩手前で一度足を止める。


「行くかっ!」


 そう気合を入れた瞬間、勢いよく出口にされていた蓋を開けて外に飛び出る。

 瞬時に辺りに兵がいないのを確認。

 壁を蹴り上がっていき屋根へ飛び乗る。

 表の道は出店で栄えていて騒がしい。

 その奥にはそこらの建物よりも高い五つのビルが建っているのが見える。

 その中でも一番高いビルがお目当てのトロストル社だ。

 

「買い出しが先か、見回りが先か、、」


 フツバが行動の優先順位に頭を悩ませる。

 決断の要はフツバが荷物を抱えて敵兵最速のメルトから逃げれるかどうかという点だ。

 フツバが熟考するに足らない事だと気付いたのはすぐの事だ。

 そう、当たり前に悩む必要などない。

 それはフツバがいつもライラを抱えて逃げていたからだ。

 ライラの体重はおよそ45キロなのだから、45キロにも満たない機材を持って逃げるのは容易だろう。


「買い出しが優先だな」


 フツバの中で答えが出る。

 タロンに貸して貰ったローブのフードを深く被り直して駆け出す。

 スルリと一般人では気付けないほど滑らかに人混みに入り込む。

 完全に気配を消す、、それは簡単な事、一切の構えを取らない事。

 体の全身の筋肉を緩ませ、あたかもそこにいるのが当たり前かのようにゆるりと歩き出す。

 

「いらっしゃい」


 出店の男がフツバに気さくに喋りかける。

 いつもなら違和感に感じる顔の陰りも今は何一つ気にならない。

 いや、気になれない。

 

「この小さいネジを十五とここの溶接用の鉄を四つくれ」


 タロンに頼まれた通りの店で頼まれた通りに買う。

 そのまま難なく買い出しは終わる、筈だった。

 最後の店を除いては。


「最後が、」


 地図を路地裏でひっそりと広げて最後の店の場所を確認する。

 

「チッ」


 小さく舌打ちをする。

 タロンに言われた事を思い出した。


(「この店の店主は厄介者でして。この人の機嫌を損なうと商品が売ってもらえなくなる。ここの物は必ず必要です。用心してください」)


(危険な匂いしかしねぇんだがな)


 フツバもより一層気合を入れ店に向かう。

 その店の入り口は階段になっており階段には草や苔が生い茂っている。

 一段づつ確かな足取りで降りてゆく。

 降りれば降りるほど臭いがキツくなっていく。

 扉の前に着き、片手を腰の剣に当て扉をゆっくりと開く。

 木の軋む音が鳴り渡る。

 部屋の中の空気は少し紫がかっており薄気味悪い。

 少し大きな通路を真ん中に挟む様な形で左右に本棚が並べられている。

 真ん中の通路の奥にはヨボヨボのおばさんが受付のカウンターの様な場所で嬉しそうにこちらを見ている。


「何だい、久しぶりの客はガキかい。冷やかしなら帰んな。あんたが欲しいような物は」


 女が久しぶりの客の風貌に残念そうにして裏に帰ろうとする。


「ネズミが入った、食べずに見逃せ」


 フツバがタロンに教わった合言葉を言う。

 これで本当に分かるのかと思ってはいたが女の足が止まったのが結果だろう。

 女がゆっくりとこちらを向く。


「なんだ、タロンのとこの奴かぃ」


 一瞬口角が上がる。


(何故笑った?変わり者だからか。確かにヨボヨボの見た目が魔女っぽくはあるがこの女は特別な力を持ってる訳じゃない。じゃあ、なんで)


 フツバが不可解な行動に頭を回す。


「これだろ、持ってきな。あんまり長いされちゃあ落ち着かないんだよ」


 女がカウンターの下から小さな小包を投げる。

 床に激しくぶつかり金属音が鳴る。

 何もないのが一番だ。

 どうやら女は裏に逃げるように戻ったらしい。

 フツバも小包に近づきそれを屈んで取ろうとしたその時。

 ギシッ、右から微かに木の軋む音。

 途端に左右の本棚が粉砕される。

 フツバは即座に反応して、小包を取ると同時に剣に手を持っていき、抜剣。

 右利きのフツバは左側に剣を携えている。

 その場合の最短は左。

 右手で抜いた剣で左側の斬撃を受け止める。

 右側を足の柔軟性を生かして回り蹴りで吹き飛ばす。


(気に入られる、入られない以前の問題じゃねぇか)

 

 フツバは僅かな隙も与えずに左の手に力を加えて斬撃を受け止めていた相手を弾き飛ばす。

 次の瞬間、四方八方から敵が現れる。

 フツバの真正面に立つ男。


「メルトっ!」

 

 フツバを強い眼差しで見つめる男がそこに立っていた。


「やはり、ここに来たか。お前の様な物が使える店などこんな所しか無いと張っておいて正解だったな」


 メルトがまんまと罠にハマったとばかりの態度を取る。

 その予想の過程は間違っている。

 ここ以外に使える店はあった。

 しかし結果的にここにいるのだから大金星だ。

 フツバが体勢を持ち直すよりも先にメルトを含めた全員が襲いかかる。

 相手の人数は目算では十人ほど、一斉に相手取るにはあまりに多い。

 取る手段は一つ、全方位攻撃。

 フツバは体と足を捻り勢いよく跳ね上がる。

 回転した体の勢いを利用して、地面を剣で一秒で数十回というペースで斬りつける。

 地面の砕けた石が全方位に飛び散る。

 手の平よりも小さい大きさの石だろうと飛ぶ速度によって弾丸のよつにもなり得る。

 隊士全員が攻撃態勢から守備の姿勢に移る。

 顔を腕で守るが石飛礫は体にめり込む。

 辛うじて鎧で胴体の大部分が防がれるが、それでも衝撃は届く。

 この攻撃で七割が行動不能に。


(軟弱なのはありがたいが、めんどくさい奴は残ってるか)


 空中から着地し正面に目を向ける。

 正面にはメルトと左右に二人の隊士が立っている。

 メルトが一歩前に出ている。

 考えるにメルトが飛んできた石飛礫を斬り落としたのだろう。 

 だからこそ、その近くにいた二人も怪我をしながらも辛うじて動けるというわけだ。

 

(倒せない訳じゃないが今はこれ以上騒ぎを起こす訳にはいかないか)

 

 フツバを警戒する三人に背を向け、全速力で出口に走る。


「くっ、待て!」


 メルトもフツバの後を追おうとする。


「隊長、階段の上に隊士も付けておいてありますので」


 メルトの背中に後ろの隊士が伝える。

 それに鬼気迫る面持ちでメルトが答える。


「そんな者は満身創痍にしていなくては意味が」


 最後まで言い切るより先にメルトが口を閉じ、出口の戸から一歩大きく後退する。

 扉が大きな音を立てて粉砕された。

 何が起きたのか、理解したのはメルトのみだ。


「!?」


 二人の隊士がその光景を見て唖然とする。

 上に配置していたはずの隊士二人が気絶した状態で投げられてきたのだ。


「こんな事が出来る…のか」


 一人がボソリと口にする。 

 予め配置された兵は準備は万端。

 下から上がってくる者は立地的に圧倒的に不利なはず。

 それを時間もほとんどかけずに気絶させたというのか。

 考えられなかった、常人には。


「まだだ!まだ逃げ切られてはいない。私はあいつを追うぞ!」


 メルトがそう告げて、床に伸びる二人を避ける様に飛び越えて階段を駆け上がり出て行った。

 その部屋の中には動けずにいる二人の鎧を着た一般人のみが残るだけだった。

読んで頂きありがとうございました。

やっぱり二話に分けちゃう形になりました。

次話は地下までの戻る場面を描こうかなと思います。

題名をなろうっぽいのに変えると読んでくれる人が増えるらしいけど、あんな感じの付けれる題材の話じゃないからな。

片隅に置いておく程度にしておきます。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ感想、アドバイス、なろうっぽい題名など色々お待ちしております。

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