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二章後編7話 桃色の恨み

どうもビタミンです。

この前の土日含めた一週間は毎日投稿を頑張ってみようと思います。

こうやって習慣付けて行く事で投稿ペースも上げれるかなと。

今回はタロンが主体となって話を進めて行きます。どんな事情があるのかお楽しみに。

 集まっていた群衆がそれぞれ散って行く。

 一人一人が慣れない状況に心を落ち着かせる為ひとまず解散となった。

 フツバ達はタロンの家へ行く事になった。


「すまないな。助けて貰ったのに風呂まで貸してもらっちゃって」


 フツバがタロンに礼を言う。

 フツバは椅子に座っており、タロンはお茶の準備をしている。

 部屋はお世辞にも綺麗とは言えないがそこからここでの生活の様子が窺える。

 タロンはそれに笑顔で返す。


「私もあなたが石を投げられている時に何も出来なかったわけですから。せめてもの罪滅ぼしぐらいさせて下さい」


 タロンが優しくお茶をフツバの前に置く。

 奥の風呂ではライラとアトラが風呂に入っている。

 ライラは無茶をしたアトラに怒っている様子だったので出てくるのにはもう少し時間がかかりそうだ。


「それにしてもあのアトラという子が本当に桃色髪だったとは、驚きですよ。あの歳であんなに強い子がいるなんて」


 タロンがアトラを称賛する。

 フツバからしてもあの体の張り方には流石に驚いた。

 確かに興奮している人達を説得するには想像を超える行動で冷やすしかないのかもしれない。

 その点、アトラは本当に桃色髪の心情を理解している。

 桃色髪が桃色髪以外の人を信じるという事の重大さは衝撃を与えたらしい。


「ここで生まれた疑問はめちゃくちゃあるんだが、何から話すかな」


 フツバが二人より先に話を聞いておこうとする。

 タロンも一口お茶を飲み、喉を潤す。


「そうですね。まずはここの住人以外の軽い説明でもしましょうか」


 タロンがフツバに提案する。

 フツバはその題材に興味を示す。


「それから聞かせてくれ」


 フツバがタロンにお茶を飲みながら説明を促す。

 

「えぇ、まずここはですねあの人達も言っていた通り桃色髪の避難所のような場所です。しかし桃色髪と言っても特別な人ばかりなのはフツバさんが見ての通りです」


 タロンが唇を噛みながら話す。

 

「あれは何なんだ一体?それぞれ体の一部が機械になってた。……まさかとは思うが」


 フツバが少し考え最低の想定を聞こうとする。


「そのまさかですよ。あの人達は全員実験の被験体として使われたんですよ。この国が推し進めている兵力の増強の為の一環として」


「……」


 フツバが黒い瞳を大きく見開く。

 最悪が肯定され表情が固まる。


「今の話は本当ですか?」


 髪がビショビショの状態で服だけを着て急いで出てきたアトラがそこにはいた。

 

「アンタ、ちゃんと髪拭かないと…って何この空気?」


 何も知らずに風呂から出てきたライラが髪を拭かないアトラのタオルを持ってきて、気まずさを悟る。


「本当ですよ。それがあなた達を助けた理由でもあります。お願いを聞いてくれますか?」


 何も知らないライラは置いといて話を進める。

 フツバもライラには後で伝える選択を取る。

 

「その前にもう一つだけ聞いておきたい」


 フツバが本題に入ろうとしているタロンを止め、話を切り出す。


「分かりました。何でも聞いてください」


「タロン、何でお前俺たちを味方だと思ってる?」


 フツバがタロンを鋭利な視線で突く。

 これはフツバが地下通路から気になっていた事だ。

 オトメ・フツバなんていう悪党を助ける時点で何か裏があると考えざるを得ない。

 

「そうですね。これは最近の事ですが、あなた達がドイル隊を半壊させたという記事を見たんです。あれを見た時、私は正直心の底から嬉しくなってしまいました」


 タロンは表情喜びから悲しみへと変え、こう続ける。


「皆さんが知っての通りアイツは整備士なんていう奴隷商のような事をしていました。顔を腫らして逃げてきた私達の仲間が言ってきました。…あの男に殴られ続けたと、二時間も、ほぼ延々と」


 腹が疼くのかアトラが腹を摩る。

 そんなアトラをライラはそっと肩に手を乗せ、安心させる。

 タロンは泣きそうな目で更に続ける。


「怒り狂いたかった。どういう権利があってそんな事をしてるのか。アイツの横っ面を一発、いや何十発も殴ってやりたかった。……でもそんな事出来なかった。外に出れば敵ばかりでろくに生きていけない。それに相手は騎士団突っ込んで勝てる見込みなんてゼロに等しい。そんな時」


「俺たちが記事に載っていたって訳か」


 フツバがタロンを落ち着いた声で冷静へと引き戻す。


「そうです。それも記事の内容は大きな被害はドイルのみ。あなた達もアイツの悪事を知っているとしか思えなかった。あなた達がもし悪人だったとしても恩返しなので何にも問題ありませんでした。実際は、あなた達は桃色髪をも助けてくれた良い面しかない方達でした」

 

 タロンが話に一段落をつけ、フツバの黒い瞳をタロンの灰色の瞳で改めて見つめる。


「ですので、あなたのような強い方にお願いです。この都市を救って下さい!」


 タロンが頭を深々と下げる。

 フツバがアトラの方を見る。

 アトラもそれに気付き頷く。

 フツバも頷き返し、まだ頭を下げているタロンを見る。


「分かった、話を聞こう。めんどくさい奴もチラホラ見かけるがアンタ達を見捨てる理由にはならねぇからな」


 フツバが八重歯を見せてニヤッと笑う。

 タロンが目に涙を浮かべて笑顔で顔を上げる。

 アトラとライラも過酷な未来を選んだのにも関わらず嬉しそうにこちらを見ていた。

読んで頂きありがとうございました。

今回はフツバ達のやった事が誰かの心の救いになっている事が分かった回でした。

ドイルに散々やってフツバというツケが回ってきたという事ですね。

次話はお願いについて話を進めて行きます。

それではまた次話でお会いしましょう。

良ければ感想やアドバイスなどお願いします

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