二章後編6話 泥水も滴る醜い女
どうも、ビタミンです。
今回はアトラの決死の説得回です。どうやって説得するのかお楽しみ下さい。
今更って感じかもしれないですが私の文章で読みにくい点などありませんかね?
是非とも教えて頂きたいです。それではお楽しみ下さい。
大きく息を吸い肺を膨らませる。
「ちょっと待ったぁーーーーーー‼︎‼︎」
あまりの声量に投石の手が止まる。
フツバも間近で大声を出され、力を入れていた背中の筋肉も緩む。
真下にいたライラも急に発せられた大声に驚く。
「あんたら、いつまでフツバさんに石投げてんだ!桃髪なんだから石投げられ痛みだって分かってんでしょぉ!」
アトラがフツバの脇をスルリと抜け、前に出ながら大声で訴える。
周囲の者達はその発言に核心を突かれ心を痛ませる。
「誰が、、誰が分かったような事言ってんだよ!そういうのはな俺たちが言うのであってお前達のように黒髪の加害者には分かんねぇんだよ!」
石を最初に投げ出した男もアトラにつられて更に大声を出して怒鳴る。
アトラはそれを聞きその言葉を待っていたとばかりに息を更に大きく吸い
「私も桃色髪なんだよーーー!!」
「………」
男は動揺した面持ちで固まっている。
今彼の中で情報処理が行われているのだろう。
「何を言ってるんだ⁉︎自分の髪を見てみろよ!ご立派に黒い髪が生えてんじゃねぇか!」
男が捻り出したような声で指摘する。
アトラは下を向き、少し悩む。
「分かりましたよ、こうするしかないんですね……」
アトラが小さくフツバにしか聞こえない声で呟く。
アトラが何かを見つけて歩きだす。
「ど、何処に行くだよ⁉︎」
男はアトラにまた怒鳴り、石を投げる。
しかし、その投げる力は弱くアトラを止める事はできない。
当たったって幼子が泣くかも分からない程だ。
アトラはどんどん歩いて行く。
周囲の人達もアトラに恐れて行く道を開ける。
アトラがピタリと止まる。
「アイツ、まさか⁉︎」
フツバが立ち止まった場所を見て気付く。
アトラの足元には汚い泥水溜まりがあった。
「ハァ、」
アトラが小さく息をはく。
するとアトラの表情は一変。
覚悟を決めて、膝を突き泥水に頭を突っ込んだ。
「何を、してるんだ?あの子は…」
フツバを含めた周りの人が騒然としている。
「あの少女を止めなくていいのか?」
フツバにタロンが喋りかける。
タロンもアトラの奇行に驚いている様子だ。
「止めさせる?アンタ達なら分かるでしょ!桃髪として生きてきたなら‼︎あんな地獄な人生を自分で終わらせず死に物狂いで生きてきたなら!それならこんなのされるのも見て見ぬふりをするのも慣れてるでしょ⁉︎」
その質問の回答はアトラが答える。
全員がその答えを否定できずただ見ているだけだ。
すると
「おい、見ろよ。髪の色が落ちってないか?」
一人の男がアトラの髪を指して言う。
アトラの髪の色は言われた通り黒髪が落ちてきていた。
そこからは桃色が見え出していた。
「本当にあの子は⁉︎」
周囲の人は信じられない光景に目を疑う。
桃髪が黒髪に化けるなんていう夢のような事があってはいけない。
「これで分かったでしょ!私は本当に桃髪なのよ!あなた達と一緒で、酷く醜い人生を歩んできた。殴られ、蹴られ、差別され、石だって、泥水だって投げられたし、被らされた!」
アトラが頭を上げ必死に訴える。
頭からは泥水が垂れ流れていてビショビショだ。
その一連の流れを聞くだけで何となく理解した梯子のライラが無理矢理扉を開け出す。
「出てくんなって言ってんだろ」
フツバがこじ開けられそうになった扉を再び閉めようとする。
「お願い!私の目で見させて!あの子とは約束があるの」
ライラが真剣な眼差しでフツバに懇願する。
フツバもその表情を見て、ライラとアトラの関係を理解する。
(流石に見せないのは姫さんの気持ちを其方退けにし過ぎか)
フツバもライラの気持ちに同情して蓋を開ける。
「ありがとう、ここから見とくだけだから」
ライラは梯子から這い上がりアトラの泥水で濡れた様子を見る。
「あの子、あんなに体を張ってまで」
ライラが想定していた以上に酷い光景に驚きを隠せない。
「でもね、みんなには信じれないかもしれない。けど私はそんな酷い人生の中にも信じられる人ができたの。それがあの人達。私を初めて肯定してくれた。笑って受け入れてくれた……あの人達を一度でいいから信じて見てくれない?」
最後のアトラの優しい心の底からの呼びかけに全員の心が揺らぐ。
今までの経験談を聞いていてアトラが本物の桃色髪だと言う事は分かる。
だからこそ信じられない。
自分達を理解してくれる人がいるという事実が信じれない。
「なぁ、アンタ。今の話は本当か?」
最初にタロンに喋りかけた男が重い口を開き、聞いてくる。
「本当だよ。別にピンク…じゃなくて桃色だろうと関係ない。絶対に虐めたり、差別したりしない。だからここの、この都市の現状を教えてくれないか。きっと良くして見せるから」
フツバが見えた一筋の希望を掴みにかかる。
目の前の男、石を投げ出した男にも、タロンにも、その他全員の目にも微かな光が宿った瞬間、この国はまだやり直せるとライラは確信した。
読んで頂きありがとうございました。
アトラの思いは伝わり微かな希望を抱いてくれました。
次話ではここの説明が中心になると思います。
何故体の一部が機械になっている人がいるのか?
この都市の黒い部分に触れる事になります。
それではまた次話でお会いしましょう。
良ければ感想やアドバイスお願いします。