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二章後編5話 逃げ場

どうもビタミンです。

逃げ出した所からのスタートです。

逃げた先には何があるのか。

前書きはそんなに書くこともないので、それではお読みください


「ここからどうしたらいい?」


 少し息を切らしながらフツバが黒いローブの男に聞く。

 いかにも見た目は怪しいが何か危害を加える様子はない。

 賭けに勝ったようだ。

 男はゴミだまりに置いてあった一つの木箱をどける。

 否、木箱と穴の蓋を溶接している隠し穴の扉だった。


「ここに入れ。連れて行きたい場所がある」


 男が三人に命令する。

 それに従い二人を即下ろして先に入らせる。

 中には梯子がついており、降りれるようになっている。

 入ったのを確認し、周りに警戒しながらフツバもそこに入る。

 中は薄暗い通り道になっており、入り組んでいて有識者しか正規ルートを辿れないだろう。


「下水道じゃなかったのか」


 フツバはてっきり下水道に繋がっているのかと思っていたが鼻がおかしくなる様な匂いはしてこない。


「ここは俺たちが作った通路だ。下水道を応用しているがな」


 フツバは主語が少し気になったが聞き流し男に話を委ねる。


「向こうに着けば分かると思うが俺たちはある一族でな。あんたらに頼みたいことがあるんだ。特に腕の立つあんたにな」


 フツバの方に一瞬目をやり、すぐに歩き出す。

 フツバ達も流石に訝しむ。

 こんな者たちに頼む事など違法な事以外に見当がつかない。

 先を歩くアトラやライラも少し心配そうにしている。

 二人と目が合い、フツバは「俺がついてる」と言わんばかりに頷き安心させる。


「さっ、着いたぞ。見るがいい、この地獄をな」


 男の前に現れた降りた時と同じ種類の梯子を登り出す。

 二人がまた不安そうな眼差しでこちらを見る。

 フツバが気合を入れた目付きに切り替え、二人の前に行く。

 お互いに無言だが意思疎通は出来ているらしい。

 上で男が蓋を開けて光が差し込む。

 眩しさに目を細めながら梯子を上がる。

 

 そこには薄汚い小さな町が広がっていた。

 そして出口を囲むように周りに人が武器を持ち待機していた。


「おい、待てよ。なんだこの人達は⁉︎」


 フツバが少し見渡し周りに広がる異様な点に気付き男に問う。

 二人はまだ上がれずその発言をただ聞いているだけだった。


「何で体の一部が機械になってる⁉︎」


 その発言を聞き急いでアトラが出口から飛び出す。

 そこには聞いた通り、体の一部が機械になっている人が一瞥した眼差しで見つめてくる。

 そこの中心に立つ代表のような男がこちらに近寄ってくる。


「おい、タロンの坊主。何でこんな奴らを連れてきた⁉︎ここは桃髪のみが集う場所だ。もしコイツらがアイツらの手先だったらどうするつもりだ⁉︎また我々をあんな目に…」


 代表の男が先導してくれた男、タロンを怒鳴りつける。

 その発言で表に出ているフツバとアトラはもう一つの違和感に気付かされる。


「全員帽子とかターバンを巻いてる。じゃあ、本当に⁉︎」


 フツバとアトラが同時にタロンの方を見る。

 タロンがゆっくりとフードをはずす。

 タロンは丸坊主になっており、髪を確認する事は出来ない。

 

「すまない。私はここでも外に出るのが中心の仕事だから髪を剃るしかないんだ。私では確認できないだろうがここにいる者、20人全員が桃髪だ」


 二人がまた周りを見渡す。

 全員が目を合わせず恐怖している。

 自分たちが何をされるのかと怯えている。


「安心して下さい。私たちは何もしません」


 アトラが心配を取り除くように優しく呼びかける。

 三人からしたら当たり前の事だが今はアトラも黒髪、アトラがこうなってしまう事は一番知っている。

 桃髪が桃髪以外の髪を信じる事などほぼ不可能なのだと。


「ちょっとー、私も出してよ!」


 出口付近はアトラが立っていて出ることが出来ない。

 それを聞き、忘れてたライラの事をアトラがすぐにどいてライラを出そうとする。

 しかし


「待て!まだ開けるな安全が確保されてからだ」


 フツバがアトラを止める。

 周りがまだ警戒態勢の間は安易にライラを出すことはできない。


「悪いが、ここから出て行ってくれ!」


 代表の男が静かな怒りを含めてこちらに更に近づいてくる。

 警戒されるのは分かるがここまでかとフツバも頭を掻く。

 

「そうだよ。ここは桃色髪の逃げ場なんであって、犯罪者の逃げ場じゃないんだよ!」


 一人の男が声をあげる。

 彼の左目は機械にされており感情が伝わりづらい。

 フツバ達にはここがただの避難所だとは思えない光景だ。

 放置しておくのはフツバとライラの旅の目的に反することになる。


「そうだ、出てけよ!俺たちの居場所はここしかないんだよ!お前らに与える場所なんてどこにもない!」


 もう一人の男が先程の男につられて怒声をあげる。

 その男は怒るだけにとどまらず、床にあった石を拾いこちらに投げつける。

 その石はアトラの方に飛ぶ。

 それに気付いたフツバがアトラを被さるように庇い、背中に石が勢いよく当たる。

 

「大丈夫ですか⁉︎わざわざ庇わなくとも」


 アトラが庇ったフツバを心配そうに見つめる。


「全然大丈夫だ。気にすんな。こんな事は仕方ない。お前が一番分かってるだろ……どうしたもんかな」


 フツバがアトラに少し笑いかけ、説得法に悩みこむ。

 投石は止まらずフツバに当たり続ける。

 一方的な攻撃にフツバは肉体的に耐えることはできるが一つ一つに悲痛な思いが宿っており痛みさえ感じる。


「フツバさん、ここは私に任してはくれませんか?」


 アトラがフツバに真摯な眼差しで見つめる。

 フツバもその視線に気付き、合わせる。

 このままではこの異常な風景に何もできないままになってしまう。

 それだけは避けたいがフツバには周囲の人を落ち着かせる策がない。


「任せるしかないのを許してくれよ。頼んだ」

 

 自分とは異なる環境の者の説得は大きな壁がある事を改めて理解し、苦渋を飲みながらもアトラに任せる。

 フツバがアトラの肩に手を乗せて力を込める。

 手を伝いアトラに思いが伝わる。

 アトラにはそれだけで腹の底から無限の力が湧き上がってくるのだった。


読んで頂きありがとうございました。

今回は書くのが何だか難しかったですね。

アトラが黒髪になっているので、向こうの人達は黒髪と信じ切っています。

アトラがどうやって説得するのかお楽しみに。

もし、良ければ感想やアドバイス頂けると嬉しいです。

それでは次話でお会いしましょう。

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