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二章中編5話 世界一長い変態

どうもビタミンです。

えっ?中編最後って言ってたのに終わってないじゃないかというお話ですか?

それは内容見れば分かりますが、書きながら「まだ中編で良いなこれ。」となった訳です。

最初から構成は考えていますが、話数まで考えてなかったのでこのくらいは許して頂けるとありがたいです。

それでは今回の『中編』本当の最終回お読み下さい。


「よく機嫌直してくれたな」


 フツバがアトラのテンションが戻っている事に感嘆する。


「まぁね、私にかかればこんなもんよ」


 ライラが胸を張って答える。

 後ろからアトラがこう付け足す。


「と言っても夜回りは私がついて行くという条件付きになりましたがね」


 その発言を聞いてため息を吐く。


「そんな事だろうとは思ったけども。せめて自分を条件に出せよ」


 フツバが苦笑いしているライラに注意する。

 その反応を見てアトラが口を挟む。


「何ですか⁉︎私がいると迷惑ですか?」


 語気は荒くとてもイエスと言える雰囲気ではない。

 顔が作り笑いでより不気味だ。

 言ってみたいなんていう好奇心に任したらきっと怪我の一つでは済まない気がする。


「別に迷惑じゃあねぇけど、次の日がヤバいことになるぞ。あと、毎日会ってるわけじゃないぞ。昨日だって数カ月ぶりだったしな」


 連れて行く事には何ら問題ないがそれよりも質問責めされる方が苦痛だろう。


「そうだったんですね。それなら早く言ってくださいよ!」


 アトラの調子がいつも通りに戻る。

 ただ一つ顔の笑顔が消えない。


「それでもまだ…」


「ついて行きますよ!」


 まるでその質問が来ると予期していたように食い気味で答えてくる。

 フツバが嫌そうな表情を殺して、何となく首を縦に振っておく。

 特に考えはないが体が勝手に首を振る。

 その時、これが本能なのだとフツバは理解した。


「ねぇ、アトラ。あの質問今しちゃえば?」


 ライラが嬉しそうに横から入って来てアトラに提案する。


「あれを今ですか⁉︎」


「そうよ。今なら自然でしょ」


 アトラの表情が少女に戻る。

 今度はすごく照れている様子だ。

 一体質問とは何かフツバには見当もつかない。

 二人の作戦会議が終わった所でライラが近づいて来る。


「あんた、今度は失敗しないでよね」

 

 と前科ありのフツバに警告してくる。

 フツバも心を決めて、目を逸らしてくるアトラの方を見つめる。

 アトラはそれに気付いて顔がドンドン赤くなる。

 今にも、熱って倒れてしまいそうだ。


「それでは、聞きます」

 

 改まった態度に思わず息を飲む。

 アトラが大きく息を吸い、決死の質問を言い放つ。


「好、好きな…」


 アトラがモゴモゴと呟く。

 しかし声が小さすぎてフツバには届かない。


「何て言ったんだ?」


 奥でライラがまた怒ったような表情をしているがこれに限っては本気で聞こえなかったのだから仕方ない。


「す、好きな⁉︎」


 大きな声で改める。


「好きな、何?」


 聞いているライラがムカつく程に鈍感な男だと再度思う。

 察しが良いときと悪い時の差が月と鼈だ。

 それこそまるでアトラのようだ。


「好きな機械の部品の名前は何ですか⁉︎」


 後ろで心の中でツッコミを入れていたライラの耳に驚きの発言が聞こえた。

 ライラとフツバは想定の斜め上の言葉に眉を顰める。


「そっちのじゃないに決まってるでしょ‼︎」


 ライラが怒鳴り散らす。

 相当理想の質問に期待していたのだろう。

 珍しくアトラがライラに怒られている。

 フツバもその様子を見て一安心する。

 この二人は今後も二人きりになる事が多くなると推測されるので仲がいいに越した事はない。

 説教が一通り終わりのアトラが近づいて来る。

 そちらを見やるとアトラは何も言わずただこちらを見つめている。

 静寂が続く。


「な、何?」


 先に声を出したのはフツバだった。

 何秒も続いた静まり返った空気が耐えれなくたってしまった。


「何と言われましても、会話の流れ的にはフツバさんの番なのですが?」


 アトラが不思議そうに首を傾げる。


「ん?なるほど。さっきの質問に答えろと?」


「さっきの質問って機械の部品の事何てフツバが答えれるはずが…」


 ライラが早々に返答は返ってこないと話を切り上げようとする。


「別に好きって訳じゃないけど、タールカルセル・ターニャスタルフ・トルスティン・カーラ・ストーロ製のロールタイタン用ネジ、なら知ってるけど」


 ライラには訳の分からない呪文が突然唱えられる。

 その言葉にアトラが光よりも早く飛びつく。


「な!何でそれを知ってるんですか⁉︎」


 目をギラギラと輝かせている。

 それはフツバを話す時の目と機械について話す時の目のどちらともが混じったアトラの最高潮のテンションと言って良いだろう。


「何でって、一応この世界では一番長い単語だからなんとなくで覚えた」


 フツバが当たり前のように呟く。

 頭がついていかないライラが何とかこの頭のおかしい会話に入る。


「あんたなんとなくってそんなんで覚えれる文字数じゃないでしょ。えっと、何て言ってたっけ。えっと」


「タールカルセル・ターニャスタルフ・トルスティン・カーラ・ストーロ製のロールタイタン用ネジ、の39字です。名前の通り機械の部品名です。そんな事も知っているとは流石ですね、フツバさんは」


 アトラが好意的な眼差しで見つめる。

 その眩さに寝不足気味のフツバは目を眩ませ少し後ずさる。

 そんな他愛もない話が更に続いた。

 フツバが本題に入れるのはそのに二十分後になる。


「はいはい、一旦俺が単語を覚える速度が変態的か変態的じゃないかの話は置いとけ」


 フツバがライラとアトラのクソ程どうでも良い話を止める。


「食料以外に何かまだあるの?」


 ライラがアトラの頬を摘んでいた手を離す。

 それに伴いアトラも同じように手を離す。

 いつの間にか二人は軽い喧嘩の様なというよりもジャレ合いに近い暴力を振るっていたらしく頬をが真っ赤だが、お互い全く痛くなさそうだ。


「姫さんはこれをアトラに塗ってやれ」


 フツバから小瓶の様な物が投げ渡される。


「何ですか、これは?中に黒い粉末の様な物が入っていますね」


 アトラが中身をじっくりと見つめる。

 しかし二人の知識では答えが見つからない。


「それはな俺の徹夜の成果だから大事に使えよ。それは染髪、つまりは髪を染めれる粉だ」


「髪を染めれるのですか!」


 あまりの衝撃的な発言にアトラが驚く。


「何だか知らんが作ってくれたんだとよ。それを塗ると髪が黒くなるらしい。それに洗えば取れるとのことだ」


 またアトラが泣きそうな顔に表情が崩れる。

 二人が焦って何とか止めようとする。

 しかし、アトラは泣かずに何とか気持ちを押さえ込んだ。


「ど、どうやってそんな物を作ったんです?そんな物聞いた事もありません」


 声は少し震えているが今までと殆ど変わらぬ語調で喋れているのはこの一夜での成長だろう。


「聞いた事がないのも仕方ない。だってこれは俺たちの協力者以外作らないからな」


 フツバの発言を聞き流そうとしたがやはりライラには聞き流せなかった。


「その人しか作れない物なんかが存在するの?」


 ライラは最早否定して欲しいとまで思っている。

 そんな人物がいてはお姫様ごときの肩書きでは役者足らずだ。


「誰でも作れるっちゃ作れるけど、そんな発想が思いつくのはそいつだけだろうな」


 質問に否定で返って来た事にライラは思わず安堵する。


「あ、でもそいつしか作れない奴も、使えない奴もあるぞ」


 フツバは平然とそう呟く。

 今までそういった類の発言に口を挟まず飲み込んでいたライラも口を挟んでしまう。


「その人は一体何者何ですか?というかフツバさんあなたも一体…」


 ライラはフツバのあまりの人脈の広さにフツバが物凄く偉い身分なのではと疑念を抱いてしまう。


「姫さんにも一度は言ったが俺は凄くないよ。周りの人が凄いだけ。そこら辺の話も進みながらにしよう。それより髪にそれ塗って準備だ!準備!」


 二人が同時に溜息を吐き、準備にかかる。

 どうやら二人はフツバについてまだまだ知らない事だらけらしい。

 ガーリンの事を知っているだけで天狗になっていたライラも鼻を折られた気分だ。

 

三人の新たな旅が始まった。


どうも読んで頂きありがとうございました。

今回の題名はまったくもって意味がないただのお遊び題名ですねw

題名をつけるときに思いついてしまいつい採用してしまいました。時々こういう意味のないことをするとは思いますが暖かな目で見てくださると幸いです。

中編も今回で本当に終わりです。徹夜のお土産も分かり、今度から後半に入ります。謎は考えるだけでまだまだ多いですがそこを楽しんで頂けると嬉しいです。

それではまた次話でお会いしましょう。

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