二章中編3話 不器用な対決
どうも作者のビタミンです。
前に書いた事があると思いますが題名の追加の件ですが付けたす事に決まりました。
簡単に紹介するみたいな一文を付け足す感じでいきます。
謎が多い作品ですがお許し下さい。
それでは今回の話はあの二人にスポットを当てた話です。
「フツバさんは大丈夫でしょうか?」
アトラが心配そうにフツバが出ていった方向を見ながら呟く。
「大丈夫よ。アイツは知っての通り結構強いから。アイツが負ける相手が出てきた瞬間私たちも終わりよ」
ライラがアトラを落ち着かせようとする。
「そうですね…」
アトラが喉にまだ込み上がる物を無理矢理押し込めるように言葉尻を詰まらせる。
「何か聞きたい事があるみたいだけど?」
ライラが気を利かせて喋るように促す。
「聞きたい事なら沢山ありますよ。何故追われているのか、誕生日はいつか、何の食べ物が好きなのか、好きな色に、尊敬する人、好きな機械の部品の名前、兄弟はいるのか、好きな日にちは、魚派か肉派か、」
アトラが猛烈な勢いで聞きたい事を口走ってゆく。
「ちょ、やめて、やめて。もう分かったから」
ライラが感情ダダ漏れなアトラを何とか止める。
羅列している時の表情は不気味ではあるが可愛い方がライラの中で勝ってしまい止まるのが遅れたのはライラしか分からない。
「いえ、まだ一番大切な好きな人がいるのかというのもあります!」
アトラは両手をグッと握りしめて力強く断言してくる。
ライラは多分アトラは人に感情を読まれる事に慣れていない事を理解する。
言っていて恥ずかしくないのかというほどに。
「一つだけ言わせて貰うけど途中の好きな部品は答えれないと思うわよ」
半ば呆れた口調で話す。
アトラは首を傾げて、全く理解出来てない様子だ。
それを見てライラは手を顔に当てる。
アトラは日常会話の場合は頭の回転が悪くなり、その代わりと言ってはなんだが可愛さが増すらしい。
ライラが落ち着き手を元に戻しアトラの顔を見る。
するとまた別の表情に変化している。
情緒不安定なのもいい所だ。
目を細めてこっちをみて何かの犯人でも見ている様だ。
「何?何か顔についてる?」
ライラが思わず聞く。
「いえ、何もついてません。強いて言うなら聞きたい事がついてます」
この時ライラも深夜まで付き合わされるのを覚悟する。
「今度は何?」
「あなたはフツバさんとどう言う関係なんですか?」
アトラはフツバを心配している時とは少し違う顔付きで質問する。
「私とフツバ?あなたも知っての通り誘拐犯とその被害者だけど」
ライラが冗談めかして答える。
その返答に頬を膨らませて怒りを暗示してきた後すぐに付け加える。
「違いますよ!そういう事じゃなくて、その…付き合ってたらはしないんですよ…ね?」
アトラが目を逸らしながら頬を染める。
それを見て思わず笑ってしまう。
ライラの可愛さ限界メーターが少し上がってくる。
辛うじて何とかまともに答える。
「大丈夫、あなたが思う様に付き合ってるなんて言う事実はない。ただの加害者と被害者よ。安心していいわ」
口にした瞬間アトラが嬉しそうに笑いながらこっちを見てくる。
その時、限界を迎えた。
顔を両手で覆い、足をバタつかせる。
覆っているので分からないがきっとアトラは不思議な顔でその様子を見ていると推測出来るのものもまた可愛い。
「分かりました。それが聞けたなら私は充分です。ライラさんは聞きたい事などありませんか?」
アトラがお返しのつもりで聞く。
「それじゃあね」
先程までとは打って変わり真剣なムードになる。
アトラもその空気を読み、胸の高鳴りを静める。
なんていう下らない事をやっている場合ではない事にすぐに気づいた。
目の前でライラが涙から溢していたのだから。
「どう、したんですか?私何か不味いことをしてしまいましたか?」
アトラが思わず動揺してしまう。
「ごめんね。急に泣いちゃって。本当にごめん。あなたは悪くないの私が馬鹿すぎてムカついてて」
ライラの口調には悔しさが多量に含まれていた。
どんどん涙が溢れていく。
「何にをそんなに泣く事があったんですか?」
アトラか心配そうに聞く。
「私はね、知っての通り王族の一人なの。一応はこの国の頂点でもある」
ライラの声が震えている。
「はい、知ってます」
アトラは恩返しの一環として優しく応える。
「なのに、私は、私は、何にも知らなかった。この国の事を。フツバが教えてくれるまで知っていると思い込んでいた事は全部嘘だった。国は平和で何の心配事もないと思ってた」
アトラがつい手を繋いでしまう程に崩れてしまっている。
そして続ける。
「でも、外に出てあなたと出会って更に許せなくなった。知っていた気になっていた事が。あなたみたいに可愛く純粋に笑える子が髪の毛一つで差別されてる国だったなんて。全く知らなかった。だからあなたが笑っている姿を私が見て良いのか分からないのよ」
「そんな事大丈夫に決まっ…」
アトラが皮肉にもお得意の否定に入ろうとする。
しかし、
「大丈夫じゃないわよ。蹴られもしてたのよあなたは。私が一分一秒でも早く知っていればやめさせられたかもしれないのに、その時私は意味もない勉強何かしてたのよ。許されて言い訳ないでしょ!」
ライラがアトラの今までされてきた事を聞いて溜まっていたものが全て爆発する。
アトラもその時理解する。
あの時慰めてくれた人は決して強いから慰めてくれたのではなく、強くなろうとしているからこそ慰めてくれるのだという事に。
こんなにも自分に怒れる人間がいる事に驚きさえ覚える。
「それではライラさん。こんな対決をしませんか?」
落ち着いた声で慰める様にアトラが提案する。
「対決ってどんな?」
「簡単ですよ。私はあなたの事に怒ってもいなければ、恨んでもいない。だからこそ対決して欲しいんです。私はきっといつか自分が好きだと言える人になってみせます。そしたら私の勝ち。ライラさんは私が自分の事を好きになる前に王族にまた返り咲いて、私たち桃髪を平等な扱いにして下さい。そしたらあなたの勝ちです」
ライラが泣きながらも耐えれず少し笑ってしまう。
「なっ!どうして笑うんですか⁉︎」
アトラがせっかくの必死の慰めを笑われて怒る。
「いや、ごめん。だってそれ勝利条件同じじゃない。あなただって平等な世界以外で自分の事好きになんてなれるようなガラじゃないでしょ?」
泣き笑いながら指摘する。
「まぁ、そうですね。とにかく対決です。私は絶対負けませんから」
アトラはやる気に満ち溢れた表情だ。
ライラも釣られてやる気になってしまう。
不器用な慰め方ではあったが今のライラにはそんな慰め方が一番な特効薬でもあった。
ライラは絶対に平等な社会にして見せると心に誓った。
その夜森には二人の笑い声が響いた。
どうも読んで頂きありがとうございました。
今回は女子二人の夜話しの内容でした。
お互いに思う事を吐き出せた二人は一瞬の間に固い絆で結ばれた様なものです。
この話はあえて()で心の声は描かない様にしました。
兎にも角にもアトラが可愛いという事は今回で分かっていただけたでしょう。可愛さの表現って難しいですね。
それでは次話でお会いしましょう。