二章前編11話 可食部分
6日ぶりの投稿ですみません。
ゆっくりやっていくつもりではありますがもうちょっと早めに投稿出来るようにします。
今回は前回出会えたアンとの決着です!少し老いたアンはどれほど戦えるのか?
アンがフツバ目掛けて刺突を放つ。
それをフツバが見切り、ひらりと避ける。
即座にアンが剣の勢いを変えフツバが避けた方向に振る。
しかしフツバはもうそこにはいない。
身を翻し、アンが認識していた位置より更に下へと潜り込んでいる。
アンの腹に一発の拳打が打ち込まれる。
腹に激痛がはしり、後ろに吹き飛ぶ。
尻餅をつくのを体の全身の筋力を使い耐え凌ぐ。
そしてその行動にアンが激怒する。
「何故、何故切らなかった⁉︎今の間合いならばなら貴様は切れた筈だ!」
相手の手加減に気付き怒号をあげる。
「俺はお前を殺さないよ」
フツバが息一つあげずに答える。
フツバは至って真剣な眼差しだ。
無礼などする事が考えられぬ程に真っ直ぐアンを見つめている。
「本気と言ったのは貴様のはずだ。殺さないだと?ふざけるな!」
アンにはフツバの考えが全くもって理解出来ない。
真剣な眼差しが更にその感情を理解から遠ざける。
「ふざけてない。お前のように有能な奴は生きてて貰わないとこっちが後に困る…事になる事を願う」
フツバの異様な発言に疑問は絶えない。
「何を言っているのかが本気で分からん」
「分からなくていい、今は。いずれ時が来た時土下座して謝ってくれればそれで満足だ。より分からない発言をすると、腐った食べ物の中にも食べれる部分があるって事だ」
あまりの意味が分からなさに困惑し、将来的に土下座をさせる予定のフツバに不快感を示す。
その様子を見てフツバは少し嬉しそうにした後
「さっ、お喋りはここまでだ。かかってこい!これが最後と思え」
フツバが気持ちを切り替えてまた少し張り付いた雰囲気に戻る。
ライラはただそれを傍観することしか出来ない。
「ぬぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
アンが猪のようにフツバに突進していく。
大きく振りかぶり強烈な一撃がフツバの剣とぶつかり合い、剣戟の声が当たり一帯に鳴る。
フツバがアンの剣を弾き返す。
もう一撃フツバの僅かに空いた隙を突こうとする。
それをフツバは地面に手をつき常人では考えられない速度体の逸らし方をする。
(取った!)
フツバは完全にアンの間合いに入ってしまう。
アンがフツバ目掛けて剣を振り下ろす。
その剣はフツバの剣を持っていた筈の手で受け止められる。
勢いが相殺しきれておらずフツバの手から少し出血している。
剣を捨て素手でアンの剣を止めたという事実をアンが認識した時にはもう決着はついてしまっていた。
「『結合せよ!分解せよ!』」
フツバは手からの出血に一切の動揺を見せずに詠唱を口にする。
アンの真下に人一人分の穴が空く。
「ク、クソッ!いつの間に⁉︎」
「さっきの間にだ」
穴から見上げる形でアンはフツバに聞く。
その質問にフツバは自分で考えろと言わんばかりに適当に返答する。
フツバは直ぐに穴からは見えなくなってしまった。
アンは自分が完敗した事を自覚し、遠ざかるフツバを止めようとはしない。
アンは負けた上に生かされたのだ。
アンとの決着がついてすぐ、フツバはライラを抱えて大テントに向かって走り出した。
「流石ね、アンタ!やっぱり強い!」
ライラがフツバに称賛の声を送る。
「当たり前だろ。だけどあの人はまだ強くなれるし、精神面では充分同格またはそれ以上なレベルの人だ」
負けず嫌いのフツバがアンの事を褒める。
だがフツバの本番はここからだ。
「アイツの事より隊長だぞ、次は」
大テントとの距離は約20mほどだ。
会話からは三星だの云々間何が少し聞こえる。
時間的にはもう向かって来ててもおかしくないのにも関わらずまだ説明している。
隊士は背を向けて喋っているのでフツバが近づいている事に気づかない。
フツバが隊士よりも身長が小さいので隊長からも見えていない。
フツバはそのチャンスを逃さない。
「姫さん、初っ端からぶちかますからアトラの事は頼んだ」
「ぶ、ぶちかますって…はぁ、了解」
いやいやながらに受け入れる。
返事をした瞬間ライラを置きフツバが剣を抜く。
「竹のニ『流転突』」
今までにライラに聞き覚えのない詠唱が唱えられる。
フツバが左手の掌を広げ肩の高さまで上げ前に出し、右手の剣を地面と平行にし顔の横ぐらいまで引く。
体はやや後ろに重心を置いている。
集中した目付き、その技は一気に放たれる。
フツバが8m程の距離を一瞬にして詰め猛烈な勢いで突きを放つ。
剣は風を貫くような勢いで突き進む。
剣は隊士の顔の真横を通り中にいる男だけにぶち当てる。
男の鎧と剣がぶつかり合い轟音が周りに鳴り響いた。
男が後ろに吹き飛びテントが崩れた。
ライラはその圧巻の威力に驚愕し、呼吸をする事を忘れていた。
読んで頂きありがとうございました。
今回は戦いが中心の話となりました。
アンはやはり負けてしまいましたが小隊の副隊長にしてはフツバに対して充分健闘した方と言えるでしょう。
最後にフツバが謎の詠唱らしき物をして強烈な突きを隊長一点狙いで放ちました。
次回からは隊長とのバトルとなります。楽しめるように推敲して行きますのでよろしくお願いします。