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二章前編6話 整備士

「なーんで二部屋だけ借りてんだよーーー!お前ら⁉︎」


 フツバが二部屋の扉の間で二人に怒鳴る。

 片方にアトラ、もう片方にライラが扉の前に立っている。


「私は三部屋が良いって言ったのよ。そしたら二部屋しか借りれないって宿の人が言ってたのよ」


 ライラが宿の人との会話の内容を説明する。


「節約ですよ!節約!一緒に泊まっても問題ないお二人なら同じ部屋の方が節約になっていいと考えましょう」


 アトラが突拍子のない事を言い出す。


「ん?待て。今の言い方だとアトラお前が一人部屋なのかよ!男女に分ける感じなんかと思ったら、付き人のお前が一人部屋になるの⁉︎」


 フツバがさっきの反省が嘘のような傲慢さに驚きを隠せない。


「そうよアトラ。いくらフツバが我がまま聞いてくれてるからって流石に自由すぎよ」


 ライラが珍しくアトラを注意する。


「お二人の怒る理由は分かりました。ですが何と、何とですよ、お金が手に入るかもしれないんですよ!もう付き人は終わりかもしれません」


 とても嬉しそうな顔付きだ。


「どっから金なんて入るんだよ?株でもやってんの?」


 さっきまで一文無しだった人の発言とは思えない発言にフツバが疑問を投げかける。


「それはですね、さっき町に貼ってあったんですよ『女性整備士で技術が有れば即賞金!騎士団に入る入らないは自由』と書いてあったんですよ。これは私の技術力を見せるチャンスではありませんか⁉︎それも、合格圏内ならば15枚の金貨を貰えるとの事ですよ」

 

 アトラが騎士団の応募ポスターを片手に見せてくる。

 それを見てフツバ達が動揺する


「お、お前は騎士団に入りたいのか?」


 フツバが冷や汗をかきながら聞く。

 その質問に無関心な声色で


「いえ、全く持って興味がありません。悪魔でお金と名声が目的ですよ」


 とアトラらしい返答が帰ってきた。


「ハハハハハ、そうだよな。お前が騎士に入る訳ないな。でもそれ仕事内容と対価が釣り合ってないような気がするんだけどな」


 フツバが記事の内容の釣り合わなさすぎる内容に首を傾げる。


「そうよね、技術力を見せるだけで15枚の金貨は流石に多すぎる気がするわよね」


 ライラも賛同する。


「よく分かりませんが、兎に角貰える物は貰っておいた方がいいとは思いませんか。という訳で今から機械の整備に入るので部屋に篭ります。」


 アトラが目の前の部屋に入り思いっきりドアを閉める。

 フツバ達が取り付く島もない。


「本当にアイツが一人部屋なのかよ。まぁ、いいや。アイツはもう出てこなさそうだし俺たちも早く入って休もう」


「そうね」


 ライラとフツバも部屋に入る。

 部屋に入った途端に巻いていた布を取りすぐにライラが聞いてくる


「ねぇねぇ、あなたの理由を聞いて納得してたけどよく考えたらお偉いさんが泊まってる宿屋に一緒に泊まるってもっと危険じゃない?」


 ライラが溜まっていたモヤモヤを聞いてくる。


「…えっと、まぁ仕方ないだろ。どうせ夜は騎士達も辺りいったいは見回るはずだ。その時野宿して鉢合わせた時の方がヤバイ。どうせお偉いさんだから最上階だし、合わないだろ」


 フツバは何か別の事を考えているようだ。


「何をそんなぼーっとしてんの?何かあるんなら一応言ってくれるかしら」


 ライラがベットに寝転がる。


「あぁ、整備士って言う狭い範囲を指す言葉が何だか気になるんだよ。何処かで聞いたことがあるようなないような」


フツバが必死に思い出そうとしてるがこの様子ではそうすぐには思い出せないだろう。


「私先にお風呂入って良い?もう外には出ないでしょうから」


 ライラが疲れた表情でフツバに尋ねる。


「別に良いよ、姫さんは特に出ない方がいいからな。大丈夫だろう。今日は結構歩いたし早く寝るといい」


「リョーカイ」


 ライラが扉を閉め、脱衣所で服を脱ぐ。

 その時に気づく


(待ってよ、私何をこんな平然としてられるの。部屋で二人きりで止まるのは男なのよ。何を普通に風呂に入ろうとしてんのよ。でも、アイツに限ってそんなことするはずがないし……でも、今は姫という立場はないようなもの。これは夜中に急に起ききてそこを……)


 想像に想像を重ねた妄想で自分の軽率な行動に顔が赤くなる。


(今まで何で何も思わなかったの⁉︎アイツは男よ。何をしだすか分からないのに……どうしようどうしよう!おかあーさーん、男の思考回路を教えてー)


 ライラはそうこう考えている内に風呂が終わってしまう。

 もし、扉を開けた瞬間襲いかかってきたらという可能性を踏まえて恐る恐る扉を開ける。

 フツバの姿はベッドの上にあった。

 起きてはいるが落ち着いて考え事をしている。

 欲情はしてなさそうだ。

 ライラは自分が馬鹿な事を考えていた事にやっと気づく。

 ライラも恥ずかしがりながらもベッドに寝転がる。


(今日は色々と疲れたし早く寝て、切り替えよう)


 お互いに一切の言葉を交わさずただ時間が過ぎていく。


(ダメだ、うるさい!うるさ過ぎる!寝る前に変なことを考えたせいで心臓がうるさくて寝れない)


 そんなライラを置き去りに時間は流れる。

 隣の部屋の扉が開いた音がした。

 アトラが記事の場所に向かったのだろう。

 確か、騎士達のテントだった筈だ。

 元々付いて行くつもりはだったが、騎士団が場所だと分かった瞬間行けなくなってしまった。

 その後も時間は過ぎる。

 横になって相当の時間が経った気がする。

 目を閉じているというよりも瞼の裏を見ている。

 分からない、今何分経ったのかも分からない。

 そんな時!

 隣に寝ていたフツバが起きる。


(やっぱりなのかーー!ごめんなさい、お母様。あなたの娘は今から、騎士に襲われ王家の名前を汚してしまいます。どうか、許して、その後私の頬をぶってくださーい)


 起き上がったフツバがこちらに近づいてくる。

 コツコツと一歩ずつ近づいてくるのが分かる。

 心拍音は最大まで達する。

 一秒が数分のように感じる。


(来てしまうーーー‼︎)


 バサっと激しい音をたて恥ずかしさのあまりわざと深く被っていた毛布が勢い良く剥がされる。

 来てしまったとライラは思い


「やめてー、私にはそんなつもりはないのよ。そりゃあそうよね。男女が同じ部屋に泊まったらそう思っちゃうよね」


 ライラが身をフツバから遠ざけながら早口で謝罪する。


「何言ってんだ姫さん⁉︎今はそれどころじゃない!」


 ライラの謝罪をもろともせず平然ではなく焦った表情のフツバがそこには居た。


「ど、ど、どうしたの?」


 いつものフツバなら「ドリランドみたいに言うな!」とツッコむがそれは心の中にしまい込む。


「思い出したんだ!整備士の意味を!」


 フツバが即座にライラを抱えて走り出す。

 最早見慣れた風景だ。

 だが、その風景の動くスピードはメルトに追いかけられている時と同じ速さだ。

 フツバがどれだけ焦っているのかがライラも伝わった。

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