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一章13話 事裁

 フツバは愛剣と少量の荷物を持って城まで来た。

 荷物は一晩で準備した物だからそんなに多くはない。

 城を眺める、大きな城だ。


(こんなところだったら、場所によったら飛び降りたら死ぬな。出来れば、そんな事はしたくないけど、場合によっては致し方ないか。)


 そんな風に思いながら眺めていたフツバに一人の騎士が近寄って来る。


「オトメ・フツバだな。事裁室まで案内する、ついて来い。もう、姫様と事裁の方がたがお待ちだ。」


 と言って男が歩き出す。

 どうやら、フツバが最後らしい。


(それにしてもこの男嘘つくの下手だなぁ。まるで味方のような喋り方してるけど体が緊張して強張ってる。それに、いつでも剣を抜けるようにして動いてる。もうちょっとマシな奴寄越せよ。事裁の奴らも舐め過ぎだろ。警戒させないつもりだろうけど、こんな奴がいるだけで、事情を知らなくても怪しくなるわ。)

 フツバは城を歩いている時にある事に気づく。


「今日は騎士が少ないんですねー。」


 興味本位で聞いてるかのようなテンションで聞く。


「あ、あぁ、まぁな別の事件に今は手一杯でな。」


「そうですか、別の事件…」


(そんな、大層な事件あったっけな?でも、嘘はついてないんだよな)


しばらくした時、男が急に立ち止まる。


「この先に、事裁室がある。だが貴様にはここで荷物を全て置いていってもらうぞ。」


 一瞬焦るが、すぐに対応する。


「すいません、僕はずっとこの剣を近くに置いて生活しないと不安になっちゃうんですよね。だから、どうにかして中に持って行く事はできませんかねぇ?」


 咄嗟に嘘をつく。


「なるほど、少し待っていろ。中の人方達と話をしてくる。」


 騎士には時折、こういうケースの人がいるが故の対応だろう。

 しばらくして、男が帰ってくる。


「持って入っていいとの事だ。そのかわりと言ってはなんだが、鞘と剣に剣が抜けなくなるような簡易的な金具を付けさせてもらうぞ。」


「そうですか、持っていけるだけで十分です。ありがとうございます。」


(やっぱり、国にヴェーラの事隠しておいて正解だったな)


 男が直ぐに金具を取り付ける。

 試しに抜いてみようとするが、確かに抜けない。

 力技では抜けないと考えていい強度だろう。


「よし、それでは中に入れ。」


 男が通常の扉より一回り大きい扉を開ける。

 木の軋む音がしながら開く。

 中には、複数の人がいる。

 まず、部屋の中央を囲むように警備兵が軽く十人、その内一人が隊長だろう。

 そして体が3mほどある厳つい男が扉の前に立つ。

 中央の一段高くなっている席に座っている三人が事裁の最高司令官だろう。

 一番右には頭が相当キレそうな、青色の髪を生やしたメガネの女。

 年は推定三十後半だろう。ハニフィー・アレルだ。

 司令官で名を馳せたとか。

 そして左が体型がポッチャリの目が開いてるのか開いてないのか分からないセンターハゲの推定五十代のおじさん。

 ボトム・ボロムだ。

 元騎士とは到底思えない身体だ。

 そして中央、偉そうな髭を生やしている、この中だと一番年老いているだろう。

 肩にかかりそうな髭だ。

 目はしっかり開いており、体型もスリムで年は推定六十代だろう。

 ジョン・ファルマン元王族で王族をやめて騎士になったとか、それも結構な活躍だったという。

 ジョンの机の前にのみ、紙が山積みにされているので、最終判断は彼がするのだろう。

 そして、全員黒の正装を着てきている。

 裁判官らしい服装だ。

 そしてその一段下には、ライラ姫と死んだ魚のような目のモヒカン男が距離を相当開け座っている。


「オトメ・フツバ殿、わざわざご足労頂きありがとうございます。」


 ジョンが喋りかけてくる。

 次に首の向きを変え


「それから、姫様もご足労頂きありがとうございます。我々が上に座るのはもっての他ですが、許可を頂けた事に感謝申し上げます。」


「いいのよ、別に。私だってあなた達に偉そうに出来るほど立派な事した覚えは無いしね。」


 ライラ姫が返答する。


「滅相もありません。ライラ姫は素晴らしき方だと存じ上げております。」


 ジョンがお辞儀をしながら話す。

 そこに、フツバが口を挟む


「もういいだろ、その姫さんが凄いのどうのって話は後でにしてくれ。そんな事話すために来たわけじゃないだろ?」


「そうでしたね。それではそろそろ始まるとしましょう…今から、ラズ・スノルマン中佐殺害事件の事情聴取を行います。」


と堂々とジョン・ファルマンが宣言し、運命の時間が始まった。

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