一章11話 仲間の為に
「おい、フツバ中佐殺しの犯人がいるとは本当か!」
メルト達が走って近づいてくる。
「あぁ、アイツだよ。」
フツバはモヒカン男が恐怖で腰を抜かしている方向に指をさす。
「何処だ?ただ、ビビっている男がいるだけじゃないか…おい!まさか⁉︎」
驚いてフツバの方を見てくる。
「そうだよ、ご想像の通りだ。」
フツバはメルト達の考えている最悪な推測を肯定する。
「あんな腰抜けが中佐を殺しただと!フツバ、冗談なら今のうちに言っとくんだぞ。今なら片腕切り落とすだけで許してやる。あんなやつに殺されるような人じゃない」
「この事に対してこんなクソみたいな嘘つくかよ。俺も驚いたさ。姫様相手なら強気だった癖に俺がゾンビを全部倒したらあの様だ。全くクソは何処までいってもクソだな。」
フツバは咄嗟に嘘をつく。
そこにガスが
「アイツには、到底中佐を殺せるほどの実力は無さそうだが」
「まぁ、ヴェーラを使って数の暴力と不意打で倒しただけだろうからな」
平然と言った発言にメルト以外の隊士達が驚き剣を構える。
その行動にフツバが驚く、
「どうした⁉︎急に剣を構えて」
「どうしたってヴェーラ持ちなんだろ、なら危険じゃないか⁉︎」
アイツにヴェーラがあったと言ったのはフツバの圧倒的なミスだった。
「あぁ、それはなぁえっ…と」
フツバが言い訳に困る。
(悪魔の件をこいつらに言ったら不味いし)
そこにメルトが
「全ての死体を斬ったんだろ、フツバが」
「おう、まぁな、多分一度動かして動けなくなったやつはもう動かせないんだろう。だから大丈夫だ。早く捕まえろ。」
メルトの的外れな見解になんとか乗っかる。
なるべく動揺をバレないようにいったつもりだ。
すぐに、隊士達がその男を捕まえに掛かる。
そこでガスが、
「おいフツバ確か姫様もいるとかじゃ」
「ん?後ろで座り込んでる人が姫さんだろ」
焦った表情でシャスがライラ姫に近づいて支える
「フツバ、姫様が見つかったなら早く言えよ。降格されちゃうじゃないか。私的理由を優先したって言われて」
「知らねぇよ!自分たちで気付け」
そんな一連のやりとりの後、メルトがひっそりと聞いてくる
「おい、フツバお前何を隠している」
少し、焦りながらも
「何も隠してないけど」
出来るだけ、いつも通りのテンションで言うが、流石のフツバでもこの一大事をメルトから隠しきるのは困難だ。
「分かっているぞ。もし、アイツがお前が死体を倒してあんな状態になったんだとすれば、姫様も何であんな状態になっている!それに、あのクソ男には何ら覇気を感じない、アイツはヴェーラを持っていないはずだ。」
確信づいた声で言ってくる
「何でそんな事分かんだよ」
「フッ、笑わせるな。噂を知らないのかあの特訓から帰ってきたものはヴェーラ持ちになって帰ってくるんだよ。そして、見た目で持っているかいないかぐらいは分かる。何があったんだ、言ってみろ。一応はお前の上官なんだぞ。それに、お前も!」
フツバが言葉を遮る
「それ以上はこの事に首を突っ込まない方が良い。お前がせっかく手に入れた階級もパーになるぞ」
今までにない強い口調で言い、そこを去ろうとする。
メルトが肩を掴み
「これは内の中佐も関わってるはずだろ!なら知る権利はあるはずだ。お前にこんな事言うのも癪に触るが、頼む、もし何か問題があるなら隊長にも報告してどうにかしてもらえばいいだろ!」
メルトの言いたいこともフツバには分かる。
自分の尊敬する上官が殺されその真実を、部下がそれも新米が隠蔽しようとしてるのだから。
怒るのも当然だ。
だが出来ないもし言えば、ここにいる全員がテロなどと言う無理矢理な理由で殺されるだろう。
それは隊長程度の権限ではどうにもならない事だ。
フツバはメルトの言葉を無視して、肩の手を退ける。
「姫さんと犯人に一瞬話をさせてくれ。」
犯人を連れて行く隊士とシャスに頼む。
元々話せる状態じゃなかったが、二人に悪魔の事を絶対に誰にも喋るなと、キツく言ってその事件は幕を閉じた