四章35話 武術者
どうもビタミンです。
久しぶりの投稿となってしまいすいません。
この作品を続けるかどうかという悩みに陥っていってしまっていました。
結論はこの作品の大きな区切りがあるのですがそこまでに50人ブクマが行かなければそこでやめると決めました。
完結までやればこのペースだと10年くらいかかってしまうのでこの決心は必要だったと思っています。
完結まで書けるような投稿頻度を上げるしかないです!
「今までの失礼な発言全てを謝罪します。すいませんでした!」
クトゥルが目に光を灯しながら頭を下げる。
クトゥルの熱い希望で十空全員が集められた。
「クトゥル、貴様の発言に私も少しムカついてはいたが今回の試合から反省したのは良くわかった」
「嘘つけー、少しどころじゃなくてだいぶだろーが」
背中にサポーターを付けたメルティの横から松葉杖姿のトロピカがからかう。
「貴様も貴様でよく負けた直後にそんなテンションでいられるな!」
「えぇ、だってぇ。負けってのは予習なんだぜ。ねっ、フツバくーん」
「お前、やんの?一生松葉杖生活にする?それとも義足にするか選べよ、おい」
フツバ達の後の次の試合メンドゥーサと戦ったトロピカ。
ヴェーラを使い好戦したものの敗北。
3時間ほどしか経ってないのにもう元気だ。
フツバの試合中の発言をイジってくるトロピカ。
「義足なら最近いいのがあるんだけど、」
「ランプス、お前は黙ってろ!冗談に決まってんだろ、商談に入ってくんな」
フツバが半笑いで真面目に商談を始めたランプスをつっこむ。
「まぁ!とにかくよ!クトゥルが気にしてる程俺らも気にしてないってだけでいいんじゃねぇか」
眠たそうなメンドゥーサが話を手早く終わらせようとする。
「それでみーんな文句はないと思うけど。一つだけ言っておきたい事は僕は一つあるヨ」
おちゃらけたトロピカからの言っておきたい事それは、
「そーんな畏まった君なんてだーれも好きじゃないヨ。今までの君の全てが間違ってたなんて勘違いしたならそれは大間違い。君のあの喧嘩を売る姿勢や少し強気な態度、あれを自分と相手の実力を理解した上でやる事は僕は面白くて好きだヨ。以上」
クトゥルの反省の姿勢や心情はよく伝わる。
しかし、そんな畏まった態度を取られてもこちらもやりにくい。
トロピカは能天気で何も考えてないように見えて優しさが垣間見得てしまっている。
今までの全てを否定されたという勘違いをされる事はフツバも考慮できていなかった。
そしてその集会も解散となった。
レイゼさんからもお礼を言われて、金も払われそうになったがもちろんつき返しておいた。
今回の祭りでの一番注目を集めているフツバは真っ直ぐ寝床に着く事はできないらしい。
「今度はお前か?クソガキ君」
久しぶりに言葉を交わす気さえする。
この僅か数日で色んな人と色んなことを喋り、動き過ぎた。
「もうすぐでお前とも戦える。次も負けんじゃねぇぞ」
「わざわざ心配してくれんのか、そりゃありがとうございます。またボコボコにされないか心配だけどな」
「お前からすれば俺は弱く感じたのかもしんないが他からすれば俺はここまで残れるぐらい強かったんだよ!」
フツバに今までと変わらない対応をされるクソガキ。
確かにフツバにはコテンパンにされていた。
そんな事実とは噛み合わないクソガキの躍進ぶり。
「うーん、それは違うとおもうけどな。対戦相手が変わったからってそんな急に強くはならんだろ」
フツバとの最後の対戦からクソガキ自身は何も変わっていないかのような言いようにフツバは少し疑問を抱く。
「元からその才能があったか、もう一つは本来の実力よりもたまたま強くなってるかの二択だと思うぞ。対戦相手が俺だろうと誰だろうと今のお前は強いんだよ」
「それは褒めてんのか?」
「一応褒めてると思うよ、結果的に強くなってるって言ってんだから。まぁ、こんな話をするだけして俺が負けましたなんて洒落になんねぇからな。じゃっ」
フツバの挨拶に返す事はなく、ただフツバの去る背中を闘志で満ちた眼差しで見つめるクソガキ。
十空戦は十人ということもあり二回戦は一人がシードになる。
これに選ばれたのが今回はクソガキだった。
フツバにはソウジロウ戦が待ち構えているがクソガキからすればもうフツバしか見えていない。
ーーー ーーー ーーー ーーー ーーー ーー
「今回はちゃんと準備運動するのね」
ライラがフツバが体をほぐす様子を見て言う。
「そりゃあな。あのレベルの人となると柔軟性とかで話が180度変わってくるからな」
「へぇ〜、余裕ないんだ」
ライラが薄ら笑いを浮かべながらフツバの方を見てくる。
「んだよ、たまたま一回戦が相性良かっただけで普通に十空戦なら負ける可能性あるでしょ」
フツバが当たり前のことを当たり前に述べる。
「行ってくるか!」
フツバが肩をぶん回して歩いて行く。
今回のフツバの格好は特別に作ってもらった道着。
一日で仕上げてくれた道着屋には感謝している。
フツバが会場に出た瞬間、声が溢れ漏れてくる。
声援の振動がライラの髪を揺らし、なびく。
もう余所者でも新入りでもない、人気者にフツバはなってしまっていた。
試合は堅実なソウジロウが相手では大波乱とはいかなかった。
ただ一つ大きな出来事はフツバがソウジロウと同じ技を使ったことだ。
「あなた、それをどこで学んだのですか!?」
前戦と同じく前動作なしの一歩だけで距離を詰めるという技を序盤から繰り出したソウジロウ。
一撃目はフツバも勿論くらってしまった。
しかし二撃目、一歩で間合いに入ったソウジロウからフツバも一歩で距離をとって見せたのだ。
「お、やっぱ今の出来てた?良かったぁ、見て真似てただけだから出来てたか分からなかったんだよね」
「見て学んだ?私の技をこの短時間で真似たと?」
「ちょっと違うな。見たのはあんたのじゃない。ずっと前にある時同じになったおっさんがやってた技だ。似てるなぁと思ってさ」
フツバのその行動も勿論だが、その発言にも会場は騒めく。
「私と同じ技を使える人などこの世に一人しかいない!お師範様に会ったのか?あの方は元気にしてらっしゃったか?何か問題を抱えてはいらっしゃらなかったか?」
「そう言うことね。あのおっさんここ出身だったのかよ。なら言ってくれれば良かったのに。あのおっさんはまぁまぁ元気そうだったよ。詳しいことまでは知らねぇよ」
「そうか、、、そうか」
ソウジロウが師範が生きているという事実を噛み締める。
この会場ごと騒めいているのをみるにその男はさぞかし有名だったんだろう。
「オトメ・フツバよ。お前には私の技がお師範様の技と似たように見えたのだな」
「あぁ、ていうか同じに見えたよ」
(今、めっちゃ笑った!見えるか見えないかの速度で笑った!)
一瞬、我慢できずに満面の笑みを溢してしまうソウジロウ。
武士としてすぐに押し殺す。
フツバからしても会っていなかった師匠の名前が出てくるという嬉しさはよく分かる。
その心の乱れてる間に攻めるなんていう野暮な事はしなかった。
そして試合は壮絶な物となった。
ソウジロウが距離を詰めていき、フツバが逃げる。
どちらかがミスをしない限り攻撃は当たらなかった。
もちろんミスが多くなったのはフツバ。
躓いたり、できなかったりと圧倒的に下手だった。
長年の積み重ねにモノマネが立ち向かった所で勝てないのは分かっていた、同じ技の話ならば。
「アンタが師範様から教えて貰ったのはそれだけか?」
掌底をくらい鼻血を出したフツバが拭き取りながら聞く。
ソウジロウは戦闘の最中に話す事は好まないようだが師範と会ったフツバとなると対応も変わる。
「勿論知っていますとも。科学者が自分の発明した物の対抗策を用意しておくように武術者もまた自分の発明した技には対抗策を用意しておく物。アナタはあと何個真似をできるのですか?」
フツバの質問の意図を全て汲み取っているソウジロウ。
いつものフツバの説明ターンを与えてくれない。
「そんなできるはずも無く一個だけだ。なぁ、この今までやってた技の名前って何?」
「消歩と言います」
「じゃあそれの対をなす技の名前は?」
「脱歩」
「オッケー。来いよ」
「それでは遠慮なく」
ソウジロウがまた消歩で一気に距離を詰める。
「脱歩」
フツバが右足を一度円を描くように回すと姿が消える。
ソウジロウはその技がどのような動きをするか知っていた。
ソウジロウの背後に周ったフツバが拳を放つ。
ソウジロウもなんとか腕を交差させて防御の姿勢をとる。
完全には受けきれなかったようで大きく後退る。
そこからの試合展開は一方的な物だった。
観客は武術という物の弱点を知る事となった。
前半、同じ技を使っていた時はソウジロウが押していた。
しかし、フツバがその対抗技とされる脱歩を使った瞬間から事態が急変。
フツバが押し気味に。
そこから念押しにフツバが剣を使い出したらもう終わりだった。
フツバが前半と同様に使い慣れない技にミスをするがそこの隙を突いても剣で防ぐ。
あとは消化試合が如くフツバが勝利した。
観客にはフツバの技とソウジロウの技の成功率以外での出来栄えはよく分からない。
フツバはあんな一瞬で真似て見せた技をソウジロウは一年もかけて身につけたのだ。
その技も虚しく、フツバが同じくモノマネの対抗技で対応してしまった。
ソウジロウは儚く散ってしまった。
観客の皆は思ったソウジロウは何故その対抗技を覚えなかったのか、あれだけ長い時間が有ればもっと多彩な技を覚えれたのではないかと。
そのソウジロウの敗北と共に思い浮かんだ疑問が聞こえたかのようにフツバがこう言い残した。
「この人がやってた消歩は俺とはレベルが違った。もし俺があの対抗技を見た事がなかったら負けてたのは100%俺だ。更に消歩を見た事がなかったら2000%負けてたのも俺だ。この人が極めてきた消歩って技はそんだけ強くて、ほとんどの相手に勝てる技だ。俺が破る事ができたというこの奇跡をこの人の実力にはしないでやって欲しい。それが俺からのお願いだ」
フツバが観客向けてこんな事をするのは恐らくソウジロウからしたら愚行になるかもしれない。
しかし、フツバはそれでも言いたかったのだ、悔しかったのだ。
自分が戦った強い戦士を侮られるのが。
ソウジロウはこの敗北は自分の実力不足だとして、ここから五年間の最強祭にはでないと宣言した。
このソウジロウが武術者としての極技を披露したこの大会の後、技にソウジロウの戦いの姿勢に見惚れた弟子入り志願者が多くいたらしい。
読んで頂きありがとうございました。
今回の戦いの書き方を少し変えてみました。
全部の戦いを詳しく描く訳にはいきませんのでこのような形になってしまいました。
こっからはテンポ感を意識しつつ頑張ります。
良ければ感想、アドバイス、質問よろしくお願いします